《数字で見る》カナダのジェンダー平等・ 女性のエンパワーメント|特集「SDGs・女性とジェンダー平等 in Canada」
毎回さまざまな事柄を「数字で見る」シリーズ。今回は、カナダにおける女性の社会的平等やエンパワーメントを中心に、数字から見えてくる男女の差、世界・社会での女性の地位、立ち位置、そして日本との違いなどについてお届けする。
カナダ統計局によると、男性に比べて女性の収入は89%となっている。これは、女性のフルタイム雇用率75.6%に比べ、男性のフルタイム雇用率が87%となっており、男性の雇用率の方が高くなっているということ、そしてパートタイム雇用率でいえば男性の13%、女性は24.4%がパートタイムで働いているということが背景にある。
また、管理職の割合も女性に比べて男性が多くなっており、男性の管理職は女性に比べて56%も多いことが収入差の要因となっている。なお、日本では男性の収入に比べて女性の収入は74%となっている。両国で女性の収入が低くなっている背景には、男性に比べて女性が家事や育児、介護をしている、ということが挙げられている。
最新の調査によると、15歳以上の人口の46・4%が結婚している。30年前と比較すると15歳以上の60・9%が結婚していたことから、晩婚化が進んでいることが分かる。
その要因としては、結婚せずにいっしょに住んでいる内縁の関係が増えていることや、高学歴化があげられる。そして20後半で結婚したことが無い男性の割合は32%から78・8%へと増加、女性も20%から67・4%と、30年前に比べて大きく増加している。男性の割合が多いことについては、男性の結婚年齢が女性よりも上であること、そして男性は少し若い女性と結婚する傾向があることが理由にあるようだ。
カナダの大学生のほぼ半数(47%)が性別や性的思考に基づく差別を経験、もしくは目撃したということが2019年の調査で分かっている。また、8人に1人の男性(13%)が性差別を経験したということに対して、女性は5人に1人の割合(20%)で経験している。
そして、レズビアンの女子学生の31%、バイセクシャルの女子学生の34%、そして他に分類されていない性的指向を持っている女性学生の34%が性的差別を経験したとされている。これは異性愛者の学生の2倍(15%)となっていることがわかっており、性差別を受けた割合として女子学生が高いということ、そしてセクシャルマイノリティとされている女子学生の割合はさらに高くなっていることが分かる。
25歳~64歳の人口の割合を調査したところ、64.7%の女性が大学、もしくは大学院を卒業していることがわかっており、2006年の調査結果60.8%と比較して増えていることが分かっている。また、25歳から44歳の若い人口に絞った場合には、女性の74.2%が大学もしくは大学院を卒業していることが分かっており、男性の割合65.5%と比べると大きく差があることが分かる。
これらは、女性の学業成績が男性に比べて高いということ、女性の学習習慣が確立されていることが理由としてあげられる。なお、日本では男性の大学進学率は55.6%、女性の大学進学率は48.2%だそうだ。
2019年の時点で、カナダでは15歳以上の働く女性の割合は64.7%、男性が73.4%となっている。2000年には女性が64.1%、男性が77.3%だった。19年間で働く女性の割合は微増、男性は減っており、男女の差が徐々になくなってきている。
日本では、2021年時点で女性が52%、男性が69%となっており、2012年には働く女性の割合が46.2%、男性が67.5%だったので、働く女性の割合は9年間で大きく増えており、日本でも男女の差が埋まってきていることがわかる。
2018年時点で、カナダには女性自営業者が約110万人おり、全自営業者の37%を占めた。この割合は現在も増え続けているが、男性自営業者と比較すると女性自営業者は年間約7万ドル収入が少ないことが分かっており、割合にすると58%少ない収入となっている。
その理由としては、女性投資家が全体の14%と少ないということ、女性が女性向けのビジネスを展開していくにあたって、男性投資家の賛同を得られにくいということから、女性が起業する時に資金不足に陥りやすいということが原因にある。
2019年の調査では、カナダで美容用品に使われた額は一家庭あたり平均で年251ドルとされる。
また、日本では一人当たりの平均が年7万6,872円となっていることから、日本ではより多くの美容代が使われていることが分かる。その理由としては日本人はカナダ人に比べるとスキンケアを重視していること、そして日本製の化粧品は品質、安全性が保障されているということ、手ごろな価格で販売されていることから、さまざまな製品を手に取りやすいことが理由としてあげられる。
1921年、カナダで最初に1人の女性議員が誕生した。日本はカナダの25年後、 1946年に初めて39人の女性が議員として選ばれた。その後カナダの女性議員数は 徐々に増え、2021年には最も高い割合となっている。
