【数字で見る】PR取得を考えている人必見!気になるカナダの永住権事情|特集「気になる永住権とシュワっとセルツァー 」
カナダに興味を持っている人の中には、海外移住について一度は考えたことのある人が多いのではないだろうか。年々日本人の海外移住者が増えている中、英語圏であって治安が良く、永住のハードルが他国よりはそう高くないカナダというのは魅力的に映るものだ。そうはいっても、仕事や英語力などクリアしなければならないことはいくつもあり、決して簡単ではない。今回はカナダ永住権(PR)の現状について、PR申請の中で最も一般的なエクスプレスエントリー(EE)を中心に見ていこう。
1. EEインビテーション発行数、今年は9万件
永住権申請でエクスプレスエントリーを利用する人が多いだろう。毎年不定期に、ドローと呼ばれる永住権申請のためのインビテーション発行プロセスがある。インビテーションを受け取ると申請者は次のステップに進むことが可能になる。CANADAVISAにまとめられた各ドローデータを分析すると、2020~2023年(10月10日現在)でインビテーション発行数にばらつきがあることがわかる。顕著なのは2021年に11万4431人に発行されたものが、2022年には59%減の4万6538人にしか発行されなかった点だ。ドロー数も2021年の42回から24回に減少し、エクスプレスエントリーでのPR取得者数はかなり少なくなった。一方今年に入ってからは増加傾向を見せている。すでに32回のドローがあり、発行されたインビテーション数は約9万にまで増えた。
インビテーションを受け取った人にはどんな人が多いのか。カナダ移民局(IRCC)がまとめた2022年のエクスプレスエントリー報告書を見ると、年齢層は20~34歳が約80%を占めている。英語力ではカナダ独自の英語力スコアであるCLBのレベル9以上(IELTS7以上)が半数の54%を占め、90%がCLB7以上(IELTS6以上)。英語スキルの重要性がわかる。気になる職歴の項目では、カナダ国内の職歴1年が41%、2年は16%。さらに海外での職歴では5年以上が35%で最も多く、3年以上が全体の58%を占め、カナダ国内に限らず国外での職歴もある程度重要なポイントになると言えるだろう。
2. PR取得者の34%はインド&中国出身
2025年までに移民数をこれまで以上に増やすと宣言しているカナダ政府。実際、ここ数年で永住権取得者数は増えている。Institute for Canadian Citizenshipのデータによると、2020年のパンデミック以降急激にPR取得者数は増加。2020年は約18万4600人だったのが2021年には40万6000人(前年比120%増)、2022年には43万1600人に増えた(前年比6%増)。
PR保持者の増加には特定の国からの移民が貢献している。IRCCによると、2022年にPRを最も多く取得したのは11万8095人のインド(PR保持者の27%)。人口が世界1位になった今、カナダ国内での存在感も高まっているようだ。2位は中国で3万1815人(7.2%)、3位はアフガニスタンで2万3735人だった(5.4%)。一方の日本はというと、PRを取得した人数は2021年が約1400人で2022年は約870人。一時減少したものの、今年8月までに約830人がPRを取得し、今年の数はおそらく去年を上回るのではないかと考えられる。
3.エクスプレスエントリー500点は必須?!
年齢や職歴などさまざまな項目を計1200点満点で点数化し、点数の高い申請者から順にインビテーション(永住権への招待状)をもらうエクスプレスエントリー。制度が始まった2015年から一時必要点数は下がっていたが、ここ2年で確実に足切り点(最低点)が上がってきている。CANADAVISAのサイトで公開されているデータを見ると、2021年までは450点でインビテーションがもらえていたにもかかわらず、現在は500点のスコアがないと厳しくなっている。2023年の平均足切り点(10月10日のドローまで含む、PNPや特種職業のみのドロー除く)は496点、2022年は515点だった。2023年は最低でも480点がないと永住権申請の次のステップに進めない現状があり、申請者には高い点数が求められている。昨年7月6日のドローでは2020年以来最高の557点が必要最低点となり、1500人にインビテーションが送られた。反対に史上最も低い点数でインビテーションが送られたのは、2021年2月13日。75点という極端に低い点数さえあれば良く、2万7332人が対象だった。
その一方で、特定の職業やフランス語のスキルがある人は点数が低くてもインビテーションをもらえる可能性がある。例えば、フランス語のスキルがある人を対象にしたドローの平均足切り点数は430点。また、今年9月にあった農業系の職種を対象にしたドローは354点が最低点数だった。
4.【就労ビザ発行数】2022年が過去最多の60万件超
ワークビザを持っているかというのは、エクスプレスエントリーではかなり有利に働くものだ(一般的には50点加算)。2022年には過去最高の60万8420件のワークビザが発行されたとCIC NEWSが報じている。この中に含まれるのはワーキングホリデーのような一時的な就労を許可するIMPと、特定の雇用主の元で働くことのみを許可するLMIAという就労ビザなどを含むTFWPだ。
2022年にカナダに入国した労働許可証を持つ人のうち77%がIMPで、計47万2070件。一方TFWPでは、残り23%の13万6350件が発行された。TFWPは2019年に9万8030件が発行されたが、2021年には10万件を超えるなど年々上昇傾向にある。カナダ政府が労働不足をいかに移民などに頼ろうとしているかがわかる数字だ。
5. EE申請者の78%が351~500点
IRCCのエクスプレスエントリーに関する2022年の報告書によると、昨年は合計42万8391人がエクスプレスエントリーに登録した。登録者の上から順にポイントの高い人からインビテーションが送られるわけだが、42万人というとかなり競争率が高いのではないかと想像できる。しかし実は、登録者のポイントはあまり高くない。
