売買および賃貸マーケット動向|そこが知りたい!不動産のプロが教える賢いカナダライフ【第80回】
今年も紅葉シーズンが終わったと思った途端、急に冷え込んで長い冬のスタートになりましたね。今回は2024年前半と9月時点の動向を踏まえた賃貸マーケットと売買マーケットの状況についてお話したいと思います。
トロント不動産協会(Toronto Real Estate Board=TREB)の報告によれば、2024年第2四半期(4~6月)における賃貸物件募集件数は3万97件、前年同期比51.3%アップとなりました。
成約件数は1万7400件と、前年に比べて25.2%アップとなりました。第1四半期に続き募集件数が増加したことにより、賃貸ニーズは高いものの借手にとってより多くの候補物件がマーケットに増えている状況が続いています(図1、2)。
賃貸募集物件が増加した背景として次が主な理由として考えられます。
【売却から賃貸への変更】
モルゲージ(住宅ローン)の高い金利が未だ続く中、その返済に苦慮したオーナーが物件を売りに出すけれども売れないため、同時に貸出しをして少しでもキャッシュ収入を得ようとするため。
【新築物件の引き渡し】
コロナ中に停滞していた建設が完工し、引き渡しを受けたオーナーが転売できずに貸出しをするケースが多いため。
平均賃料を見ますと、バチェラー(ワンルームタイプ)は1971ドル、1BRが2452ドル、2BRは3139ドル、3BRが3929ドルと、すべての間取りにおいて前年同期比で約2~7%程度のダウンとなりました。
これは2023年に平均賃料が上がった時点を基準にして、募集物件が増えたことからやや落ち着きを見せた結果であり、前年同期比で下がったように見えますが、平均賃料としてはまだ高止まりの状況と言えるかと思います。
また成約件数は全ての間取りにおいて前年同期比約23%~56%アップと賃貸ニーズの高さを物語っています(図3)。
一方、売買マーケットにおいて2024年9月のレポートによれば、平均不動産価格は110万7291ドルと昨年2023年9月に比べると1%ダウンでした。
また、9月の新たな売り出し物件数は1万8089件と前年同月比10.5%アップ、現在売り出し中の物件合計数は2万5612件と前年同月比35.5%アップで、売り出し物件の増加が賃貸にも反映する結果となっています。これに対して、実際に売れた成約件数は4996件と前年同月比8.5%アップとなりました(図4)。
2024年前半の不動産平均価格は110万ドル前後をいったりきたりしながら、6か月のうち4か月は110万ドル台をキープ、8月は110万ドルには満たなかったものの、9月には110万ドル台に戻しました。
2024年の前半の平均不動産価格は112万216ドルに対して、2023年年間平均不動産価格は112万6260ドルと僅差になっていますので、今後金利の切り下げが期待される中、10月~12月の不動産価格が昨年と比べてどうなるのか気になるところです(図5)。
9月のマーケットデータによれば、戸建(Detached)の成約件数は2354件と前年同月比に比べて10・5%アップとなりましたが、平均不動産価格は142万3056ドルと前年同月比1.1%ダウンという結果になりました。
コンドミニアム(Condo Apt)の成約件数は1312件と前年同月比に比べて0.8%アップとなりましたが、平均不動産価格は68万2543ドルと前年同月比3.6%ダウンと、戸建もコンドミニアムも成約件数は増えた一方で平均価格は下がった結果になりました。
これは値段を下げてでも売ってしまいたいと思うオーナーが昨年より増えたことを示しています(図6)。
現在冷え込んでいる売買マーケットにおいて売買、賃貸ともに買い手市場と言えますが、今後モルゲージレート(住宅ローン金利)が徐々に切り下げられていくことが予想される中、これまで物件が買えなかった人が増えることによって売買マーケットが活発化することが期待されています。
売買マーケットの活発化に伴い、賃貸マーケットも影響を受けて需給関係に変化が生じれば再度マーケットが売り手市場に転向し賃料アップにつながること可能性もあります。
これからのクリスマスシーズンには売買、賃貸ともにマーケットがどのように変化していくのか、住宅ローンの金利の動向を受けて今後1年間のマーケットはどうなっていくのか、引き続き注目されるところです。
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