ROMで学ぶThird Genderと日本の歴史
第三の性(Third Gender)、その言葉を今では聞き知った人も多いのではないだろうか。男性と女性の狭間に存在する性を表す言葉で、近年ではLGBT(レズ:Lesbian、ゲイ: Gay、両性愛者:Bisexual、トランスジェンダー:Transgender)としても広く知られている。
では、日本ではいつの時代から第三の性と呼ばれる人々が認識されるようになったのか?その答えは、現在、ロイヤル・オンタリオ博物館(以下ROM)で、明らかにされている。
カナダでは最大規模の日本美術の保持を誇るROMで、「Third Gender〜Beautiful Youths In Japanese Edo-Period Prints and Paintings〜:第三の性〜若衆と浮世絵〜」と銘打った展示会が開催されている。江戸時代、『若衆』と呼ばれた若者がなぜ第三の性を担うことになったのか、その役割や歴史、歌舞伎や遊郭などといった当時の日本文化が浮世絵を通じて語られている。ROMが所有する浮世絵は3,500枚以上あり、今日まであまり披露される機会は少なく、今回の展示会は実に40年ぶりとなる。
その火付け役となった人物は二人、ニューヨーク・フォーダム大学美術史助教授であり、ロイヤル・オンタリオ博物館研究者の池田杏里氏(当時)とBritish Colombia大学のアジア学教授、Joshua Mostow氏だ。
池田氏によると、同展示会は、口コミが広がり多くの来場者で会場が賑わっており、またLGBT団体よりコメントを受け取るなど、多くの関心を寄せられているとのことだった。しかし、日本ではこういった性を扱う美術作品を扱うことは難しく、また教科書にも載っていないため、性文化について考える機会は多くないと述べた。さらに、「日本の美術作品をカナダに住む人々に見てもらいたいと思ったのと同時に、この展示会がジェンダーやセクシャリティについて考える場になればと思っています。また日本ではまだまだ同性婚への認識が世界基準に達しているとは言えません。それが少しでも推進してほしいと願っています。」とその思いを語ってくれた。
Joshua Mostow氏による『若衆』の講演では、若衆とは、江戸時代元服前の10代の男性を意味し、江戸時代から始まった若衆の役割、歌舞伎との関連性、男色や遊郭などの性文化などを、奥村政信や鈴木春信などの江戸時代を代表する浮世絵師の作品を用いて説明された。Mostow氏は、「すでにたくさんの人々がこの展示会に興味を持ち、訪れてくれています。この素晴らしい機会に、より多くの人々がジェンダーやセクシャリティについて知るきっかけになればと思います。」と述べた。
5月27日より開催されているこの展示会は、わずか4週間で2万人の来場者を超えた。この数字は日本文化、それと同時にジェンダーやセクシャリティへの興味の高さを表していると言えるだろう。この展示会は今年11月27日まで開催されている。それは浮世絵の美しさ、日本におけるThird Genderの歴史を学べるだけではなく、ジェンダーやセクシャリティについて考える時間を持たせてくれる機会になるだろう。
British Colombia大学のアジア学教授、 Joshua Mostow氏 講演会
6月7日 ロイヤル・オンタリオ博物館