「長く目指していた研究者になる目標を諦めたこと」藤村 怜香さん カナダ歴:2年半|私のターニングポイント第37回
カナダ歴:2年半
職業:AIアーキテクト/ミュージシャン
機械学習エンジニアとして日本の会社で新卒入社したものの一年未満でカナダの企業に転職、現在はリードアーキテクトとしてAIに関するプロジェクトをリードしている藤村さん。はたから見ると立派な経歴を持ちインテリジェンスに富んだ人材に見える彼女も、自分の置かれた環境や研究者としての日々を通して本当にそれが自分のやりたかったことなのか分からなくなってしまったという。そして、「研究者になる」という目標を諦めたことで新たな人生がふたたび始まったと語る。彼女は今ビジネスの世界にとどまらず、トロントを中心にミュージシャン活動も精力的に行うアーティストとしての一面も持つ。「戦略的に正しい努力をずっと続けていれば、何回失敗しようが必ず結果は得られる」と語る彼女のターニングポイントとは。
物理・工学系分野における圧倒的な男性社会昔ながらの日本らしいカルチャーの中での挫折海外大学院受験の失敗
物理の科学者になりたいという目標を胸に日本で大学院まで行ったのですが、自分の能力の限界を感じたことや、科学の端っこのほんの小さな問いに価値を見出し、1人それを信じて追求していくことに対する孤独や不安、圧倒的な男性社会と昔ながらの日本らしいカルチャーに大きな違和感を感じるようになりました。
とくに私の所属していた大学の学部、学科、そして研究室はとにかく首都圏出身の男性が中心で、また特に多様性に対する問題意識も薄い旧日本的なカルチャーでした。1人ひとりは皆フレンドリーで協力的で、友人も先生方も本当に優秀な素敵な方々に恵まれたのですが、集団の中にいるとき、地方出身女性の自分としては時に排除されているような、自分らしく行動することを拒絶されているような、誰も頼れる人がいないように感じることも多々ありました。そういった社会の中でうまく器用にやっていくことが難しいと感じることも多く、ここは自分の土俵ではないのかもしれないと思いが強くなっていったのが当時です。
また、北米で働く科学者になりたかったので、「海外大学院で博士を取りたい」というのは私にとってとても大事な大きな目標でした。ですが情報を得るのに苦労したり、周囲の方々や指導教官にうまく頼ることができず、結局合格を手にすることができなかったことも大きな挫折でした。
行き詰まったら自分が潰れてしまう前に手放してしまえば良い
それらの日々の中で研究をやっていましたが、本当にそれが自分のやりたかったことなのか分からなくなってしまったことも理由で、それまでの目標を手放しビジネスの世界に舵を切りました。
経験から得たこととしては、行き詰まったら自分が潰れてしまう前に手放してしまえば良いということです。「ずっと拘ってきた目標がどうしても届かなければ一旦執着を捨てて上から見つめ直してみる」「カルチャーにどうしても馴染むことができなければちょっと離れて旅に出てみる」、そう思っています。いまカナダで生活していていますが、ありのままの自分を謳歌することを祝福するカナダの文化は、まさに私の場所です!
戦略的に正しい努力をずっと続けていれば、何回失敗しようが必ず結果は得られる
一方で、科学者の道から遠ざかっても、北米の文化圏で働きたいという気持ちには変わりありませんでした。そんな中でパートナーがカナダの大学院に合格したことから思わぬところで海外移住のチャンスが舞い込み、海外転職という次の目標ができました。
海外転職は一筋縄では行かない闘いで、本当に数えきれないほどの不採用通知を受け取りましたが、日本で培った仲間たちやパートナーの支えのおかげで心が折れてしまうことなく、むしろこの挑戦を楽しんで乗り越えることができました。結果として日本の前職から大きくステップアップした、ワクワクするようなポジションを勝ち取ることができました。
この成功体験から得たこととしては、「戦略的に正しい努力をずっと続けていれば、何回失敗しようが必ず結果は得られる」という確信です。
■ いまの自分に点数をつけるとしたら?
100点
人は生きてるだけで偉いと思っているので、100点です。
■ 小中高校時代そして大学時代そして新社会人時代のエピソード
・子どものとき学校で弟がいじめられているところを目撃し、その場は完全に弟に非があったにも関わらず上級生の男の子たちを撃退した。
・新社会人のとき、9ヶ月で転職すると言い出してマネージャーを困らせた挙句、転職直前のコロナが猛威を振るっていた時期にカナダ旅行でコロナにかかり、とにかく自由すぎる私のために散々振り回しご苦労をおかけしました。とても明るく素敵な元上司で、今でも連絡を取り合っています!
■ もし人生をやり直せるとしたら、いつ?
やり直したいとは思わないです。
■ 人生で大事なもの
友達。そして自分自身の一番の親友になってあげること。人の喜びを心から喜べることが一番の幸福だと思っています。そしてありのままの自分で生きるには、それをずっと見守って、耳を傾けて、わくわくして、受け止めてくれる自分という理解者が必要だからと思っています。
■ 将来の夢
狂ったように聞こえるかもしれませんが、今はトロントを中心にミュージシャン活動を副業としてやっています!私の書いた曲を好きでいてくれるリスナーが少しでもいるような、ライブをしたら人がきてくれるような、そんなアーティストになりたいです。そしていつか本業の仕事をフリーランスにしても、充分音楽活動でやっていけるようになりたいです!!インスタグラムもぜひ覗いてみてください。 cecili.ka
-好きな本: サガン『悲しみよこんにちは』、Sheryl Sandberg 『Lean In』、Yuval Noah Harari 『21 Lessons』
-尊敬する人:たくさんいすぎてどなたの名前を書けば良いかわかりません。私が尊敬する方は皆直接知っている方々です。ここでは祖母と答えさせていただきます。
-感謝している人と一言メッセージ:祖母へ。いつでも前向きに人生を楽しむ方法を教えてくれてありがとう。
-カナダの好きなところ:多様性に富みいろんな人を受け入れるトロントの人たちの気質が大好きです!