いい音が加わると、目の前の景色まで 少し違って見えてくる〜Technicsを連れて、夏のローレンシャンへ〜|TORJAモノがたり|MONOGATARI

イベントの抽選会で当たったTechnicsのワイヤレスイヤホン「EAH-AZ80」を使い始めて、半年ほどが経った。
それまでは別メーカーのものを使っていたのだが、周りから「いいなあ」「それ欲しかった」とずいぶん羨ましがられた。そんなに人気なの? ならば使ってみよう、と箱を開けたのが始まりだ。


Technicsはパナソニックが長年育ててきたHi-Fiオーディオブランド。僕の場合、まず活躍したのは毎日のTTCだった。地下鉄ではノイズキャンセリングをオン。あのゴーッという走行音が抑えられ、音楽がぐっと聴きやすくなる。

自然と音を楽しむ旅へ
そんな日常の相棒を、8月はケベックのローレンシャンのコテージにも持っていった。
ローレンシャンといえばMont-Tremblant。冬はスキー、秋は紅葉で有名だが、夏もかなりいい。森と湖が続き、サイクリングルートもよく整備されている。今回もほぼ毎日、自転車で20〜30㎞ほど走る。かつての鉄道跡を走り、旧駅から旧駅へ。それぞれの場所に昔の面影が残っている。
バードウォッチングが好きな人にもおすすめだ。ブルージェイや鮮やかな黄色のゴールドフィンチを見つけると、朝から双眼鏡の出番になる。コーヒーを飲みながら鳥を探す。何もしないために山まで来たはずなのに、鳥がいると妙に忙しい(笑)。
そんな静かな朝にAZ80でいつもの曲を聴いてみると、「こんな音も入っていたのか」と気づくことがある。低音だけが前に出るのではなく、ボーカルや楽器の細かな音まで自然に聞こえる。
AZ80には10ミリのアルミ振動板や、音を整えるTechnics独自の仕組みが使われているそうだ。難しいことは分からなくても、静かな場所で聴くと、長年オーディオを作ってきたブランドらしさは何となく分かる。
自転車でもAZ80を使った。周囲の音を取り込むモードにして、好きな音楽を聴きながら森や湖のそばを走る。でも風が気持ちよければ音楽を止める。鳥の声が聞こえれば、そちらを聞きたくなる。音楽を聴いたり、自然の音を聞いたりしながら20〜30㎞。これが今回の旅の日課になった。
朝のヨガでは逆にノイズキャンセリングをオン。目の前には山と森、耳には静かな音楽。都会では騒音を抑えるための機能が、ここでは自分の時間をつくってくれる。
火と星と音楽。山の夜の贅沢

椅子に座り、薪を足しながら炎を眺める。薪がパチッとはぜる音が好きだ。赤くなった薪がゆっくり崩れ、時折、火の粉が夜空へ舞い上がる。風が吹くと森全体がざわっと揺れ、また静かになる。遠くから鳥や虫の声も聞こえてくる。
火を見ながら、そんな山の音を聞いているだけでも飽きない。
ここでもAZ80で好きな音楽を流してみる。


目の前には揺れる炎、その向こうには暗い森。顔を上げれば満天の星。そこに好きな音楽が重なる。
不思議なもので、いい音で音楽を聴いていると、目の前の景色まで少し違って見えてくる。炎の揺らめきや夜空の星が、いつもより鮮やかに感じられる。曲に耳を傾けながら、ただ火を眺める。急ぐことも、次に何かをする必要もない。音楽と景色が重なって、いつの間にかその世界に入り込んでいる。
山の上で、火と星と音楽。ちょっとロマンチックだが、こんな時間をゆっくり味わえるのも旅の贅沢だと思う。
そして、忘れられないのが8月12日の夜だ。
ちょうどペルセウス座流星群の時期。キャンプファイヤーを囲みながら顔を上げると、トロントとはまるで違う夜空が広がっていた。明るい星だけではない。その間を埋めるように、小さな星までびっしりと見える。
深夜0時すぎ、音楽を聴きながら空を眺めていると、突然、星の間を一本の光がスッと走った。
「あ、流れた」
ひとつ見えると、次も見たくなる。しばらく待っていると、また一本。
目の前では炎が揺れ、頭上には満天の星。その中を時折、流れ星が走る。そこに好きな音楽が重なると、ちょっと映画のワンシーンに入り込んだような気分になる。音楽を聴きながら景色を楽しむ時間と、音楽を止めて自然そのものに耳を澄ます時間。山頂のコテージの静けさの中では、そのどちらも贅沢だった。
考えてみれば、静かな場所というのは、単に「音がない場所」ではない。余計な音が少ないから、聞きたい音がよく聞こえる。朝の鳥の声も、木々を抜ける風も、夜の静けさの中で薪がはぜる音も。
そして、AZ80から流れてくる音楽も。
今回AZ80を旅に持っていって気づいたのは、いいイヤホンは単に「いい音を聴くためのもの」ではないということだった。好きな景色に好きな音楽が重なることで、その場で過ごす時間まで少し豊かになる。
目の前の炎や満天の星を眺めながら聴いた音楽は、TTCで聴く同じ曲とはまったく違う時間をつくってくれた。
旅から戻れば、またTTCでノイズキャンセリングをオンにする。山では鳥や風、火の音をあれだけ楽しんでいたのに、トロントではやっぱりこれがありがたい(笑)。








