People.24 vol.9「トロントに届いた “たくさんの”英語」Hananoさん|カナダで挑戦する若者

Toronto Fringe FestivalでPatrons’ Picks(観客選出賞)を見事受賞したのが、私もチームの一員として参加した舞台『The Improper Identity』だ。
女優・鈴木みほ氏の実体験を元に作られた本作。日本人移民アイが英語のアクセントについて悩む中、アクセントを消し去る発明品を開発するドクと出会う…。紙芝居、書道、着付け、歌やダンス、そしてたくさんのジョークがふんだんに散りばめられた色彩豊かなコメディだが、発明品を巡るドタバタの末、終盤に放たれる歌詞が深く胸を突く。「誰も肌の色を変えろだなんて言えない。だったらアクセントは?」
この問いは、私の渡航当初の記憶を呼び起こした。店員さんへの質問でさえ、いちいちAIで確認するほど「間違えた英語」を話すことを恐れていた。しかしこの移民国家トロントで生活していくうちに気づいた。そもそも第一言語として英語を話す人ばかりではない。そしてみんなネイティブではない英語に慣れている。トロントにもNYにも、スカボローですらアクセントがある。英語を正しく学ぶ姿勢はもちろん大切だ。しかしそれ以上に大切なのはお互いの違いを認め、歩み寄りわかろうとしあうことではないだろうか。
私は毎週、言語・文化交換をするイベントを開催している。その中で正直“理解できない”価値観の違いに直面することはよくある。その時、お互いを知ることを面白がり、歩み寄ろうとする人たちが仲良くなっていく光景を何度もみてきた。
栄誉あるPatrons’ Picksの受賞は異なるバックグラウンドを持つ観客たちが、作中のメッセージに共鳴し、声をあげて笑い、そして涙を流し、心から共鳴してくれた証だ。完璧なアクセントではなくても、私たちの声は確かにこの多様性の街に届いたのだ。伝えることを諦めずに発信し続け、皆が分かり合える少しでも豊かで前向きな世界を目指していきたい。












