コロナウイルス の影響で変化した不動産事情|そこが知りたい!不動産のプロが教える賢いカナダライフ【第27回 】
トロント不動産協会(Toronto Real Estate Board=TREB)の報告によれば、2020年第一四半期の賃貸マーケットは、コンドミニアムを中心としたアパートメントの結果を見ますと、賃貸案件成約数は全体で7,192件(図1)、これは前年同期より8.6%アップし、バチェラー(ワンルームタイプ)、1BR、2BR、3BRの全ての部屋タイプで取引数が増加、特に3BRの取引数は前年同期比40.9%と大きく増えました。
一方、部屋タイプ別の平均賃料を見てみますと、これまで毎年比較の賃料アップ率は約8~11%と、上昇の一途を辿っていた賃料が一転して、マイナス2.4%~2.1%と前年比と差がなくなり落ち着いた感が見受けられます。実際の成約結果によるコンドミニアムを中心としたアパートメント物件の平均賃料は図2の結果となっています。
図2では、2017年~2020年の第一四半期の平均賃料を記載していますが、昨年は最も賃料アップ率の高かった3BRの平均賃料が今回はマイナスとなっており、その他のタイプの部屋でも賃料アップ率が大幅に減少しているのが特徴といえます。
賃料上昇が落ち着いた原因は①レントコントロールによる規制による賃料の大幅な上昇に歯止め、②Airbnb等短期賃貸物件への規制による長期物件賃貸の供給数の増加、③ダウンタウンなどを中心とした新築物件の完成と賃貸市場への供給増加、④コロナウィルスによる影響など、様々な要因が考えられます。
需給バランスの変化の1つとしてこれまでずっと0.7%の空室率であったトロントでは0.9%に若干増加した一方、トロント市以外の地域では、0.3~0.4%と非常に低い空室率となりました(図3)。
これは賃料が高騰したトロント市内ではなく、お手頃なエリアや物件を求めて隣接地区へ移動した人たちによる賃貸取引数が増えていることや、トロント市内に比べて他地区ではコンドミニアムの建物の供給数が少ないことが要因ではないかと考えられます。
コロナウイルスによって変わったこと
非常事態宣言などコロナウィルス感染拡大防止策により様々な影響や変化が出ている中、不動産の世界でもこの4月、5月の2ヶ月間において、幾つかの大きな変化があったと実感しています。
①バーチャルツアーや電子署名の活用
テナントのいる物件は基本的に内見不可となり、空室の物件であってもコンドミニアムの場合には建物自体が外部者をいれまいと内見禁止の措置をとる建物もどんどん増えていきました。
そんな中、ビデオや多くの画像で部屋を紹介したり、360度の映像カメラで紹介したり、テナント自身がバーチャルツアーで内見に協力したりと内見に関する様々な工夫がされるようになりました。これはマーケットに物件を紹介すれば苦労せずにすぐに借手が見つかっていたオーナーエージェントにとっては新しいチャレンジだったと思います。
また対面が難しいことから、契約書の取り交わしにおいて電子署名の使用が奨励されました。このようにこれまでは重視されなかった手法が広く普及し、受け入れらるようになったことは喜ばしいことだと思います。
②不動産商習慣への変化
契約成立後は必ずバンクドラフトでデポジットを支払うことや、毎月の賃料は日付指定の小切手を入居時に渡すなど、これまでは絶対的な『トロントの不動産の商習慣』が存在していました。
この商習慣について柔軟に例外対応をお願いしても聞き入れてもらえるケースは少なかったのですが、オフィスが閉鎖していることからデポジットを振り込みで行ったり、日付指定小切手ではなくEトランスファーでの賃料支払いを承諾するケースが多くなりました。このように「やったことないからダメ」から「あ、やってみれば問題なかった」を経験したことは、今後不動産取引システムをより柔軟かつ合理的にしていく上でとても大事なことだと思っています。
③売り手市場からの変化
コロナウィルスの影響で人の出入りが規制されている中、売買同様、家を探す人は大きく減りました。このことを背景に、賃料を募集当初より下げたり、少し先の入居日でもOKにしたり、本来ならば2か月分以上のデポジットが求めるところ2か月でOKにしたりなど、早く借手を見つけて安心したい、安定した収入を得たいというオーナーたちの心境の表れが見て取れました。
これによりこれまでは貸手市場一辺倒だった状況が少なくとも平等、場合によっては買手市場に変化したと感じています。しかしながら、家を探す人の実質数が減ったわけではないと思いますので、非常事態宣言が解除され通常状態に戻ればまた貸手市場に戻ってしまうことも大いに予想されます。そういう意味では今は借手にとってお部屋探しのチャンスかも?!といえるかもしれません。
まだまだ厳しい状況は続いていますが、経済再開に向けて少しずつ動きも広がっています。ようやく馴染んだ新しいライフスタイルと更なる変化に柔軟に対応しながら、皆で乗り切っていけるよう頑張りましょう!
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※本文は5月19日時点の情報に基づき作成いたしました。
スターツコーポレーション 増田利加
Starts Realty Canada, Inc