第6回「バレエに、才能は必要ですか?」|トロントのバレエ教室から
「努力すればバレリーナになれるのでしょうか?」
そう聞かれたら、私は少し答えに困ります。
もちろん、他のスポーツでも、プロとして活躍するにはある程度の「素質」が必要でしょう。バレエにも、努力だけでは補うことが難しい要素があります。
まずは身体的な条件です。皆さんがイメージするバレリーナには、小顔で手足が長く、すらりとした身体という印象があるかもしれません。実際に、骨格や関節のつくり、柔軟性、脚のライン、筋肉のつき方などは、バレエを踊るうえで大きく関係します。身体をコントロールする能力や音楽性もそうです。
では、身体的な条件がそろっていれば、バレリーナになれるのかといえば、そうでもありません。
私は思うのです。心の中にあるものが、ふっと身体からこぼれ出てしまう感性——それもまた、バレエの才能のひとつなのだと。
同じ振付を踊っていても、なぜか目が離せない子がいます。音楽から何かを受け取って、それを自然に身体で語れる子。表現の「仕方」は教えられても、物語やキャラクターに命を吹き込めるかどうかは、また別の話なのです。
そしてもうひとつ。「バレエが好き」という気持ちも、立派な素質のひとつです。
先生がどれだけ環境を整えても、家族がどれだけ支えても、踊っているときの目の輝きや、舞台を見たときの憧れ、「もっと踊りたい」という気持ち——それだけは、その人の中からしか、生まれてこないものです。
ただ、どれだけ素質に恵まれていても、練習をしなければ技術は身につきません。持って生まれたものを、どう育てていくのか。そこにこそ、ダンサーが「ダンサーになっていく」時間があるのだと思います。
先生として子どもたちを見ていると、「この子は、自分が持っているものを、これからどう使っていくのだろう」と考えることがあります。
才能は、誰かと比べるためのものではありません。その子の中にあるものを見つけて、大切に育てていく。そして本人がいつか「これが私の踊りなんだ」と思えるところまで、一緒に探していく。それもまた、バレエを教えることの楽しさなのだと思います。

緒方理穂
Ogata Ballet Schoolディレクター 子どもから大人まで、初心者からプロまで、一人ひとりのバレエと向き合う時間を大切にしながら、日本人・カナダ人を問わず丁寧な指導を行っています。 Website: ogataballetschool.caInstagram: ogata_ballet_school











