ポルトガル留学そして新たなチャプターへ|37歳で人生初の海外留学に挑戦中
親日家の多さと国民性の共通点
ポルトガルでは親日家の方がとても多い印象を受けました。大学院の初回授業後には自己紹介も兼ねて教授に話しかけるようにしていましたが、日本人だということを話すととても喜んでくれて「日本語で『コップ』って言うけれど、実はポルトガル語が語源なんだよ」と教えてくれる方や、長崎との交流の歴史から原爆について詳しい方もいました。また、ポルトガル人は真面目で寡黙な人が多いと言われるそうで、おしゃべりな人が多い隣国スペインが「中国」で、ポルトガルが「日本」と例えられることもあるとか。国民性に通じる共通点が感じられました。
さらに、先日訪れた東洋美術館では、歌舞伎や浮世絵をテーマにした展示のほか、南蛮貿易など歴史的な交流を象徴する展示もあり、思わず4時間も滞在してしまいました。このように、両国間の長い交流の歴史を再発見できる機会が多いのも、ポルトガルで生活していて楽しいポイントの一つです。
魚介類が豊富な食生活
食生活についても、ポルトガルは日本人にとても馴染みやすい国です。ポルトガル人はタコを食べる珍しい国の一つで、一人当たりの魚の消費量がヨーロッパで最も多い国のひとつです。味付けがシンプルな点も日本の食文化と共通しており、トロントから引っ越してきた身としては、新鮮な魚介類が安価で手に入ることがとても嬉しい驚きでした。住んでいるカスカイス(Cascais)は首都リスボンから約1時間のリゾート地で、地元の魚市場には採れたての魚がずらりと並び、価格はトロントの半額程度です。トロントで減っていた魚料理を再び楽しめるようになり、自宅で寿司パーティーを開いたり、お刺身定食を作ったりと、まさに「おさかな天国」の生活を満喫しています(笑)。
また、日本とポルトガルの交流は約480年前に遡り、カステラや天ぷら、金平糖といった「日本の伝統的な食べ物」と思われているものの多くが、実はポルトガル由来であることに改めて驚きました。日本と共通する食文化を発見することが密かな楽しみになっています。一方で、トロントと比べてアジア系移民が少なく、日本食材の入手には苦労しました。車を持たない単身者の私にとって、味噌やジャポニカ米を手に入れるのは大変で、インスタントラーメンが頑張った日のご褒美になっていました(笑)。
英語と移住者の多様性
ポルトガル(特にリスボンとその周辺)は、ヨーロッパの中でも英語が比較的通じやすい国です。先日、隣国スペインのバルセロナに旅行に行きましたが、都市で比較してみても圧倒的にリスボンの方が英語を話す人が多く、特に若い世代の多くが日常会話程度を話せるなと感じました。今住んでいる家のポルトガル人大家さんによると、これは、教育制度で第二外国語がフランス語から英語に切り替わったことや、国の経済規模が小さいため、海外で働くことを視野に入れる若者が多いことが背景にあるそうです。
さらに、イギリスやアメリカ、カナダからの移住者(主にリタイア層やノマドワーカー)の多さには驚かされました。南部の一部地域では「道を歩いていると英語しか聞こえない」というほど英語圏の影響が強い場所もあるそうです。温暖な地中海性気候、年間300日以上の晴天、そして米英と比べた生活費の手頃さが、多くの移住者を惹きつけている理由だと納得しました。ただし、移民の増加により不動産価格が高騰し、地元の若者が家を買えないという問題も浮き彫りになっています。大家さんによると、現在私が住んでいる家も20年前に購入した時の3倍の価格になったそうで、「息子が家を買える見込みがない」と嘆いていました。
年末からの新たなチャプターへ
今回のヨーロッパ滞在中にはフィンランドやドイツ、スペインにも訪れ、各国の文化の違いを体験しましたが、ポルトガルは気候や人々の温かさ、そして日本との意外な共通点のおかげで非常に居心地の良い国だと感じました。この後は年末にポルトガルからトロントへ戻り、年明けからはオンタリオ州ロンドンにある大学で次のセメスターが始まります。新しい年、新しい環境での挑戦を楽しみにしています。みなさまも良い年をお迎えください!