SNSに騙されるな|バンクーバー在住の人気ブロガー岡本裕明
SNSが我々の日常社会に当たり前のように入り込んでくることにほとんどの人は容認どころか感謝している感すらある。理由は好きな情報だけが入り、嫌なことをシャットアウトできるからだ。ショートケーキでイチゴとクリームだけ食べるようなものかもしれない。
だが、そこには落とし穴もある。モノの見方は見る角度によって全く違うことを忘れかけている。おっちゃんの警鐘だと思って読んでもらえると嬉しい。
大方8割の人は騙されるはずだ。「出資するよ」って。何故だろう?学歴がすごすぎてきっとこの人は賢いのだろうと勝手に自分で想像をするからだ。しかし学業がどれだけ凄かろうが、どれだけ著名な会社に入ろうがその人の人間性はそこから見る方法はない。会社勤めの時は組織業務だが、外資系などは一匹オオカミ的で数字や結果を残すかどうかが決め手になることもある。つまりどれだけ嫌な性格だろうが、人を蹴落とす最悪な人格だろうが結果が全てならその人は実績としては確かに一定のものを残すのだ。
ではその人が社長となって新しいビジネスを立ち上げれば確実に成功するという方程式は成り立つだろうか?残念ながら成立しないのだ。理由はビジネスは学歴でも経歴でもないからだ。創業者が持つ才能と熱意と組織をまとめる力と人間力こそが源泉だからだ。ここを普通の人は見落とすのだ。
石丸伸二氏が都知事選の時にSNSを持ち込み、過激なスタイルで旋風を巻き起こした。話題性の創出という点では堀江貴文氏とかひろゆき氏同様、発言にパンチを持たせ、それを切り取らせ、SNSで拡散してもらい賛否両論を巻き起こす点で手法は似ている。実はSNSがブームになる前に同様の手法で世渡りが上手だったのが小泉純一郎氏で特に郵政解散はその極みと言えよう。
だが、自分の主義主張を貫くために世論に必要以上の旋風を巻き起こすのが良いのかどうか、これは議論の余地がある。
例えば最近は少しおとなしくなったがイーロン・マスク氏のつぶやきはその度にアメリカのみならず世界で瞬時に話題となり議論となった。
物事は見る角度により見方が全然変わるのだが、我々は数行の短文にすっかり踊らされ、おどろおどろしい表現に思わず引き込まれる、これが人間の性であるのだ。それは人々が長い文章を読み解くことを忘れつつあり、あまりにも多くの情報が洪水のように押し寄せる中、個々の情報に対する反応をホールドする余力がなくなっているからであろう。
例えばLINEに来るメッセージを24時間放置できるか、といえば9割の人は出来ないだろう。KYという話ではない。そこにメッセージがあれば開けたくなるのが人間の必然的な反応なのだ。クリスマスや誕生日の日に目の前に箱が届いたら開けたくなるだろう。1週間放置する人は稀なはずだ。
LINEなどのショートテキストメッセージはEメールより緊急性を要するという意味合いと同時に、開けやすさと返信しやすさという特徴もある。故にどうしてもそこにはまってしまうのだ。
私はビジネスをする中でどうしても緊急性があればさっさと電話をしている。もっとも、最近は電話そのものを拒絶する人が増えているのも事実だ。理由は「説得させられる」からだ。つまり論破させられ、言い返せず、同意せざるを得ないのだ。何故言い返せないかといえば口頭での議論、言い返す練習が出来ていないといえそうだ。
これはプレゼンテーションに対するディスカッションというプロセスを全く経験していないことを意味する。激しい議論とは双方がイシューに対する深い理解の中、激論を戦わすことをいう。だが例えば国会答弁を見てもわかるだろう。官僚の作った答弁書を丸読みだ。あれなら大臣でなくてもロボットにやらせればよい。つまり世の中が一から十まで簡便化してしまい、良いところだけをつまみ食いする社会になってしまったといえよう。
これが当たり前になると我々は大失態を犯すはずだ。例えば選挙でよきと思われた人が実はとんでもない悪玉だったということは最近の日本のニュースでもよく取り上げれているのでご存知の方も多いだろう。つまりSNSを通じておいしいところだけを聞いて他のところを無視しているのが実態なのだ。
もちろん私はSNSを否定しているのではない。単純なやり取り、つまり一点だけに集中できる議論はSNSが素早い対応になるので有難い。私はそれが政治のように100の観点から見なくてはいけないコトを3つだけ見せて「俺はすごいぞ。やってやる!」と言われてパチパチとされるのはどうか、と言っているだけだ。
今、あるイベントの準備を進めているのだが、ほぼ全部SNSでのやり取りが主体だ。短文でのやりとりゆえに双方が全然違う理解になることもしばしば発生し、頓珍漢なことが頻発している。私はこれが嫌なので伝統的手法を望むのだが、相手は24歳の賢い女性で「Eメール?マジ?原始的ねぇ」と言われかねない。今は100歩譲ってLINEでやり取りをしている。そのうち、私もSNSで全部やりとり万歳の虜になるのだろうか。恐ろしい時代になったものだ。
了