カナダ最大のトロント・ユニオン駅と日本酒イベントで日本産ホタテなど水産物の美味しさと魅力をアピール|日本貿易振興機構(ジェトロ)トロント
10月19・20日 Next Stop: Japan -Scallop Delight(トロント・ユニオン駅)
ジェトロ・トロントは、9月と10月にかけてカナダで最大の日本酒イベント「カンパイ・トロント」と同国最大の利用客を誇る鉄道駅、トロント・ユニオン駅で日本の水産物の安全性と美味しさ、魅力をアピールするプロモーションを行なった。
東京電力福島第一原発のALPS処理水の海洋放出に絡んで、中国などが8月から日本産水産物の全面的な輸入停止に踏み切ったことを受け、欧米各地で日本産の水産物のプロモーションを強化し、その販路を拡大することを目的としている。
「カンパイ・トロント」ホタテ、ハマチ、カンパチの試食を実施
「カンパイ・トロント」は、日本から数多くの蔵がブースを構え、毎年多くの日本酒愛好家や日本食を好むフーディーやインフルエンサーが集うイベントだ。9月30日当日は、ジェトロが日本産水産物のプロモーションのため、ホタテ(ゆずソースホタテ、あぶりホタテ、貝ヒモを用いた珍味)、ハマチ(カルパッチョ)、カンパチ(刺し身)のサンプル試食ブースを出展し、トロントでは1336食を提供した。
日本に旅行をしてきたばかりというフォロワー数十万人を持つインフルエンサーは、「日本の食文化や食材の素晴らしさ、そしてその安全性と味わいに全幅の信頼を寄せている。先日2年目のミシュラン・トロント版が発表されたが、日本食レストランの評価は変わらず高かった。このような取り組みを通じて、さらにカナダで日本の水産物が多くの人に食べられるようになると嬉しい」と語ってくれた。
また、日本酒愛好家でトロントでも著名なインフルエンサーは、「日本のホタテほど美味しい食材はない。ALPS処理水の海洋放出の話はもちろん知っているが、変わらず日本食を好んで食べていきたい」と話した。
ジェトロ・トロント事務所の斎藤健史所長は、「日本の水産物を全世界的に振興していくという日本政府の方針により今回ブースを出しました。用意したのは、北海道産のホタテ、愛媛産のカンパチ、ハマチになります。日本食のプロモーションは以前からやっていますが、東京電力福島第一原発のALPS処理水の海洋放出をきっかけに、中国など一部の国が日本産水産物の輸入を停止したことから、新たな市場を開拓することが求められています。ALPS処理水の安全性は科学的に証明されており、カナダでは大きな懸念になっていませんが、今後も日本産水産物の新規販路開拓をめざした取り組みを行っていきます」と語ってくれた。
日本酒のイベントだけあってアジア系の参加者や業界関係者が多く目立つイベントだったが、日本産水産物のサンプルを提供したブースは長蛇の列で、その美味しさと魅力についての広報を通して、より一層の認知度や販路の拡大につながるイベントとなった。
「Next Stop: Japan-Scallop Delight」カナダ最大の鉄道駅で日本産ホタテをPR
続いて10月19日と20日の2日間にわたり、1日当たり約30万人の利用者がある、カナダ最大の利用客を誇る鉄道駅トロント・ユニオン駅で日本産ホタテメニューを提供し、水産物の魅力を発信するプロモーションを行なった。
このプロモーションは、11月1日から4日かけてユニオン駅で、在トロント日本国総領事館、ジェトロ、国際交流基金、JNTOの共催によって行われるイベント「Next Stop: Japan」とも連携している。
「Next Stop: Japan」は、「駅を中心とした街づくり」という日本の都市開発の経験および駅利用のあり方の一部を再現・紹介するイベントで、日本に関心を持つ市民を対象に、日本ファンのコミュニティーを形成し、日本の文化、観光情報、そして日本製品のプロモーションを行うことを目的としており、食の分野では、現地の日本料理店やEC・小売店と連携して日本の水産物の美味しさと魅力をアピールすることを目指している。
当日は2日間に渡り、ホタテの炊き込みご飯やホタテを使ったラタトゥイユなど日本産のホタテを用いたサンプルが駅構内で提供された。ホタテの炊き込みご飯は特に人気で、2日目の途中には在庫がなくなるなど、日本料理の調理方法と日本産ホタテならではの食感や旨みを存分に味わえる試食メニューに多くの参加者が喜んだ。
日本食が大好きだというカナダ人女性は、「日本の水産物はとても新鮮で美味しい。北海道の食材はとても有名で、その中でも大きな身と濃厚で独特な味わいを持つホタテを大好きな人はたくさんいる」と教えてくれた。
19日のイベントが始まる前から現場のキオスクに駆けつけた在トロント日本国総領事館・佐々山 拓也総領事は、「日本食そして日本の水産物の安全性を政府一体となりアピールしています。東京電力福島第一原発のALPS処理水の海洋放出における風評被害の予防という側面もありますが、カナダにおいて一般の人の反応はきわめて冷静だと受け止めております。それでもきちんとした情報の発信とアピールが大切ですので、日本の水産物、食品安全のアピールの良い機会になったと思います」と語ってくれた。
カナダ政府は、福島第一原子力発電所のALPS処理水の海洋放出に関して、日本の対応の全面的な支持を表明している。TORJA編集部でもイベント会場での取材においては、風評被害が拡大している様子は特段見られなかった。今後も、日本食レストランの増加など日本食文化の普及が進むカナダにおいて、官民一体で日本産の水産物のプロモーションを強化し、その安全性と品質をアピールすることによって脱中国の代替市場として販路・認知度拡大においてカナダマーケットの優位性を活かすことを期待したい。