カナダでの学びと子育てのリアル|37歳で人生初の海外留学に挑戦中【第6回】
欧州と北米、異なる授業スタイル
カナダでの授業スタイルは、ヨーロッパでの経験とは大きく異なり、最初は戸惑いの連続でした。ポルトガルは日本のスタイルと似ていて、教授による講義の後に質疑応答やディスカッションが行われる形式が一般的でしたが、カナダでは授業への積極的な参加が非常に重視されています。特に私の通うスクールは顕著なようで、評価の55%が授業での発言によって決まり、教授からは「発言しないと単位が取れない」と明言されました。
プログラムで共に学ぶ交換留学生たちはヨーロッパ出身なので、彼らも同様の戸惑いを感じていたようです。私も「意味のない発言で低評価を受けたらどうしよう」など不安もあったのですが、英語で自分の意見を述べることは貴重な経験だと考え、授業ごとに最低2回は発言するという目標を設定しました。正直、文法も正確とは言えませんが、とにかく場数を踏んで慣れていこうと思っています。
ビジネススクールの学費面でも大きな違いがあります。ヨーロッパ諸国では、EU市民であれば学費が無料、または年間数十万円程度に抑えられており、非EU市民でも条件次第で同等の学費で学べる場合があるそうです。一方、カナダの私が今通うスクールは、インターナショナル学生は1年半のプログラムで約1000万円。カナダ人や永住権保持者でも500万円ほどの費用がかかります。
学生の構成も特徴的で、ポルトガルでは白人学生が9割以上を占めアジア系の学生はキャンパスを見渡してもほとんどいなかったのですが、カナダでは中華系やインド系の学生が多く、黒人、白人、ヒスパニックとさまざまな人種の学生がいてその多くがカナダ人なので、移民国家ならではの多様性を実感しています。もちろんスクールによって異なるということが大前提ではありますが「欧米」と一括りにしていた私にとっては新鮮な経験でした。
英語力の伸びと子育ての両立
英語力については、家族と過ごす時間が増えたことで、以前ほどの伸びを感じられないでいます。ポルトガル留学時は、日本人のいない環境で1日の大半を英語で過ごしていたため、英語力は飛躍的に向上しました。しかし今回は、週の半分以上を家族と日本語で過ごすため、瞬発的な英語力に課題を感じることが多くなりました。やはり、語学の上達には接触時間が重要であることを改めて実感しています。
また、単身留学時は週末に図書館で10時間以上学習する時間がありましたが、現在は子どもの送迎や寝かしつけなど、育児との両立で学習時間の確保に苦心しています。学業に専念したい気持ちもありますが、幼い子どもたちと共に過ごせる留学生活自体が貴重な経験だと捉え、バランスを取りながら進めていきたいと考えています。
家族と共に成長する学び
自宅での課題やグループワークが多い今学期ですが、母親学生である私の学ぶ姿は、子どもたちや同級生にとって良い刺激になっているようで、とても嬉しく感じています。課題が終わらないときは、上の子を誘って一緒に机に向かい、勉強や読書をする時間を設けることにしました。一緒に本を読んだり、私がエッセーを書く間娘はひらがなやアルファベットを書く練習をしています。
同級生たちにとっても、私の姿は新鮮な刺激になっているようです。ほぼ全員が20代前半の彼らは、ロンドンとトロントを行き来しながら子育てと学業を両立させる私の様子を驚きの目で見ており、「普段どうやって勉強と育児を両立させているの?」と質問を受けたり、「母親になっても学び続ける姿に励まされる」という言葉をもらうことも多いです。Zoomでの会議中に子どもが乱入することもありますが、「ワーオ、特別ゲストが来た!」とポジティブに受け止めてくれて、そんな彼らの反応に私自身も励まされています。彼らが将来、自身のキャリアを考える際に、私の経験が何かしらの参考になれば嬉しく思います。
来月にはトロントで北米サミットが開催され、アメリカの加盟校の学生たちとの交流も予定されています。子どもたちと参加できるイベントがあれば、家族で楽しみたいと考えています。