まだまだわからないアメリカ大統領選と今後のアメリカ|バンクーバー在住の人気ブロガー岡本裕明
今年の11月、アメリカの大統領選が行われる。下馬評はバイデン対トランプの老々対決でトランプ氏のリベンジなるか、というのが我々庶民の目線であるが、世の中、そう簡単に見通せるものでもないし、世界の不和や分断するアメリカを含め、今後半年強で起こりうるシナリオはゲームのようでもあり、我々の生活にも密接な関係となるはずだ。知っていて損はない大統領選の行方と今後を考えてみよう。
本稿を書いているのが2月上旬なのでこの記事が皆様の目に留まるころにはスーパーチューズディを過ぎているのかもしれない。通常の大統領選であればその時点であらかた共和党、民主党の候補者は絞られる。が、私は今回はそんな単純な勝負にならない可能性もあるとみている。
まず、国民は誰が大統領としてふさわしいのかと考えるのかだ。これを書く時点で共和党は一応トランプ氏とヘイリー氏が残っている。だが、世論調査の支持率を見る限りトランプ氏が75%に対し、ヘイリー氏は20%にも満たない。
ところが切り口を変えた統計だとトランプVSバイデンならバイデン氏が上、バイデンVSヘイリーならヘイリー氏が上と出る。つまりトランプ氏にもしものことが起きればヘイリー氏が優位に立つというシナリオがあるのだが、ヘイリー氏がスーパーチューズディを過ぎても大統領選をあきらめない可能性は限りなく小さい状況だ。
ヘイリー氏の何が足りなかったか、と言えばアンチトランプ票を取り込んだものの元国連大使という外交の肩書が庶民感覚とずれまくったのが最大の弱点だったと断言してよい。
外交は大統領選の争点にならず、経済問題や社会問題など国内問題が選挙の争点といってよい。ここがヘイリー氏自身のイメージ戦略とチカラが及んでいないところではないだろうか?
共和党はトランプ氏で盤石なのだろうか?
まず、大統領選の11月までに待ち受ける様々なハードル、特に司法の問題が大きく、4つの大きな裁判、及び30件以上もある訴訟、そしてそれにかかる訴訟費用は莫大であり、どこからそれを捻出しているのか、という疑問も残る。
選挙費用には寄付が集まるものの個人の訴訟費用をそこから捻出するわけにはいかない。
よってトランプ氏としては大統領になれないと経済的な困窮が待ち構えている上に77歳という年齢的にも今回が最後のチャンスということになる。本人が必死になるのも当然である。
一方のバイデン氏は現在81歳。言い間違いぐらいならともかく、足元がおぼつかない時もあるのに大統領に再選されれば82歳から86歳までの任期になる。いくら何でもホワイトハウスに居座っているわけではなく、国内外の移動のほか、無数の案件を捌くという俊敏さ、記憶力、体力、知力、気力が求めらえる。
バイデン氏は今は大統領という職ゆえに一応しっかりしているように見えるが人間の生命力は一旦緊張感が切れるとガクッと落ちるのが世の常。よって今後更に約5年、緊張感を維持できるかが勝負になる。
バイデン氏を支持する層はバイデン氏がまるで不死身の男のように思っているのだろうか?正直、今回の老々対決は私には漫才にしか見えないのだ。
トランプ氏が当選の場合、アメリカは国家主義になり、非常に内向きの国家となろう。
外国との積極的なやり取りは控え、自国中心主義となるため、世界の中のアメリカの立場は大きく揺らぐ。日米関係も安倍氏の様な人材が今の日本の政界にいないことから押し込まれる一方になりかねない。
中国とロシアにとっては案外与しやすいかもしれない。理由は心のうちが非常に読みやすいからだ。
一方、バイデン氏の場合、老獪であるが、民主党の次のリーダーを育てなかったことは恥じるべきだ。
大統領選にまともな対抗馬となる候補者すらたてられない民主党は烏合の衆とも言える。
外交はあまりにも真っ向からの勝負でアメリカらしいリーダーシップをとることは期待できない。
バイデン氏自身がフットワーク軽く、国内外の交渉に出られるとは思えず、バイデンアドミニストレーションがどれだけ支えられるかが勝負だろうが、枠組み以上の成果は期待できない。
G7メンバーでトランプ氏が大統領の時からの残留組はフランスのマクロン氏とカナダのトルドー氏だけ。トランプ氏とトルドー氏は不仲であり、性格も全く合わない。マクロン氏とトランプ氏も性格は合わない。新しいG7のメンバーではもしかしたらイタリアのメローニ氏とはウマが合うかもしれないが所詮イタリアだ。アメリカが一生懸命になる相手ではない。となればトランプ氏自身、G7への興味は限りなく薄くなるだろう。
トランプ氏の見る日本については嫌いじゃないが、贔屓することもない。よって防衛に関しては日本は極めて深刻な判断を迫られるはずだ。
同様に米軍と共同戦線を張る韓国軍にも影響は出よう。とすれば北朝鮮とその裏で糸を引くロシアにとっては笑いが止まらない事態になるはずだ。
北朝鮮と中国の外交は冷めているが、中国も太平洋進出には好都合になる。日本は政局で揺れているが、そんな内向きのやり取りをしている場合ではないということを肝に銘じるべきであろう。
トランプショックという言葉が2025年に聞こえてこないことを望む。
了