2024年、インフレは抑制されるのか?|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第67回
ここ数年で世界はコロナからの脱却を果たしたものの、サプライチェーンの混乱、戦争による穀物価格やエネルギー価格の高騰により、世界中でインフレが進みました。各国はインフレを抑制すべく利上げを繰り返してきましたが、家計や企業は金利の上昇とインフレの二重苦に見舞われました。さて、2024年はこの状況を脱することはできるのでしょうか。そして、ラーメン屋としてこの状況をどのように乗り切ればよいでしょうか。
現状をおさらいすると、2022年初頭、0.25%だった政策金利は10回の利上げにより5%にまで上昇しました。これにより車のローンやモーゲージの返済額が急上昇し、かくいう私も、年間でモーゲージの支払いが一万ドル以上も増えて、なかなかしんどい状況です。それでも物価の上昇は抑えられず、カナダの消費者物価指数は2022年で6.8%上昇し、2023年は3.9%にまで抑えたものの、目標の2%にはまだ到達できず、というのが現状です。カナダ中銀によれば、今年の3月までに3%以内に収まるという予測をしており、それが実現すれば、問題なく利下げに舵を切っていくことでしょう。
では、何も問題はなく世の中はまたぐるぐると経済を回していくのでしょうか?
もちろん経済はそんな単純なものではなく、簡単にそうは言えない事情もありますので、ラーメン屋的視点をもって見てみましょう。
先ほど挙げた消費者物価指数ですが、実は8つのカテゴリーに分かれており、食品はいまだ4.7%と高い水準を推移しています。これは食品自体の価格が高止まりしていることに加えて、飲食店や小売店では従業員の賃金の上昇が食品全体の物価指数の高水準を後押ししているという背景がありそうです。しかしながら、そうは言ってもお腹はすく、ただし家計は圧迫されている、となるとやはり外食の回数を減らす、もしくはランチのバジェットを下げる、というような消費行動に現れてくるでしょう。
景気が良ければ、商品価格にコストを上乗せすればいいわけですが、そう簡単に踏み切るには景気の動向が心配です。ここ10年ほどずっと物価や賃金が順調に上昇してきた中で、単純にコスト増を価格転嫁してきた企業やお店は少なくないと思いますが、ここに来て今までの打ち手が通用するのか、というジレンマが浮上しているのかもしれません。
ではどうすれば良いのか?飲食店が取りうる選択肢は二つ
一つ目は、商品にさらに付加価値を乗せたうえで価格を上げるという選択です。飲食店のビジネスは、食材を調理して付加価値を付けた上で商品を販売するわけですから、単純に価格を上げてお客さんが離れる心配があるのなら、それ以上の付加価値を乗せて価格を上げれば何も問題はありません。値上げによりバジェットを超えてしまったお客さんの客足が遠ざかることがあっても、別の客層の新規顧客がそこを埋めてくれます。
二つ目は、コストを下げることで利幅を確保して価格は据え置きにするという選択です。売り上げからコストを引いたものが利益なわけですから、コストが上がって利益が確保できないのであれば、食材、あらゆる備品、従業員のシフト、オペレーション、すべてを見直して削れるコストを削れば、利益は確保できます。
と、言葉にすれば実にシンプルな話ですが、簡単なことではありません。むしろ、すごく大変なことだと断言できます。さらに、一朝一夕で出来る事でもありません。しかしながら、総じて企業努力とはそういうもので、そのたゆまぬ努力の積み重ねこそが企業価値なのではないでしょうか。