遡る鮭の森|オンタリオ州・アウトドアの魅力。楓の森の歩き方 第63歩
オンタリオ湖にはかつて、セントローレンス川でつながる東部の大西洋から入ってきたアトランティックサーモンが淡水に順応し、小魚など餌の豊富なオンタリオ湖で繁殖していました。
二百年ほど前の歴史資料では、産卵のために川を遡ってきたアトランティックサーモンを樽などで簡単に獲れたそうです。アトランティックサーモンが、先住民の方々やヨーロッパからの入植者の重要な食料になっていたのです。そして、アトランティックサーモンが豊富で捕獲できると聞きつけた漁業関係の入植者も増え、商業的な漁業が始まりました。それに加え、農業や工業の影響による水質汚染、ダムの建設などでアトランティックサーモンの生息数が激減し、ついに1898年に、アトランティックサーモンはオンタリオ湖からいなくなりました。
オンタリオ湖に生息するアトランティックサーモンの減少に伴い、同じ大西洋から入ってきた小型の魚、エールワイフが爆発的に増殖し、生態系を乱すようになりした。そのため1860年代に、太平洋から繁殖力が強く、より大きく成長するキングサーモン(Chinook Salmon、和名マスノスケ)を川に放流し、エールワイフ対策として繁殖することに成功しました。キングサーモンはオンタリオ湖の流入河川に上手く順応し、産卵、孵化し、淡水の湖で大きく成長することができたのです。
1960年代には、ヒューロン湖とミシガン湖でも同様にエールワイフが爆発的に増殖し、キングサーモンや他の鮭を放流、繁殖させています。
1940年代には、オンタリオ湖で絶滅したアトランティックサーモンを復活させようと、稚魚の放流も行われ、まだ数は少ないですが、アトランティックサーモンの生息が確認され、保護されています。
現在ではなんとオンタリオ湖に、アトランティックサーモン、キングサーモン、コーホーサーモン(銀鮭)、ピンクサーモン(カラフトマス)が生息しています。オンタリオ湖は、決して同じ水域に生息することのない大西洋と太平洋の鮭たちが同じ湖に生息しているという、世界でも稀有な湖なのです!!
毎年、8月の末頃から10月の初旬頃に鮭たちは産まれた川に産卵のために戻ってきます。キングサーモンは、オンタリオ湖で豊富な餌を食べ4、5年で80センチ以上と大きく成長し、産卵のために川を遡上します。川の上流域で約八千個の卵を産卵受精し、その一生を終えるのです。
私が住んでいるポートホープエリアでも、毎年ガナラスカリバーを遡上する鮭たちの姿を目にすることができますし、多くの釣り人たちが巨大なキングサーモンを釣り上げようと、川べりで長い竿を振っています。(もしアトランティックサーモンが釣れた場合は、保護されていて持ち帰りが禁止させれていますので、優しくあつかってリリースしてくださいね。)
ガナラスカリバーやトロントのドンリバーやクレジットリバーなど、河口域のダムの脇にフィッシュラダーと呼ばれる魚の通り道が整備されていて、飛び上がって遡上していく鮭たちの勇姿を見ることができますので、力一杯に遡上していく鮭たちの姿を見に行ってはいかがですか?
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Holly Blefgen(ホリー・ブレフゲン)
オンタリオ・アウトドアアドベンチャーズの代表。ナチュラリスト。春から秋にかけてカヌーととトレッキング、冬はテレマークスキーでネイチャーフィールド へ。30年余りに及ぶガイド経験を持ち、オンタリオ州及び日本における文化・歴史・自然にフォーカスしたツアーを通して、クライアントとその情熱を共有す ることを愉しみにしている。
Special Thanks, Cameron T Powell 写真 / アートワーク / レイアウト:尾西知樹 翻訳:瀧川貴子