35歳の「人生強制リセット」石川奈津美さん カナダ歴:2年|私のターニングポイント第33回
カナダ歴:2年
職業:現在は大学院で国際ビジネスを学ぶ傍ら、フリーランスの広報PRマーケターとしても活動。
読売新聞記者やLINEニュースの編集者など日本のメディア業界で約10年間働いた後、2022年からトロントに住んでいる石川さん。現在は大学院で国際ビジネスを学ぶ傍ら、フリーランスの広報PRマーケターとしても活動。今年8月からはポルトガル、来年1月からはオンタリオ・ロンドンにあるビジネススクールに留学することも決まっている。プライベートでは1歳と3歳の子どもを育てている石川さんのターニングポイントとは。
「勇気がない」10代、「忙しい」と諦めてきた20代
幼少期、転勤族の父の仕事の都合で、2~3年に一度引っ越しをしていました。一つのところにずっと留まるのが好きではなく、行ったことのない場所へ行くのにワクワクするのはこの幼少期の経験が原点になっていると思います。そんな性格なので、海外にも自然に興味を持つようになり、高校1年生の時に留学から帰国した部活の先輩に憧れ、「私も海外に留学してみたい」と1年間の交換留学プログラムに応募しました。英語は得意科目だったし、何度も選考面接で話す英語の練習を重ねたのですが、なんと当日、緊張のあまり頭が真っ白になってしまい準備した英語がまったく出てきませんでした。1分くらい沈黙が続いてしまい、『Sorry…』と言いながら部屋を出たことは、今でも鮮明に覚えています。結果はもちろん不合格。しばらくは学校の英語の授業が苦痛でしかたがありませんでした。大学に入ってからもこのショックを引きずり、海外留学に憧れはあるものの、その手前の「留学の選考会」に応募することができず。留学をエンジョイする同級生たちのSNS投稿を眺めながら、それができない自分を情けなく、みじめに思いながらも結局チャレンジすることなく大学を卒業しました。
私もやっぱり海外留学したい
大学を卒業してからは報道記者になり、殺人事件や事故などを担当し24時間体制で働いていました。休日は倒れ込むように寝る生活をしていて、海外留学は学生時代に叶えられなかった夢として心の片隅にしまわれていました。そんな折、結婚した夫がほどなくアメリカの大学院に留学することになり、また再び身近な人が留学して充実した日々を送る様子を目の当たりにすることになりました。私は日本に残り仕事を続けていたのですが、ついに彼の卒業式に参加した時に「私もやっぱり海外留学したい」と想いが再燃。当時30歳。日本に帰国後は忙しいながらも仕事の合間を縫って英語の勉強を始めました。情報収集する中で、母校の大学の大学院が世界2カ国の大学院に留学するCEMSという国際経営学修士のダブルディグリープログラムを提供していることを知り、自分の貯金で学費や留学資金も工面できそうだったので少しずつ準備を始めました。
転機は35歳を迎えた2022年
夫の仕事の都合でカナダに家族で移住することになり勤務先を辞めることになりました。ある意味での“人生強制リセット”された勢いでそのまま母校の大学院に進学。現在は日本で行われる大学院の授業をトロントからリモートで受けており、日本の伝統文化の海外マーケティングやコミュニケーション戦略について研究しています。また、今年8月からはポルトガル、来年1月からはオンタリオ・ロンドンにあるビジネススクールにそれぞれ留学する予定です。久しぶりの学生で新たな学びへの充実感はさることながら、高校時代に描いた海外留学の夢を20年越しに叶えることができた達成感は、何物にも代え難いなと実感しています。
よく「諦めなければ夢は叶う」と言われますが、私の場合はそんなかっこいいものではなくて、10代を振り返ると「勇気がない」、20代を振り返ると「忙しい」と諦めてきました。やらない言い訳は考えれば山ほどあると思います。ただ、本当にやりたいことがあったときは、諦めても結局同じ場所に戻ってきて、人生のどこかで腹を括って向き合わないと次に進めないとも実感しています。今回の経験を経て、諦めてもまたやりたいと思ったら「もう遅い」とは思わずその時からまたチャレンジすればいいと心の底から思えるようになりました。人生、結局は楽しんだもの勝ちです。引き続き自分で限界を設けず様々なことにチャレンジしていきたいと思います。
■ いまの自分に点数をつけるとしたら?
100点
生きているだけで丸儲け。
■ 衝撃エピソード
新聞社の新人時代にある殺人事件を追っていた時のこと。取材をしていた際に声をかけられた住民の方と仲良くなりました。コンビニもない田舎のエリアだったのでご自宅のトイレを貸してもらうなど、色々と交流をさせていただいていました。その方が後に凶器の銃を提供した容疑者として逮捕されました…。
■ もし人生をやり直せるとしたら、いつ?
やり直したいとは思いませんが、もしもう一つ追加で人生を経験できるなら、勇気が出なくて挑戦できなかった大学の交換留学プログラムに応募したいです。30代半の海外留学とはまた違う刺激を受けそうで楽しそうです。
■ 人生で大事なもの
とりあえず、片目瞑ってもいいから飛び込んでみることでしょうか。人生長い目で見ると、挑戦して失敗した時に失うものは自分のしがないプライドくらいだと思っていて、リスクって特にないのかなと。
■ 将来の夢・ライフプラン
日本と海外をつなぐ人材になりたいです。海外移住を機に改めて日本を外から見るようになり、母国の魅力やビジネスにおける大きなポテンシャルを感じています。また、将来的にはカナダと日本とあともうひとつくらい拠点を作って多拠点ライフを送りたいです。
-好きな本:“Grit: The Power of Passion and Perseverance” (Angela Duckworth)
-尊敬する人:今年93歳になる元祖ワーキングウーマンの祖母
-感謝している人と一言メッセージ:夫。人生の相棒として隣にいてくれてありがとう
-カナダの好きなところ:良い意味で他人に興味がないところ