夏は涼しく|お茶コラム



先月のコラムで利休七則についてふれましたが、その中に「夏は涼しく、冬は暖かに」とありました。茶道の世界では季節感を感じるおもてなしの大切さ、お客様への配慮が込められた利休七則のひとつです。
お客様に「涼しさ」を感じていただく工夫のひとつとして、お道具に趣向をこらす方法があります。形が広く浅い形状の平茶碗という抹茶茶碗がこの時期よく使われます。平茶碗は、別名「夏茶碗」ともよばれており、涼しげな演出だけでなく、お皿のように平べったい形状をしているため、抹茶の表面積が広く、お茶が冷めやすい構造となっているので暑い夏にぴったりといえるでしょう。

葛餅@musoshin_toronto
写真の涼やかな平茶碗は、吹きガラス製です。カナダで活躍しているHONAMI STUDIOの本阿弥優さんの作品です。
葛餅や錦玉羹などもこの時期にお勧めの涼やかな和菓子です。
写真の葛餅は人気のラーメン店、無双心トロント店の「葛餅」です。上品で滑らかな抹茶とほうじ茶味のこし餡がやみつきになる美味しさです。シェフの日替わり(気まぐれ)メニュー的な存在として、この時期ちょこちょこお店に登場しますので、運よく出くわした際にはお見逃しなく。
さて、茶道のお点前に関しても、「涼しさ」を感じる工夫として、「葉蓋」を使う点前があります。お点前につかう水指(みずさし)という道具の蓋は、通常陶器や漆なのですが、植物の葉(梶(かじ)の葉が最も代表的)を蓋に見たてて使います。大きい緑の葉っぱの蓋が茶室にあるだけで見た目にも涼しく、さわやかな気持ちになります。
他には先ほど説明した「平茶碗」で点てる「洗い茶巾」というお点前があります。水に浸した茶巾をいれて、お点前の途中で茶巾をとりだし、水をしぼってたたみなおす作業があります。水のしずくの音で清涼感を演出します。
また、茶席で抹茶をすくう道具、茶杓(ちゃしゃく)には、「銘」がつけられるのですが、「銘」は、茶席のテーマ、季節感を表現する重要な役割を担います。この季節、「清流」、「天の川」、「風鈴」、「夕涼(ゆうすずみ)」「雲の峰」など、涼やかな風が通り過ぎるような「銘」の数々を耳にします。
冷房などがない時代は、このように視覚や聴覚を工夫して、厚い夏を乗り越えていたのですね。
利休さんがいう、「夏は涼しく」。現代の私たちも、身近にあるアイテムで工夫しながら涼やかに夏を過ごしたいものですね。

吉田桃代
Tea&Herbal Association Canada公認ティーソムリエ日本茶アドバイザー
日本茶のオンラインストア「Momo Tea」とお茶団体「Nihoncha Canada」を運営。Momo Teaは2015年からトロントのお茶の祭典、Tea Festivalや、日系文化会館の季節のイベントを中心に出店。2023から日本茶の良さをカナダの人に広めたいという想いを込めて、日本茶と日本の文化に特化した「日本茶祭り」を主催。毎年11月第一日曜開催予定。




