復興の象徴とラグビーワールドカップ|東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い【第88回】
「四年に一度じゃない、一生に一度だ」をスローガンに掲げるラグビーワールドカップ2019日本大会が開催されました。
日本代表も初戦はロシアに快勝。日本はラグビーで大いに盛り上がりを見せました。そのラグビーワールドカップは東京はもちろんですが、全国各地で予選が行われ、その中に、東日本大震災で大きな津波被害を受けた岩手県釜石市もありました。釜石はラグビーの聖地。新日鉄釜石の伝説の地。釜石はまさにラグビーのまちなのです。その釜石市がラグビーワールドカップの試合会場誘致に動いて、東北では唯一の予選会場となりました。
ここまで復興の象徴として釜石はラグビーワールドカップに向けて全力で取り組んできました。いよいよ9月25日、運命の試合です。新築した「釜石鵜住居復興スタジアム」でのワールドカップ初戦、フィジー対ウルグアイ戦が開催されました。フィジーは世界ランキング10位、ウルグアイは19位。フィジーの方が格上です。前評判もフィジー有利、さらにウルグアイはサッカーはとても強く、サッカー人口も多いのですが、ラグビー人口はなんと6千人だそうで、ラグビー熱もフィジーの方が格上だと思います。
そんな中でウルグアイ代表は見事フィジーを30対27で下し、劇的な勝利を収めました。今大会1番の番狂わせと言われた試合になりました。
ウルグアイ代表は岩手県北上市で合宿を行い、ウルグアイチームの情報や北上市との交流などは岩手のマスコミが大きく事前に伝えており、岩手県の人々はウルグアイに愛着を持っていました。そんな中での番狂わせの勝利に本当にうれしく思いました。
そしてスタジアムでは東日本大震災の津波被害で亡くなった方々への黙とうが冒頭捧げられ、試合開始前には復興のメッセージが発信されました。その中でも、キックオフ40分前、鵜住居復興スタジアムの西側スタンドを埋めた釜石市内の全ての小中学校14校約2200人が突然立ち上がりアカペラで歌を歌いだしました。復興支援のお礼を伝えたくて、サプライズで練習してきた市内全児童から詞を募って集約した合唱曲「ありがとうの手紙 #Thank You from KAMAISHI」を歌い上げました。
被災地の子供たちがこれだけの感謝の意をラグビーワールドカップを通して世界に発信できたことはまさに釜石の奇跡であり、心から嬉しく思い、涙があふれました。被災地に明るい光を差し込んだラグビーワールドカップ。心からありがとう。
オンタリオ取扱い代理店:
Ozawa Canada Inc
現在トロントで楽しめる南部美人のお酒は、「南部美人純米吟醸」とJALのファーストクラスで機内酒としても採用されている、「南部美人純米大吟醸」の二種。数多くの日本食レストランで賞味することが可能。
南部美人 / http://www.nanbubijin.co.jp
本文:南部美人 五代目蔵元 東京農業大学客員教授
久慈 浩介
岩手県の銘酒として知られる「南部美人」は、カナダ・トロントでも味わうことができる日本を代表する酒蔵で、2011年3月11日の東日本大震災で被災した蔵のひとつだ。5代目である久慈さんは震災直後から日本酒を通じて地域復興の様々な取り組みを行ってきた。本連載では久慈さんが体験したことや復興の取り組みなどを寄稿してもらう。