トロントでのフェロー生活|カナダと日本の医療制度の違い
セントマイケル病院の医師、ボビー・ヤナガワと川口保彦です。今回は、カナダでの臨床フェロー(専門トレーニング医師)として働く生活についてご紹介します。科や病院によって多少の違いはありますが、ここでは私の経験を一例としてお話しします。
【1日の流れ】
06:30 出勤・集中治療室で処置
07:00 患者回診、カンファレンス参加
08:30 手術 1件目
12:30 手術終了、患者搬送・引き継ぎ、2件目の準備
13:30 手術 2件目
17:00 手術終了、患者搬送・引き継ぎ、翌日の準備
19:00 帰宅あるいは当直
出勤後、前日に手術をした患者さんの処置を集中治療室で行います。その後、病棟の患者さんを回診し、カンファレンスに参加します。1件目の手術は朝8時半から始まり、1日2件の手術に参加します。昼食はパンとコーヒーを流し込むことが多く、食事休憩が取れないこともしばしばです。スーパーで買うカナダのパンはパサパサでコーヒーは必須です(笑)。手術が終わった後は集中治療室のスタッフに管理を引き継ぎます。手術がない日は外来診療や病棟管理、研究活動に時間を充てています。手術が長引かない限り、午後6時から7時には業務を終了できることが多く、特に夏には仕事が終わった後に明るい空を見ると、とても嬉しく感じます。夕食後から娘を連れて公園に行くこともあります。
当直は4〜5日に1回あり、院内待機が必要なため、翌朝まで病院で過ごします。搬送されてくる患者や、他部署からのコンサルテーションに対応しつつ、緊急手術があれば参加します。3〜4時間は睡眠を取れることが多いですが、時には一晩中ポケベル(いまだに使っている!!)が鳴り続け朝までぶっ通しのこともあります。当直明けでも、自分の割り当てられている手術があれば、そのまま参加します。体力的にはタフですが、密度の高いトレーニングを受けられるメリットがあります。
Q: カナダと日本の働き方の違いは?
A: カナダの方が働きやすい印象があります。カナダではタスクシェアが進んでおり、手術後の集中治療室での管理は麻酔科医や集中治療医が担当し、病棟では診療看護師がサポートしてくれるため、外科医は手術に専念できる環境が整っています。日本では、医師がほぼすべてをカバーすることが一般的で、若いうちは良い経験になりますが、年齢を重ねると体力的に厳しくなります。カナダのようなタスクシェアが日本でも広がれば、働きやすさが向上するのではないかと感じています。私は日本での習慣がまだ完全に抜けず、集中治療室でもこまめに患者さんの状態をチェックしたりスタッフに治療方針の希望を伝えたりしていますが、少し嫌なやつと思われているかもしれませんね(笑)