【第二回目】プロフットボールCalgary Stampeders #19 佐藤敏基選手から学んだトレーニング方法 × マッサージセラピスト青嶋正さん|プロアスリート対談
青嶋:きちんとしたストレッチとはどのようなことだと思いますか?
佐藤:自分の体に必要なことが出来ているストレッチで、時間は関係ないと思っています。プロは皆、自分独自にトレーニング完成しているのでチームメニューに加えて、個人のトレーニングメニューを追加で各々やっています。
話しながらリラックスして行っているようで、自分のやるべき動きを理解しているのでポイントは逃さずやっている印象です。長くやれば良いのでないのです。
青嶋:プロフットボール・キッカーに要求される動きはどのようなものですか
佐藤:キッカーは自分が生み出したパワーをボールに伝えなくてはいけません。ディフェンスが直接相手にぶつかるのとは違います。ボールを蹴る動作がいくら強くても、軸足のポジションをしっかりしないとボールに力が伝わらないのでフォームの細かい部分まで気にします。
究極、キックする際の顎の動きと関連し、舌のポジションまでコントロールしています。このように繊細な動きを要求されるので、キッカーとクウォーターバックは研究熱心な人が多いです。
青嶋:さすが、フィールドゴール成功距離58ヤード(日本タイ記録)保持者ですね!キッカーの練習方法を教えて下さい。
佐藤:プロになると自分のスタイルを確立している人が多く、コーチなどの助言を取り入れない選手もいますが、自分はとりあえずどの様なアドバイスも一度は試し、良い部分だけを取り入れるように心がけています。
青嶋: 種目に関わらず素直さはアスリートに1番大切な要素だと思っています。
出会った当初ですが、佐藤選手が身につけてきた知識と私のアプローチと全く方向性が違うように感じましたが最初はどう感じましたか?
佐藤: 初っ端から青嶋先生に「難しく考え過ぎ」とズバッと指摘されたのは衝撃的でした。一見ユニークなアプローチが多くて面食らった部分もありましたが、多くの友人が推薦しているので何かあるだろうと思って続けました。
春から数ヶ月間キックの状態が悪く、自分の知識をフルに投入しても改善出来なかったのが、結果的に青嶋さんと取り組んで数週間で改善できて問題点も明確になりました。
この2点、はっきりと認識させてもらえたのは大きな収穫です。ある程度難しい知識を身につけたタイミングで青嶋さんと出会えたのも良かったです。
TADスタイルのアプローチとは?
最終的にコンディショニングは本人が出来なくてはなりません。なぜならば、体を動かす前後に毎回行うのが基本で、専属のトレーナーを雇わない限りこの条件を満たすのは不可能だからです。すなわち、私がやるべき仕事もこのポイントを本人に自覚してもらうことが重要だと考えています。
経験から一番有効なのは、難しい説明をするのでなく自分で行ったコンディショニングの効果を本人に感じさせ、出来るだけ良いパフォーマンスにつなげることです。
継続して地味な作業を本人に続けてもらうには、①簡単、②自分で触りやすいポイントを使う、③すぐ効果を感じやすい、を重要視しており、これに沿った方法をピックアップして本人に伝えます。
自分で行うコンディショニングで、すぐに良い結果が出たことを認識すれば今度はやめられなくなります。嫌々やるストレッチとは桁違いのスピードで良い結果が出るでしょう。
砂上の城
難しいトレーニングや厳しいトレーニングをすれば、良い結果がついてくるという神話を信じている人が多いです。結論から述べると、基本が出来てない人が難しいトレーニングをして良い結果が出ることは100%ないと断言できるでしょう。基本あっての難しいトレーニングであり、逆はありません。「ハッ!」と思った人は、今から基本に戻って再スタートすべきです。
基本とは?
一言で言えば、「主要関節の完全管理」です。体の動きの元は主要関節なので、
- 各関節の可動域が十分に保たれているか?
- 関節周りの筋肉、腱、靭帯が柔らかく保たれているか?
などがベースとなります。
しつこいようですが、難しいトレーニングは、このような基本的コンディショニングがパーフェクトであることを前提にデザインされているので、ここが出来てないと本末転倒、怪我のリスクを上げてしまうだけです。
そして、もう一つ大切なことは、体の動きは連動しているので全身の関節を抜けなく管理することです。
抜けを無くす(ミスを防ぐ)方法
色々なテクニックをバラバラに持ってくるのでなく、関節主体といったようにメインの考えをが元に、前身を順番に管理することにより抜けなく管理しやすくなります。コンディショニングのチェック項目は少ない方が良いので、ダブっていたり細かすぎる方法は省きます。
いつも同じ方法でいつも同じポイントを管理しているとミスが少なくなり(=怪我が減る)、コンディションのアベレージが上がってきますし、日々の体の変化に敏感になります。
知識が増えると、とかく基本を忘れて難しいことだけに取り組む傾向にあります。
難しいテクニックは体の基本が出来ていての話なので、この点を忘れるとプレーの不調が体の不具合から来ているのに、技術を修正して一向に結果が出ないと言う状態に陥ってしますでしょう。