【後編】 ランナー相馬枝里子さん × マッサージセラピスト青嶋正さん|プロアスリート対談


陸上強豪校の出身の相馬さんと青嶋さんは前編と中編を通して、選手個々を理解したトレーニングの必要性について話した。対談を締めくくる後編では栄養の摂取法やコンディショニングの大切さについて語り合う。
青嶋: 陸上部でのボリューム重視の練習は良いところはありましたか?
相馬:: 人それぞれかもしれませんが私はあまり良いと感じませんでした。痩せることを目的とした走り込みも向いていませんでした。体重が重要だと思っていたので。レース前に大福を食べるのが私の流儀だったんですよ。そして大事なことはフォームだと思います。私はスキーの経験から内腿筋や大腿筋といった筋肉や軸がもともと出来ていて備わっていました。それでも「細かく走れ」とフォームを変えさせられたことがありました。背も大きいし、筋肉もあるのにやらされている感があり、もっとも重要な「楽しい走り」ができなかったんです。
青嶋: ユーチューブでスポーツ選手の話を見て印象的だったのは、プロの世界ではコーチが毎年変わったりするので、指導や方針が変わり潰れていってしまう選手がいるそうです。

私が知っている世界的クラスのスケート選手も似ています。コーチの言うことを聞かないどころか、彼らのところにも行かない。知っているコーチは僕にいつも愚痴っていましたよ。それって普通に見るとコーチと仲が悪いとか練習が嫌いだとか思われるんですが、逆に言ったらその選手には自分のやり方があるということなんですよね。だからなんと言われようが自分を貫く。そして実際にその彼らが世界のトップ選手になっているんです。
相馬:: 同じようなアスリートはいると思いますが、なかなか言えない環境があると思います。生理がこなければ一人前、痩せていれば一人前、疲労骨折すれば一人前など悪しき環境があって、言い出せないことが問題です。

青嶋: 栄養士のバックボーンもある相馬さんだからこと相談されることもあるのでは?
相馬:: 疲労骨折一つとっても食事の問題だったり、生理がきていないことによって骨が弱っていたり全てが関係してくるのです。
青嶋: 疲労骨折なんて一日ではならないですからね。食事の問題だったり、患部にずっと負荷がかかっていたりするわけで、それに気づかない状態が続いているということが問題です。陸上であればなおさら競技を始める前から、このようなことを防ぐための走りをしましょう、とプランニングするところからスタートすべきだと思いますね。
青嶋: 栄養の面からはどうですか?
相馬:: 1日10の食べ物を摂ることを勧めています。朝食べるのが苦手ならシリアルでも良いけど毎日同じものはダメとしています。
青嶋: 最近巷でささやかれている食材自体の栄養の欠如についてはどう思います?
相馬:: 食べ物から摂るということは、内臓を鍛えるという効果もあります。栄養の数字を合わせるだけならサプリメントでもいいと思います。
青嶋: 僕の考えは併用するのが良いと思っていて、必須とされる栄養を食事から摂るのは大変なのでサプリメントから摂り、プラス食事もやった方が良いと考えます。
青嶋: 最後にコンディショニングについて話をしたいのですが、マッサージやストレッチが必要ない身体だと言うアスリートがたまにいるんです。そういう人は例えばぺたんと身体がついたりできてしまうわけですが、そもそもストレッチとはアクティブモーション、つまり自分で作り出すものです。関節の可動域以上に行くわけがないんです。それができるのと、筋肉が伸びているということは別問題なんですよね。
往々にしてあるのが、「ストレッチでは目的の筋肉を伸ばせない問題」です。「筋肉が長いもしくは柔らかいなどの理由でストレッチしても全く感じない」、「体が柔らかいように見える」、「一般の人と違う部分に疲れが溜まっている」、この様なケースでは筋肉を直接緩めるなどの方法が必要です。
相馬:: 今までは怪我もなくうまくやってきて、身体も強く、フレキシビリティもあって何をやってもきついということは起きなかったんですが、だからこそ溜まっている疲れにも気づかなかったんだと思います。走ることを止めて普通の身体になって分かった気がします。
青嶋: 自分の頭のイメージと身体にズレが生じているんですよね。それがスランプにつながるんです。いきなり下手になるなんてことはありえないですから。筋肉も必要だけど、ケアも必要なんです。
青嶋: あるサッカー選手の話なんですが、彼は試合の時に身体のどこにも違和感を感じたくないと言うんです。全速力で走っている中でボールが飛んできて、そこでどうするかなんて考えていたら、相手にボールを取られてしまう。その時が来たら身体が自然に動いている、そして持っているセンスの100%がそこで使われるわけです。その時に腰が痛いとかどこかが変だとなどと感じていたら絶対無理なわけです。
きっとこれはすべてのアスリートにとって同じことだと思います。トップでやるということは、すごく細かい練習や難しい練習をやらなければいけませんが、それのもととなるのは最大可動域が確保できるくらいのコンディショニングができた身体だと思うのです。












