シェア、ミニマリスト、メルカリとお片付けが生み出す現代社会|バンクーバー在住の人気ブロガー岡本裕明

 メディアでしばしばお見掛けするシェア経済、モノの所有を極限まで絞り込むミニマリスト、要らないものはメルカリして違うものをゲット、さらに「こんまり」こと近藤麻理恵さんに見られるお片付けは価値あるものを引き出しやすくすることで無理無駄を省くという発想でしょうか?これらは現代のトレンドとも言えそうです。いったい、今、何が起きているのか、単なる一過性の流行なのか考えてみたいと思います。

 世の中、モノが売れなくなったといわれています。それが物価が上がりにくくなった原因の一つでもあるのですが、なぜでしょうか?もちろん、専門的な見地からはいろいろな理由が上がってくるのですが、もしも一つだけ理由を挙げよ、と言われたら私はずばり、「欲しいものはみんな入手可能で、どうしても独占したくなるものはないから」と答えます。

 1960年代から80年代ぐらいまでは消費社会のエンジンが全開していました。なぜならモノの性能が日増しに上がり、ライバルが次々と競合製品を発売し、消費者はそれらに歓喜し、多少高くても最新型を手に入れることで周りの人から「へぇ、すごい!」と言われる優越感がありました。言い換えればイノベーティブな時代だったといえます。

 当時の自動車の宣伝はその典型で、エンジンの排気量、次々生まれる内装装備品、安全対策に燃費改善、更にはデザインが一新され、より大きく、豪華に変身していきます。「いつかはクラウン」というトヨタのキャッチコピーを覚えているお父様はいますか?人生の間に何度か車を買い替え、クラウンに乗れるような成功した人生を送りたい、という願望でありました。つまり、人生とモノの消費はリンクしていて、両者は常に上に向いていたのです。

 ところがバブル崩壊のころから様相は変わります。昔は全身ルイ ヴィトンやシャネラーという言葉もありましたが90年代になると個性を全面的に押し出す時代になります。背伸びしても高級ブランドに手が出ない人たちは景気が後退する中、新しい自己表現を求めるようになります。これは80年代までの「集団における強制的消費行為」から「自分だけの愉しみ」に変わったきっかけとも言えます。

 例えば昔は会社の上司の誘いとならば「飲み」はマストで参加でした。それがいつの間にか「いやいや参加」で二次会は絶対に来ない、という流れになったのも「自分の世界」が確実に生まれ始めていたからでしょう。

 時代は一気に現代に飛びます。「MUJI」の宣伝がカナダでも目につきます。なぜ、無印良品が日本でヒットし、世界に広がったのでしょうか?この根本思想は「NO FRILLS」です。皆さんおなじみのあの安売りスーパーと同じコンセプトでした。この会社が生まれた際のトップであったセゾングループの堤清二氏は商品にブランド名が付かないことで安くしてお客様に喜んでいただくことを強く打ち出します。当時、無印良品が日本国内で著名になりかけた際、堤氏は幹部社員に激怒したとされます。

 そんなMUJIに人が集まり始めたのは自分たちの色を自分で作るという社会の趨勢を捉えたのでしょう。同じことはユニクロにも言えます。ベーシックなデザインはH&M、GAP、ZARAに勝てないのではないかと言われましたが、ユニクロは洋服をファッションではなく、機能衣料で売り込んだところに独自性がありました。基本に忠実な高性能衣料を自分のスタイルに合わせて着こなすのは今では30〜40代の人には当たり前の行為でありましょう。

 次に起きたのが今回のタイトルの通り、シェア、ミニマリスト、メルカリにお片付けであります。これは究極の絞り込みを通じて何か面白いものを自分でも体験したい、皆と分かち合いたいという共同体的発想に近くなっています。

 私が経営する東京のシェアハウスでシェアメイト同士でもめたことはほとんどありません。世の中でカーシェアリングやウーバーなどのライドシェアはビジネスとして成長しています。トヨタとソフトバンクはMaaSという新たなる移動コンセプトを研究していますが、そこにはシェアという発想が源流にあります。

 借りられれば所有する理由はありません。CDやDVDを買う人はマニアを除き、ほとんどいなくなったのは画像や音源をシェアするという発想でした。ですが、音や画面はシェアしても他人の使った中古だと誰も思いません。ここに現代の人がシェアに芽生えた原点があったとも言えそうです。

 この潮流が何を意味するか、といえばモノなんて買わなくても、所有しなくても、専有しなくても大丈夫!という安心社会が確立されてきたともいえるでしょう。毎日うまいものを食べて欲しいものを好きなだけ買える人がうらやましいか、といえば人々は興味を示しますが、そうなりたいとは思わなかったはずです。

 昔、笑い話で聞いた「アラブの王子様と結婚したい」と今でも思う人はいますか?ZOZOの前澤友作社長は一時、メディアに大露出していましたが彼のライフがトレンドとなることはありませんでした。なぜなら生き様が今の時代と真逆だからです。私から言わせれば若いのにオヤジ臭いライフスタイルなんです。

 「こんまり」さんはファッションにいつも白を取り入れているそうです。清楚であると同時にクリーンなイメージなのでしょう。世の中、大輪の派手さから可憐な美しさにシフトしたという表現が一番ぴったりくるでしょうか?目立たないけれど幸せな自分だけのライフを独り占めする、とも言えそうです。

岡本裕明(おかもとひろあき)

1961年東京生まれ。青山学院大学卒業後、青木建設に入社。開発本部、秘書室などを経て1992年同社のバンクーバー大規模住宅開発事業に従事。その後、現地法人社長を経て同社のバンクーバーの不動産事業を買収、開発事業を完成させた。現在同地にてマリーナ事業、商業不動産事業、駐車場運営事業などの他、日本法人を通じて東京で住宅事業を展開するなど多角的な経営を行っている。「外から見る日本、見られる日本人」の人気ブロガーとしても広く知れ渡っている。