「コロナが気づかせてくれた自分が描く本当の未来」武田 葵さん カナダ歴:4年|私のターニングポイント第27回
武田 葵さん
カナダ歴:4年
ストリートファッションカンパニー・ファッションデザイナー
アシスタント兼プロダクションチームメンバー
高校卒業後に米国に留学したものの、当時の勉強と幼少期からの夢とが全く違い、「自分の納得のいく未来を実現するには、ここにいてなんとなく過ごし時間とお金を無駄にするべきではない」と思うようになり、持ち前の行動力を発揮し、次の目的地をトロントにあるSeneca CollegeのFashion Arts Programに決めカナダに渡航した武田さん。トロント生活では、コロナをきっかけに大きな別れがあり、そのおかげで自分を取り戻せることができ、当時の経験が今の自分を作っていると語る。
カナダに来てからずっと一緒だった人からの突然の別れ
私がカナダに来たのは2019年の春で、語学学校で出会った方とすぐにお付き合いを始めることになりました。それから1年後、カナダでもコロナウイルスが流行し始め、夏休みが始まったころには不要不急の外出は自粛となり、私たちはお互いの自国に一時帰国することになりました。半年後にまたカナダに帰ってきて会う約束をした私たちでしたが、1年半ほどお付き合いをした後、私が思いもしなかった形で関係は終わってしまいました。
当時は一方的で突然の別れだったことや、カナダに来てからほとんどの時間をお相手と過ごしていたこともあり、悲しみや不安でとても精神的に不安定になってしまいました。それでも周りの友達にたくさん助けてもらったおかげで時間と共に心も少しずつ前向きになり始め、それと同時に自分の中で大きな気持ちの変化が起こっているのを感じました。
人生で一番傷つき落ち込んだ出来事をきっかけに前へ大きくすすむ一歩を踏み出せた
それまでの1年半、もちろん服飾学生としての生活も送っていましたが実際は彼中心の生活になっており自分が集中すべきことや挑戦すべき新しいことはふんわりなんとなく考えるだけで、行動には全く移せておらず将来の展望もぼやっとしていました。そんな曖昧だった自分に関することが急にクリアになり、「これからあれもしよう!これも始めよう!」など精力的に活動するモチベーションが湧き上がってきたのです。それからは街で新しい友達を作ったり、自分が大好きな古着分野の仕事に挑戦してみたり、また将来のはっきりした目標も定まりそれに向かって努力ができたりと自分にだけ集中できる日々を送る事ができました。
コロナが落ち着くまでは不便なことは沢山ありましたし、通常なら行われるはずのファイナルコレクションを披露するファッションショーも開かれず、どうしようもない部分での悔いは残りましたが、それでもあの悶々とする日々を考えると、自分を見つめなおすとても良い機会だったなと思います。
ファイナルコレクションでは今後自分がファッションをしていく上で基盤となるサステナビリティをテーマに制作し、それがSustainable Fashion Awardを受賞できたことで大きな自信になりました。その制作期間中にプロフェッサーから参加を促されたコンペティションも、自分の将来したいことの一つであるアップサイクリングが課題になっていたため、「自分のために用意された機会だ!」と運命的に思い即日参加を決めました。睡眠時間を削り挑んだコンペティションでは最優秀賞を頂くことが出来、そのリワードとして卒業後も今の会社でのインターンがすぐ始まり、ファッションの仕事がほとんどないトロントで不安だった就職もなんとかすることができました。もちろん自分が食べる時間さえ惜しんで取り組んだ努力の結晶だとは思います。しかし、これも全部あのキッカケ無しでは成し遂げられていたかどうかわからないな、と今でも感じることがあるのです。
■ いまの自分に点数をつけるとしたら?
50点
まだまだ夢の途中で、もっと努力する余力は50%ほど残っているという自分への期待という意味でもこの点数です。
■ 学生時代のエピソード
母親が教育熱心で運動もですが特に勉強に力を入れていて中学受験も経験しました。私は昔から自分の意思が強くはっきりしていたと同時に、勉強漬けの姉の姿を傍でみていたこともあって、多くの友達が進学する地元の中学校に進学しました。そこでは2年間にわたり同級生や先輩から壮絶ないじめを受けつつも学校には通い、小学校から続けていた硬式テニス部の活動にも意欲的に取り組みました。高校は県内の進学校に入りさらに勉学に励みました。最終的に日本の大学進学を選びませんでしたが、今になってはとても良い経験だったなと感じます。
■ もし人生をやり直せるとしたら、いつ?
やり直したいと思ったことはありませんが、もし戻れるならばカレッジの5セメスター目です。デザイン画を50ルック以上描いたのですが、もう少し良いものが生み出せたのではないかなと思っているからです。
■ 人生で大切なことは?
何か選択しなければならない時に自分の心の声を一番に聞くことだと思います。その都度心の声や気持ちが向く方向へ進むことで、結果的に自分の理想に近づいていると思うからです。常に「どちらを選んだ自分が好きか」という基準で、決断の大小やシチュエーションに関わらず行動するようにしています。
■ 将来の夢・ライフプラン
そろそろ現在地からもう少しステップアップすることを考えています。30歳になるころには自分が実現したいと思っているビジネスのベースを作り、そこから色々な人と関わりながら広げていきたいです。私の活動がSlow Fashionを助長し、作り手や作品(服)に感謝し大切に着てくれる消費者を増やすことに貢献ができたらと思っています。
-好きな本:
①It Chooses You/Miranda July(あなたを選んでくれるもの/岸本佐知子 訳)
②ヒッピーのはじまり/ヘレン・S・ペリー 阿部大樹 訳、③XXXHOLiC(漫画)
-尊敬する人:父
-感謝している人と一言メッセージ:アメリカから帰国後に日本で一緒に働いていた主婦のIさん「第二のママとして沢山話を聞いてくれて寄り添ってくれてありがとうございます!」
-カナダの好きなところ:いい意味で程よく田舎で自然が身近にあるところ