トロントで日本人初となる動画メディアを起業した映像クリエイター 吉田 貴臣さん インタビュー
2015年にトロントに移住後、トロントで日本人初となる動画メディアを起業した吉田貴臣さん。TORONTO.TOKYOは、日本文化をカナダの人に届けるというコンセプトで立ち上げられ、彼の映像は今や多くのカナダ人、日本人に広まってきている。そんな吉田さんに映像の世界の魅力や自身の経験、今後の展望についてお話を伺った。
–映像の世界へ入ったきっかけを教えてください。
もともとミュージックビデオなどが好きで、日本で行なっていたバンドのビデオ編集をきっかけに映像制作にとても興味を持ちました。その後日本で映像関係の学校へ進学、学生時代はひたすら映像制作に励みつつ、空間演出やライブ演出、プロジェクションマッピングなどの企画にも携わり、動画撮影や編集の経験とスキルを磨きました。その頃から将来は映像制作に携わる仕事をしようと決めていました。
–日本の専門学校卒業後、なぜトロント行きを決めたのでしょうか?
卒業後、学生時代に磨いてきたスキルや経験を発揮できる機会はほとんど見つけることができず、そこで一度日本を離れてみようと思いました。というのも、もともと“普通と違う生き方”が認められやすいと感じる海外への憧れがあり、トロントはマルチカルチャー都市ですし、さらに映像業界にとってカナダ内ではバンクーバーと並んで注目を集める有名な場所で、たくさんの可能性を持っていたのも決め手になりました。
–実際トロントに来て、何か感じることはありましたか?
海外で映像クリエイターとして働くのは決して簡単なことではなく、当初はカナダで日本の仕事ばかりしている自分に悶々としていました。同時に0から自分で動画を制作していきたいと強く思い、その後色々な人の助けを借りて、トロントでも映像制作の仕事をいただくようになりました。例えば、日系文化会館主催のイベントや、トロントならではの多国籍文化を主としたイベントの動画撮影など、自ら企画して会場に行き撮影・編集し、完成品をたくさんの人が観て喜ぶ姿や、主催者側のお礼が大変嬉しく、その時自分の作った動画が人の心に影響を与えられていると強く実感しました。
またTORONTO.TOKYOをカナダにいる日本人に広めていくことは、思ったよりも大変で理想と現実の違いに何度も打ち砕かれそうになりましたが、受け身ではなく、自ら率先してできる今の仕事はとてもスリリングで緊張感があり、正解がない世界で、どうしたらカナダの人々に見てもらえるかということを考えながら動画制作に没頭でき、とても楽しいです。
–何かを世の中に伝える手段は様々にありますが、中でも映像という手段についてどう思われますか?
映像の伝える力はメディアの中でもとても大きいものだと考えています。何と言っても映像には音や画があり言葉が通じなくても表情で状況や感情を判断することが可能です。さらに映像には時間軸があり、時間軸があるということはその中にストーリーがあるため、映像から一度に得られる情報量はメディアの中で最大、かつ何かのメッセージを伝える手段として映像は最適だと思っています。
–TORONTO.TOKYOではどのような動画を視聴することができますか?
トロントにある日本食レストランやイベントを紹介する動画のほか、STORIESという企画では世界をまたにかけて活躍する日本人を紹介しており、海外で生きていくことの魅力や世界にはいろんな生き方をしている人がいるんだということを視聴者に伝えたいという思いを込めています。今までに取り上げた方々の中にはトロントのアイスホッケーチームで活躍中の鈴木世奈選手や、世界中でツアーをしながら阿波踊りの魅力を発信し続けているグループ寶船のパフォーマー兼プロデューサーの米澤渉さんなどがいます。
–撮影・編集時のこだわりを教えてください。
今はスマホのアプリなどを使って誰にでも動画の撮影・編集ができ、プロとの境界線が分かりづらい時代になったため、その分私にしかできないような動画制作を目指しています。まず基本的に動画の撮影機材はスマホとは断然画質や音質が異なるためより綺麗で鮮明な映像を作れますし、アングルやカット、切り替えなど自身のテクニックで視聴者を飽きさせない動画作りをしています。また今の流行は短い動画であるため、TORONTO.TOKYOでも1分、2分程度の動画がほとんどです。インターネット上では最初の5秒から10秒でどれだけ視聴者の興味を引けるかが一番の勝負であるため、私は最初の10秒に最もこだわり力を注いでいます。
–今後の展望を教えてください。
TORONTO.TOKYOの動画を通して日本人がカナダなどの海外でビジネスをしたいと思えるようなメディアを作ることが今後の展望です。そして、これからは日本人だからこそ分かる日本文化の良さなどをカナダの人々に向けてさらに紹介し、“TORONTO.TOKYOを視聴すれば日本のこと全てを知ることができる”というメディアを作っていきたいです。
同時に、カナダの文化や価値観、多様性などを日本人に届けることも続けていきます。人生の価値や幸せの形は一つではないことを日本に知らせ、私が作る動画が、日本にいた頃の私のように狭い価値観の中で窮屈な思いをしながら生きる若者の助けになればと思います。
–海外で起業したいと思っている日本の若者にアドバイスをお願いします。
海外での起業は難しいことも苦労することも日本に比べ倍にあることは事実です。しかしその分やりがいに満ちており、海外で起業したいという信念があるならば是非挑戦してほしいと思いますね。まずは自分の活動や目指すものを周りに発信することから始めてみてください。
吉田貴臣
映像学校卒業後、23歳でトロントに移住し、独立。日本やカナダの企業から依頼を受け年間数十本の映像を手がける中、カナダに住む人々に日本文化の情報を伝えるメディアが存在しない現状に危機感を覚え、JAPAN in CANADAを発信する動画メディア「TORONTO.TOKYO」を設立。手がけた作品らは高い評価を得ている。
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HP : toronto.tokyo