昨今では最低でも400点代後半の点数がないと厳しいと言われるエクスプレスエントリーだが、実際は申請者のほとんどが300~500点に集中している。351~400点に29.4%、401~450点に24.3%、451~500点に24%と全体の78%の申請者がこの範囲内に収まっている。
エクスプレスエントリーに登録できる資格を得れば誰でも登録できるため、申請時に400点以下でもその後職歴や学歴、PNPなどさまざまな要因でポイントを上げることができる。つまり、少しでもポイントを高めることができれば上位者のプールに入ることができるかもしれないということだ。エクスプレスエントリーを利用する際は、自分に必要なことは何かを考えて準備するのが良いだろう。
6. IT系の職はインビテーション率No.1
PRを申請する上で職歴は非常に重要な鍵を握る。職業に関してはTEER0~5までカテゴリーに分けられており、例えば管理職は0、大学卒業以上を必要とする職は1というように0をトップに分類される。一般的にエクスプレスエントリーで応募する際はTEER3以上が必要だ。IRCCの2022年エクスプレスエントリー報告書を見ると、インビテーションを受け取った上位15の職種のうち半数がTEER1だった。1位は3848人のソフトウェアエンジニア・デザイナー職、2位は1889人の情報システム専門職と続く。トップ15にIT系の職が5つランクインし、情報技術系に強いとPRでは有利かもしれない。また、人気のマーケティングは5位に入り(1025人)、調理師は15位だった(728人)。
2020年と2021年まで範囲を広げてみると、IT系が多いのは変わらないが、2021年の1位と2020年の4位に食品サービス監督者が挙げられていたり、2021年の14位に幼児教育職が入っていたりと、一般的に需要が高いとされる職業であればPR取得の可能性が高まると考えることができる。
7. ON州とBC州、Provincial Nominee Program(PNP)の43%
エクスプレスエントリーの中には、その州に居住し州内の雇用主から雇用されていることなどを条件にポイントを加算するProvincial Nominee Program(PNP)がある。PNPを通せばそれだけで600点加点されるため、一般的には永住権取得にかなり近づくと言えるだろう。
どの州もこのプログラムを用意しているが、人気なのはやはりオンタリオ州とブリティッシュコロンビア州だ。2022年にオンタリオ州のPNPを通してPRを取得したのは1万2328人で全体の26.4%、ブリティッシュコロンビアは7838人で16.8%と、2州だけで全体の43%を占める。他にもアルバータ州が6656人(14.3%)、サスカチュワン州が6136人(13.2%)を受け入れるなど、比較的人口の少ない州こそPNP利用者が多いことがわかる。
ノバスコシア州、ニューファンドランド・ラブラドール州、ニューブランズウィック州、プリンスエドワードアイランド州からなるアトランティック地域は、4つまとめてみると8673人(18.6%)がPNPを利用してPRを取得している。この地域は2022年より正式な永住権プログラムとなった「アトランティック地方プログラム」があり、例えばこの地域の大学・カレッジ(2年以上のプログラム)を卒業した人は、職歴がなくてもこの地域の雇用主からジョブオファーを得れば永住権申請ができる。
永住権を検討する場合は、PNPなど多様なプログラムに目を通し、自分に最適な方法を見つけるのが良いだろう。
8. BC州とON州に日本人の永住権者81%
カナダ永住権者の中には、もちろん一定数の日本人もいる。IRCCが公開しているデータから、日本人で永住権を取得した人々がどの州に居住しているのかを見てみよう。
2021~2023年(2023年は8月まで)の範囲で州別で見ると、ブリティッシュコロンビア州が半数の1515人(全体の49%)、次いでオンタリオ州の995人(32%)と、やはり2大地域に日本人が集中していることがわかる。
そのあとはアルバータ州の220人(7%)、ケベック州の195人(6%)となっているが、ニューブランズウィックなどのアトランティック地域はほぼゼロという結果になった。
仕事の機会やクオリティオブライフなどを考えると、どうしても田舎の州に住む人口は少なくなってしまうと考えられる。
9. 日本からの移民、76.5%は女性
日本人の海外流出が進んでいる中、外務省の海外在留邦人数調査統計によると、カナダに住む日本人の数は5万510人で、アメリカ(約22万3000人)、オーストラリア(6万1000人)についで3位だということがわかった。カナダはワーキングホリデーやCo-op留学の人気国でもあり、在住者が多いのも納得だ。
留学生などを除くカナダの日本人永住権者に注目して見てみると、興味深い事実が浮かび上がった。カナダ政府の国勢調査によると、2001~2021年のカナダに移民した日本人のうち76.5%は女性だったという。これはアジア地域のどの国の割合よりも顕著な傾向で、2位のベトナムの64%よりもかなり多い。女性の社会進出が遅れていることや、子育ての面でも日本を離れる決断をする女性が多いのではないかと専門家は分析している。
10. PR保持者40%がカナダ国籍ゲット
PR保持者数は増えているが、一方で市民権を取得する割合は年々減っていることがわかった。
Statistics Canadaによると、2021年にカナダ市民権を取得しカナダ国籍を得た人の割合は40%だった。2016年には60%、20年前の2001年は75%のPR保持者が市民権を取得していたことを考えると、かなりの落ち込みということになる。
専門家は、カナダの物価上昇や住宅価格高騰、労働市場の影響が原因の一部ではないかと推察している。
ちなみに、市民権を得るためにはPRを保持し過去5年間のうち3年間(1095日)をカナダ国内で暮らすこと、英語かフランス語の語学力を証明し市民権のための試験に合格することなどの条件をクリアすれば良い。
日本人の場合は二重国籍が認められていないため、カナダか日本かどちらかの国籍を選ぶ必要がある。
国によっては二重国籍、多重国籍が認められているところもあり、2つも3つも国籍を持っている人々もいる。