継承日本語学校に支援が必要!?|白ふくろうの「カナダの社会・経済」ネタ探し【第34回】

 8月初め、連日危険な温度となった日本へ出張をしました。まるで銭湯で脱衣場から浴室に入った瞬間のように身体中が高温湿気に包まれる感覚はいいものではありませんね。

 その出張の目的は、在外教育施設事務長会議というもので、世界中の認定日本人学校、補習授業校の事務長が2年毎に集まり、運営上の問題点の情報交換を行うものです。

 情報交換部会のほかに講話が4つほど設定され、外務省、文部科学省の方からお話を伺う機会もあり、今回の講話の中で軽く触れられていたのが、6月の国会で成立した日本語教育推進法案。

 超党派の日本語教育推進議員連盟による議員立法で、約2年半の検討を重ねて法案となりました。日本で働く外国人労働者とその家族、子供たちが増え、特に子供たちは日本の学校に通うことができるものの、日本語教育が十分になされていない現実があるそうです。日本の学校には、国語を教えられる教師はいても、日本語を教えられる教師は少なく、対応が不十分と指摘されています。

 こうした背景から、日本での外国人向け日本語教育が中心となりますが、法案では、日本国外に在住する日本人への支援も謳われています。補習校など認定在外教育施設では、数年後に日本に戻る長期滞在者で義務教育学齢のお子さんに対して、支援がされています。しかし、今回の日本語教育推進法案には、世界各地で継承日本語を教えている日本語教師の方々の陳情努力の結果、長期滞在者に加え、日本にルーツを持つお子さんもその対象となりました。

 トロントにも、トロント日本語学校、日修学院、日加学園、国語教室などが継承日本語学校として努力をされており、その他にも保護者ベースで日本語を教えているグループが多数存在しています。そうした継承日本語教育機関・グループもこの法案の対象となったのは画期的なことだと思います。

しかし、実際に支援を受けられるかとなると話が別。

 この基本法案では、“推進しましょう”と謳うだけで、具体的な支援策は、各行政機関に委ねられています。

 外国人労働者が多い市町村では、当事者問題として対策支援が行われることが期待できますが、カナダなど日本以外にいる日本にルーツを持つ子供たちへの支援は、誰が行うのか、明確に定義付けされていません。

 今回の事務長会議の翌日、大学の先生方による継承日本語研究会があり、そちらにも出席してきましたが、やはりこの点が指摘されていました。

 海外の日本人に対しては外務省、教育面では文部科学省が担当となり、その予算面、実行面では財務省・会計検査院などが関係してきます。

 認定日本人学校・認定補習授業校は在外教育施設と言われ、ほとんどが現地教育法人もしくは非営利法人となっており、義務教育学齢の児童生徒数をベースに資金支援を受けることができ、その管轄は外務省・領事館となっています。また、その児童生徒数に応じてなされる教員派遣は文部科学省の管轄となっています。トロント補習授業校では、現在2名のシニア派遣教員に来ていただいています。

 認定を受けていない継承日本語学校などは、在外日本語教育機関と言われ、明確な管轄省庁が決まっていないようです。文部科学省においては、“在外日本語教育機関については承知していない”という立場をとっています。外務省領事部の各地の大使館、領事館では、管轄の日系コミュニティである程度の規模と歴史を持つ学校であれば把握しているようですが、それも完全ではないようです。

 しかし、近年国際結婚家庭の増加に伴い、継承日本語学校に入れない、近隣に継承日本語学校がないなどの理由で継承日本語教育を受けられないお子さんが増えているようです。そこで、保護者が中心となり、教会や学校にスペースを借り、日本語を教えているグループが各地に生まれているようですが、それらの把握まではできていないのが現状のようです。

 今回成立した日本語教育推進法案で外国にいる日本にルーツを持つお子さんへの支援が含まれたことを機に、まずは在外日本語教育機関を把握し、その実情を日本に伝えることが必要です。

 ただ、在外日本語教育機関が日本政府から資金支援などを受けるにはかなり高いハードルがあると覚悟する必要があります。

 現在行われている日本人学校・補習授業校など在外教育施設への支援についても、年々その運用が厳格化されており、法人・グループ組織の安定した運営、不正のない会計処理、内部統制と責任の明確化、書類管理の徹底など、一般企業と同じレベルの管理体制が求められています。

 日本にルーツを持つお子さんは、グローバル人材として期待されています。その育成のためにも継承日本語教育はますます重要になっていくと思います。是非、今回成立した日本語教育推進法案をベースにして、在外日本語教育機関への支援も行って欲しいと思いますが、それを希望する在外日本語教育機関側にも組織運営の強化を期待したいと思います。

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白ふくろう

1992年音響映像メーカー駐在員として渡加。8年の駐在の後、日系物流会社に転職、休眠会社を実業会社へ再生再建。2007年より日系企業団体事務局勤務、海外子女教育・日本語教育にも関心が高い。2009年より、ほぼ毎日トロントやカナダのニュースをブログ(カナダはいいぞ~。トロントはもっといいぞ~)で配信している。