利他の心にあふれる民族である日本人 | 東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い【第83回】
日本は2019年5月1日より、新元号「令和」になりました。いよいよ新しい時代がはじまります。そして、日本はこの改元もあり、今年はゴールデンウィークがなんと10連休でした。カナダにも旅行した日本人がたくさんいたと思います。
平成の時代が終わり、次の時代を迎え、平成の出来事がどんどん過去のものになっていくのが少し怖いです。東日本大震災、阪神大震災、西日本豪雨、様々な災害があった平成。被災地の被災者は口をそろえてこう言います。
「忘れてほしくない」
この言葉には様々な意味があると私は思います。いつまでも被災地に心を寄せてほしいという願い。この大きな災害を忘れないことで、自らの備えを万全にして、いつ起こるかわからない災害に対応できるようにしてほしい。様々な思いのこもった言葉です。
東日本大震災の後もたくさんの自然災害が日本ではありました。そのたびに、東日本大震災の被災地は、自分たちの時の教訓を生かして生き延びてほしい、と心から願っているのです。そして、同じ痛みを共有する気持ちで、被災地の復興をまだ復興しきれていない被災地から願うのです。
そんな利他の心にあふれる民族である日本人に生まれたことを私はいつも誇りに思っています。日本人はとても優しいです。東日本大震災の時も助け合い、自分も困難なのに、他の人が困っていたら助けられる。自分もおなかがすいているのに、他の人がおなかがすいていたら、自分のおにぎりを分け与えられる。他の国ではなかなか見られない光景だと思います。
そんな光景を見てきた被災地の子供たちは大人になっても必ずその優しさを理解して、他の人を幸せにしようと思うでしょう。日本人の中でも東北の人は特に優しさにあふれていると思います。
私の友人でも消防士がいました。彼は震災の時に水門を閉めに津波の来る海に向かって走りました。誰かが水門を閉めないと津波で大変な被害が全体に及ぶからです。しかし、その津波は想定を超えて、水門を破壊して町を飲み込みました。彼の努力は無駄だったのでしょうか?私は無駄ではないと思っています。みんなのために動いて命を失った彼を私は今でも誇りに思っています。優しい日本人。これこそが日本の最大の誇りだと思います。
オンタリオ取扱い代理店:
Ozawa Canada Inc
現在トロントで楽しめる南部美人のお酒は、「南部美人純米吟醸」とJALのファーストクラスで機内酒としても採用されている、「南部美人純米大吟醸」の二種。数多くの日本食レストランで賞味することが可能。
南部美人 / http://www.nanbubijin.co.jp
本文:南部美人 五代目蔵元 東京農業大学客員教授
久慈 浩介
岩手県の銘酒として知られる「南部美人」は、カナダ・トロントでも味わうことができる日本を代表する酒蔵で、2011年3月11日の東日本大震災で被災した蔵のひとつだ。5代目である久慈さんは震災直後から日本酒を通じて地域復興の様々な取り組みを行ってきた。本連載では久慈さんが体験したことや復興の取り組みなどを寄稿してもらう。