東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い 第31回
岩手県の沿岸部は、震災からもうすぐ4年を迎えるにあたり、様々な復興事業や土地のかさ上げなどが盛んに行われております。
今回の東日本大震災で津波が来て浸水した地域には基本的に住居などは建設せずに、事業所や工場、そして公園などを中心に設置するまちづくりが検討されている地域が多いのですが、岩手で一番大きな被害を受けた陸前高田市では、津波浸水地域が市の土地の多くを占めることから、浸水地域に人が住まない、という事には出来ないようで、今後の津波被害をどのようにとどめるかなどの検討が繰り返されてきました。
そんな中で、津波浸水地域をそのままではまた津波が来たら全て浸水してしまいますし、それではその浸水地区を全て公園や工場にするかというと、それでは賄いきれないほどの平地面積があり、逆にそこに家などを建設しないと、市内で平地が無いため、どこにも行くことが出来ない人が大勢出てきます。
そこで、陸前高田市では、浸水地区を全ての土地のかさ上げをして、さらには大きな堤防もそなえ、東日本大震災と同規模の津波が来たとしても、安全に逃げられる避難ルートや避難場所を確保したりする方法でまちづくりをしていく方向で進んでいます。
しかし、簡単に土地のかさ上げと言いますが、山を切り崩し、その土を浸水地域の広大な平地に入れていく作業は気が遠くなるほどの作業で、ダンプカーを何百台投入しても10年近くの歳月がかかるそうで、それではあまりにも時間を使いすぎてしまうため、問題があるという事から、陸前高田市が選んだ方法は、超大型のベルトコンベアーで土を切り崩す山と、かさ上げする浸水した旧市内地を繋ぎ、ダンプカーなどを使わずに、直接土を運び、盛り土することにしました。
よって、今、陸前高田市内は、びっくりするほど大型のベルトコンベアーが何台も山から市街地にとおっており、そこを連日土が運ばれ、盛り土をしております。
最初見ると、びっくりしますし、映画「トランスフォーマー」の世界みたいな感じもしますが、この超大型ベルトコンベアーの力により、ダンプカーで運ぶ約半分の時間で土が運ばれるそうで、作業効率はとても良いとの事でした。
しかし、それでもまだ4年とか5年かかるというのは長い時間としては変わらないわけで、それを待てる若い人はいいかもしれませんが、高齢者などは待てないために、住み慣れたまちを出て行ってしまう人も多く、いまだに仮設住宅で過ごさなければいけない人も大勢おります。
今の現状に我慢してあと4年とかの時間を待つか、新しい場所で新しい生活をするか、今沿岸部の被災者の皆さんは、震災からもうすぐ4年を迎えるにあたり、究極の選択をしなければいけない人が多くおります。
何もない日常に戻れない、昔あった当たり前の世界に帰れない、そんな人が同じ日本に住んでいることを忘れてほしくありません。
復興に終わりはありません。まだまだ日常を取り戻せない人が大勢いる被災地に、これからも温かいご支援をよろしくお願いします。
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本文:南部美人 五代目蔵元
東京農業大学客員教授
久慈 浩介