特別寄稿 東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い 第27回
5月に行われ盛大なにぎわいをみせた日本酒フェスティバル、Kampai Toronto vol3。
このイベントに参加した岩手県、南部美人の蔵は3.11東日本大震災で被災した蔵のひとつだ。南部美人の5代目である久慈氏は震災直後から日本酒を通じて地域復興に様々な取り組みを行ってきた。TORJAでは久慈氏が体験したこと、復興に向けての取り組みなどを寄稿してもらった。
東日本大震災以降、様々な東北支援の動きが加速しており、その中でもメディアが関わる東日本大震災復興の応援の1つとして、大きな波及効果を被災地に与えたのが、NHK朝のテレビ小説「あまちゃん」でした。
この「あまちゃん」は、カナダでも放送されたとは思いますが、2013年上半期に放送されたのですが、ロケ地は岩手県久慈市で、三陸海岸を有する、今回の東日本大震災でも津波の被害にあったところでした。
話の内容などはここでは書きませんが、あまちゃんは記録的な視聴率と話題性で一躍日本を「じぇじぇじぇ」ブームに巻き込み、主演の能年玲奈や、脚本を担当した宮藤官九郎は一躍時の人になりました。
いわゆる社会現象を巻き起こし、三陸海岸に日本中の目を向けさせ、さらにはドラマのストーリーの中でも震災を取り上げ、多くの方々から共感を得たテレビ番組でした。
撮影が行われた久慈市では、ロケ中はこれほどの社会現象が起きるとは想像していなかったようで、いざ放送が始まったら、久慈市への問い合わせの電話が殺到。さらにはゴールデンウィークや久慈市秋祭りなど観光客が10倍増するなど、被災地にたくさんの目を向けることに成功した番組でした。
2013年と言えば、震災から時間も経過して、震災のことを忘れてしまう「風化」が問題視されていた年でもありました。
被災地の方々は忘れられることが一番困っていて、「もう大丈夫でしょう」という一言に多くの方々が傷ついていました。
そんな中で、NHKとしては被災地を取り上げる番組を作成してくれたことに大いに感謝したいと思います。
実際には社会現象が収まらず、番組が終了した直後は「あまロス」(あまちゃんロスト症候群の略)なる言葉まで出てきて、番組が終わって久慈市への観光客は減ることなく、さらに増え続け、周辺の被災地にもその流れは影響し、多くの方々があまちゃんをとおして被災地のことを考えてくれるきっかけになりました。
さらにあまちゃんでは様々な歌もヒットして、その中でも2013年大晦日に行われたNHK紅白歌合戦ではラストの出演者全員による「地元に帰ろう」を合唱した時間帯が毎分別視聴率50%を達成し、紅白歌合戦史上歌手別視聴率で2位になりました。
それほど大きな影響を及ぼした「あまちゃん」。2014年の今でも久慈市への観光客は震災前よりも格段に増えており、いまだにあまちゃんツアーが企画され、さらには三陸鉄道の全線開通も手伝い、岩手の被災地の明るい話題の1つとなっています。
このように、メディアの力は大きく、うまくその力が働いた時にはとんでもない経済効果や波及効果を及ぼします。日本全国が被災地を応援するムードをつくってくれたのも、この「あまちゃん」でした。まだまだ苦労の続く被災地、これからも明るい話題で照らしてほしいものです。
オンタリオ取扱い代理店:
Ozawa Canada Inc
現在トロントで楽しめる南部美人のお酒は、「南部美人純米吟醸」とJALのファーストクラスで機内酒としても採用されている、「南部美人純米大吟醸」の二種。数多くの日本食レストランで賞味することが可能。
南部美人
http://www.nanbubijin.co.jp
東京農業大学客員教授
久慈 浩介