オーナーによる賃料アップ|そこが知りたい!不動産のプロが教える賢いカナダライフ【第53回 】
今回はオーナーによる賃料アップについてお話したいと思います。
住宅ローンの金利の引き上げに伴い、ローン返済金額が増えた場合、オーナーが一番に思いつくのは賃料アップといえるでしょう。現在の入居者が退去し、新しい入居者を募集する場合、オーナーはマーケット価格に照らして自分の好きな金額で募集を行うことができます。
現在入居者(テナント)がいる場合、オンタリオ州ではレントコントロールの政策がありますため、賃料をアップする際にはオンタリオ政府のガイドラインに沿ってテナントに通知する必要があります。
レントコントロールとは?
オーナー(貸主)はテナント(借主)に対して初年度の賃貸期間が終了した際、もしくは前回の賃料アップから12ヶ月を経た以降、賃料アップを行うことができる権利を有します。ただし、賃料アップの金額については賃料の上限率を定めた「レントコントロール」が存在します。
2017年4月にオンタリオ州政府による「Ontario Fair Housing Plan」の政策がスタートする前は、レントコントロールの適用対象は1991年以前に完成した物件のみでしたが、新政策以降はほぼすべての賃貸住宅が対象となりました。
図1は2017年の政策以降のレントコントロールの上限率です。コロナ禍の影響を鑑み、2021年は0%(賃料据え置き)でした。先日、2023年の上限率は2.5%と発表がありました。
レントコントロールの対象外物件
2018年のフォード政権誕生後、「新しく賃貸物件として貸し出された物件、部屋についてはレントコントロールの対象外とする」という新たな追加ルールが定められました。
これは例えば、新築で完成したばかりのコンドミニアムの部屋が2018年11月15日以降に初めて貸し出しされる場合や、これまで住居用として使用していなかった自宅の地下室などを改装し初めて部屋として貸し出す場合、オーナーは1年後に前述のレントコントロールの上限率に捉われず賃料をアップすることができます。
特に一昨年や昨年はコロナ禍によって例年より賃料がかなり低く貸し出された物件が多かったため、新築物件にお住まいになっている場合、翌年にはその時点のマーケット価格に応じてかなりの賃料アップを提示されたケースも見受けられました。
新築物件を借りたいと思う方は、翌年以降はオーナーが自由に賃料アップを決められる点についてくれぐれもご留意ください。
賃料アップを言われた際のテナントの選択肢
前回号でもお話しました通り、オーナーは賃料をアップしたい場合、90日前までにテナントに対してN1という通知書を送ります。テナントはこれを受け取ったら、1か月間検討する時間があり、次の3つの選択肢があります。
ご検討の際には、同じ建物の類似のお部屋が現在いくらで賃貸募集されているのか、最近いくらで取引されたかをご参考ください。
1. 契約を更新する
オーナーの要求通りに賃料アップの金額を受け入れ、契約更新の意向についてオーナーへ知らせます。更新は固定期間またはマンスリーの2種類ありますが、1年間の固定期間で契約更新する場合には、オーナー側に更新書面を作ってもらい、新賃料の金額、適用日について明記してもらいましょう。
2. 契約を解除する
契約満期60日前までにオーナーへメールまたはN9という通知書で知らせます。
3. オーナーと交渉する
自分の希望金額を伝え、オーナー側と交渉します。オーナーにとっては、新しいテナントを探す場合は、新たに1か月の仲介手数料を支払わなくてはなりません。そのため、オーナーもある程度は譲歩するケースも多いです。
なお、レントコントロールが適用されている物件にもかかわらず、オーナーが上限率を超えて賃料アップを求めるケースもあります。この場合、基本的にはテナントはこれを拒否する権利はありますが、悪意のあるオーナーは「自分が住むから出て行って」と言ってくる可能性もゼロではありません。現在の同じ建物類似物件の募集価格、引っ越し費用なども考慮されて、お互いの良好な関係を保つため双方で話し合うことをおすすめします。
ご不明な点がある際は自分のエージェントからアドバイスを受けたり、オーナーのエージェントに確認することもおすすめします。
賃料アップに関する詳細は、次のオンタリオ州ページをご確認ください。
Residential Rent Increases
ontario.ca
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