今月のネタ「クロダイ(Boston Porgy)」|トロントの魚屋さんTaro’s Fishで編集長のちょっと立ち話
編集者たるもの街に出かけ新しいお店をチェックしたりする日々だが、パンデミックが明けた最近のトロントは魚屋さんのオープンが増えている印象。昨今の魚屋オープンブームの火付け役になったのは間違いなくトロント25年の歴史を誇るTaro’s Fishのコロナ禍での繁盛ぶりの影響が強いだろう。パンデミックが去っても引き続き人気の同店だが、今回取材した「クロダイ」の取材を通して、あらためて他店との圧倒的な違いと底力のような強さを感じるのであった。
日本ではチヌとも呼ばれる釣り人に人気のクロダイ
磯釣りで人気のクロダイは、警戒心が強く釣ることが難しいと知られ、一度釣り上げることができると病みつきになってしまう人も多いという。
スズキ目タイ科で日本では「チヌ」とも呼ばれ、瀬戸内海などでは盛んに食べられるそう。漁師料理として知られるクロダイを丸ごと1匹使った炊き込みごはんはご当地グルメとしても有名だ。
クロダイは内湾に生息し、生息域やエサによって磯臭さや泥臭いものもいるため敬遠されがちだというが、地元産にこだわってその時一番良いものを仕入れようと心がけている太郎さん曰く、「冬は脂がのっていて美味しいし、産卵期の春を過ぎた夏も旬な魚として知られていて、真鯛のような味で美味しい。何よりも高価な魚じゃないのに上品な味わいを持っているから是非多くの人に食べてもらいたいね」と教えてくれた。
安くて美味しいからオススメ!どんな料理にも合う
「真鯛のような味わいを楽しみたいなら刺身や寿司もおすすめだし、淡白な味が特徴なので、どんな味付けにも合う。塩焼きや煮付け、アクアパッツァなど和食から洋食までバラエティー豊かな料理方法で楽しめるのが嬉しいよね。値段も安いし庶民の味方って感じで大好きな魚なんだよ」
レシピを調べてみると、塩焼きや煮つけはもちろん、土鍋ご飯や炙り茶漬けなどの和レシピ、カルパッチョやポアレ、ムニエル、アクアパッツア、香草焼きなどのイタリアンやフレンチレシピなど幅広く紹介されているので、ぜひ読者の皆さんもご家庭で試してみてはいかがでしょう!?
料理人としてのキャリアが今を支える
トロントで魚屋を営んで25年の太郎さんだが、和食料理人としては30年以上のキャリアを持つ。「クロダイは長い料理人人生の中でもよく触ってきた魚。懐石料理のお店で修行させてもらった時もおせちなどで取り扱ったのは懐かしい記憶だし、むかしワイワイワイドという日系向けのテレビ番組でクッキングコーナーを担当して出演した時にも取り上げたことがあった思い出深い魚なんだよね」と長年書き溜めてきたレシピノートを開きながら語る太郎さん。料理人として修行と経験を積んできたストーリーがノートの節々から感じ取れる。
真似できそうで真似できない強さがそこにはある
冒頭の話に戻ろう。例えば今回取り上げたクロダイが良い例だ。クロダイは雑食で、鮮度が落ちやすいことから敬遠されることもあるという。でもTaro’s Fishは、このクロダイのように実は美味しくて安い魚を旬に合わせて取り扱っており、その場で刺身や寿司にもしてくれる。料理人でもある太郎さん自らが仕込み場で魚と向き合い、高価な食材だけでなく誰もが気軽に食べれるような魚を常に探して提供し続けているなんとも「魚屋らしい魚屋」なのだ。
あと、もう一つ。取材をしていると二人三脚でお店を守り続けてきた奥様の智亜紀さんが寄ってきた。太郎さんの付けた値段が少し高いような気がするのだという。もちろん色々仕込んだ上での値段だろうが、智亜紀さんの主婦としての目線や常に現場に出てお客さんと接してきた感覚が最終的には値段に反映されているのだ。夫婦で作り上げたお店は底力が違うなと思った瞬間だ。そして女性の強さをあらためて感じながらお店を静かに後にするであった。
季節の鮮魚や美味しいお刺身、お寿司、お惣菜が満載
Taro’s Fish
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