留学エージェントはどう考える?カナダ政府による学生ビザ発給制限と関連条件の変更について|ニュースの別視点【第一弾】
カナダ政府は1月22日、外国人留学生に対するビザ発給を今後2年間制限すると発表した。学生ビザ発行数を制限するほか、Post Graduate Work Permit(ポスグラ)や配偶者就労ビザの申請条件の変更なども伴わせて発表された。この背景には人口増加に伴う住宅の需給や医療機関の逼迫が社会問題化しておりその需要抑制とされているが、他方で、今後の留学予定者のみならず、彼らをサポートする留学エージェントや学校などの教育機関への影響も大きい。すでに多くの留学生などが心配の声を挙げているが、今回トロントで10年以上にわたり第一線で多くの留学生のキャリアアップや移住をサポートしてきたMYNDS代表の海野芽瑠萌さんに話を聞いた。
ー貴社はこれまでカナダでの就職・キャリアや移民につながるための留学手配に力を入れて留学生をサポートされています。今回の改訂の内容をどのように受け止めていらっしゃいますか?
ちょうど10年前の2014年の6月にも、学生ビザの大きな変更が入りました。実際には行かない書類だけの空入学許可証でビザ申請して長期間カナダにいることが横行したり、そういった書類を乱発するビザ取り学校のようなものもありました。14年は、学生ビザの詐欺や悪用を減らすという目的で、学生への在籍を義務付けたり、学校に報告義務を作ったりということをしたのですが、これらの変更で不利益を被ったのは、制度を悪用している方々でした。
基本的には、真面目に学校に通っている方々は改訂の影響を受けずに済んだはずですが、今回は一律に影響を受けるということで非常に横暴な印象を受けています。
日本人ではありませんが去年、留学エージェント側が、虚偽の入学許可証を学生に渡して学生ビザの申請をされたことがきっかけで、もう移民に手が届く段階に入っていながら遡って虚偽申請ということで国外追放を命じられた方のニュースが話題になりました。
また今回、規制の入った私立のキャリアカレッジと公立のカレッジの提携プログラムについてもプログラムが急にキャンセルになって多くの留学生が授業が受けられなくなったなどのニュースも2023年です。
詐欺のようなエージェント・学校運営は大いに取り締まるべきだと思いますが、、これしかやり方はなかったのか、とは感じます。
ー学生ビザの規定に年末から段階的に変更が入っていましたが、インパクトある内容が即日施行となっています。現在どのような対応やコンセンサスで学生さんたちに向き合っているのでしょうか?
先に入っていた学生ビザの残高証明の変更などは変更するならしょうがない、と受け止めた方が多いですが、今回のニュースには実際に影響を受ける方もそうでない方も、たくさんの方からお問い合わせを頂戴しました。
学生ビザの新規申請ができないという点はもちろん非常にセンセーショナルではあるのですが、付随して入っている配偶者ワークの規制なども、それぞれに大きな影響を受ける方がたくさんいらっしゃいます。
まだ具体的な解決に至っていない方もいらっしゃるので、安易には発言できませんが、移民局の規定が変わることは実際にあるため、できることをやるしかないと受け止めている方が多いように思います。とはいえ、資金の準備や進学プランそのものを見直さないといけない方が多いのは確かです。
ーすでに業界内でも情報共有や連携をされているかと思いますが、業界の方々の反応や受け止め方を教えてください。
コロナは本当に私たち留学業界や学校関係者にとっては辛い時期でした。留学生がほとんど入って来れなかった時にも、様々な規定を調べたり、できることを留学生に提案し、労働力の面でも、カナダの経済や社会に協力してきたつもりではあります。
やっとその厳しい時期を抜け、業界の団結も強まったところで、またもや大きな試練が立ちはだかったようなイメージですね。
今後、「Attestation Letter」なるものがどのようなものになるのか、それぞれの州や学校、そして関係はどうなっていくのか全く不透明ではありますが、もし仮に言われている通り、州で割り当てを決めるとなると、本当に平等に行うことは難しいのではないかと思います。
結局、たくさん一か所にまとめて留学生を送るエージェントだけが優遇され残って行く、という恰好にもならないかを懸念します。
「みんなが行きたい国」の入り口が狭くなってきている。
ー留学生の皆さんの動きにも様々な反応が出ていると聞いています。入ってきている声や学生さんらの反応を教えてください。
ビザの変更が出た時は、ぱっと見で情報を判断してしまったり、「友人がこう言っていた」「ネットで見た」などで、まことしやかな情報が広がることが多いです。「勘違いですよ」「そうは書いていませんよ」とご案内したケースなどもあり、できる限り正しい情報を英語でも読むようにはアドバイスしています。
ーカナダへの留学や進学を考えている人、またすでにカナダにいるけれども今回の決定を受けて将来設計が変わってくる人や今後に不安を覚えている学生さんなども多いと思います。今後の見通しなども含めてアドバイスをお願いします。
一番最初の所でも触れたように、たった10~15年遡っただけでも、今の状態から比べると規制はもっと少なかったです。また、ずっと厳しくなってきたわけではなくコロナの最中には特別措置もありました。
その時々の規定のもとでうまく移民に繋がった、メリットを受けたという方も、たくさんいます。実際に弊社で留学を経験した方々の中で、ワークビザや移民に繋げたケースはあります。ただ、世の中が進み、カナダたくさんの移民が入っている中で、誰かが使った抜け道やラッキーが少しずつ消えていく、蛇口が閉まっていくのは当然とは言えるのかもしれません。
23年の末には、オーストラリアでも留学生の受け入れ条件を厳格化すると発表しています。カナダだけがというわけではなく、「みんなが行きたい国」の入り口が狭くなってきているとは言えるのだと思います。
特に移民を目指しての進学は、必ずしも望むリターンを受けられるという保証のない投資です。どこまでの時間とお金をコミットするかは人それぞれで、「結論、しない」という選択肢も合ってよいと思います。私が相談した方の中でも、ビザや移民に関しては必ずコンサルタントなどのアドバイスを受けるようにおすすめしていますが、可能性・予算など色々と検討した結果、留学はせずに全く別の道を歩む方もいらっしゃいますし、その選択は応援したいと思います。