ちなみに、カナダの上院議員では49.5%が女性議員となっており、ほぼ半数を占めている。 2021年時点でのカナダの下院議員おける女性議員数の割合は29.6%で世界ランキング52位(190か国中)。日本の女性議員数の割合は9.9%で、世界ランキング166位。日本 は、G20に属する国では最下位となっている。
カナダのシングルマザーの割合は過半数を越えており、一人親世帯を対象にした調査では、シングルマザーの割合は67.2%となった。一方日本では一人親世帯の内訳としてシングルマザーが86.8%となっており、シングルマザーの家庭が圧倒的に多くなっている。
日本と比べて、カナダでシングルマザーが少ない理由としては法律が変わったこと、そして世間の考え方が変わってきたことによって親権者が誰になるかが性別によって判断されない、というところから男性が親権を取りやすくなっているということがあげられる。そして、性別関係なく誰もが育児に参加しやすい社会へとなりつつあるということも、理由の一つにある。
2018年の調査によると、15歳以上のカナダ人4人に1人が高齢、もしくはなんらかの障害がある人への介護に携わっており、介護者の54%は女性となっている。介護に携わっている人の40%が1時間から3時間、そして21%が週に20時間以上の時間を介護に費やしている。
週に1時間から3時間を介護に費やしている男女の割合としては男性の方が高くなっており、男性51%に対して女性49%となっている。しかし週に20時間以上の時間を介護に費やしている女性は全体の64%、男性が36%を占めており、全体でみると男性が介護に費やす時間は週に1.1時間、女性は1.3時間と、女性の方が多くなっている。
週に20時間以上を介護に費やすことで、家族との時間や自分の時間を十分にとれていない、社会性が失われている、と感じる人が多い(86%)。なお、日本の介護者の割合は女性が65%、男性が35%となっている。
2019年の調査によると日本人男性の平均寿命は81.1歳と、カナダ人男性の80.9歳に比べてわずかに高いのに対して、日本人女性の平均寿命は87.5歳となっており、カナダ人女性の平均寿命84.2歳を大きく上回っている。
日本人の平均余命が長い理由としては、肥満率の低さ、赤身肉の消費量の少なさ、また魚や大豆、お茶などの植物性の食品の消費量の多さに起因している。少量をゆっくり食べること、満腹までは食べないことも腸環境を整えること、そして心臓病や脳卒中などの疾患にかかる確率をさげている。肥満率を比べてみても、カナダ人女性の26.2%が肥満(BMI30以上)であることに対して、日本人女性は3.7%と低い。
2018年の時点で、カナダの女性は1日あたり2.8時間家事に費やしている。一方で男性は1日あたり平均1.9時間家事に費やしていることがわかっており、女性が家事に費やす時間は男性に比べてほぼ1時間多くなっていることが分かる。
しかし、過去30年間を見ると、男性の家事時間は一日あたり24分増加している。なお、2015年の時点では女性は男性より1.5時間多く家事をしていたため、男女間における家事に費やす時間の差は三年間で大幅に小さくなっていることが分かる。
女性が家事に費やす時間が長い理由としては、女性は料理、掃除、洗濯、買い物など日常的な家事をしている事に対して、男性はゴミ出し、家や車の修理、庭の手入れなど、頻繁には行われにくい家事をしている、ということが背景にあるようだ。親世代や成人している家族のケアをしている割合についても、女性の割合が男性の3倍となっている。
ジェンダーギャップの均等性は、経済や社会 が繁栄するかどうかに大きく影響するとされている。カナダ は、ジェンダーギャップ世界ランキング(156か国が参加)にお いて2019年は2017年以来初めて下がり、16位から19位、そして2021年には24位となった。
カナダのスコアが低い原因としては、管 理職にある女性の地位が低く、賃金が停滞 していること、そして労働力への参加と女 性収入が低いことが理由にあるとされて いる。全体的なランキングは下がったもの の、教育では96.1%、ヘルスケアで95.7% と、ほぼ同等を占めている。
一方、日本は120位となっており、G7に 属する国の中で最下位となっている。世界
平均で見た時にはジェンダーギャップを埋めるのにかかる期 間は99.5年と予測されているが、日本はコロナのパンデミッ クで格差が広がったこともあり、2019年の調査より36年延び た136年と予測されている。
SNSやテレビなどの影響により、理想の身体のレベルが高くなっており、近年無理なダイエット、体重管理をしようとする女性も増えている。しかし、10歳~15歳を対象にした調査では、56%が自分の外見に満足しているか、かなり満足している事が分かっている。
これは家庭において自分の体に対するイメージ、自信について親から子供に伝える機会が増えたことによると言われており、特にラテンアメリカ、メキシコ、アルゼンチンの国々では特にその割合が大きくなっている。一方、日本、韓国、ロシアでは低い傾向にある。
1981年から2016年までに一人暮らしの人口の割合は男女共に増加した。女性の割合は16.9%から19.1%にあがっており、ここには社会的傾向、女性の社会進出、そして離婚率の増加と、余命が伸びたことが背景にあると言われている。
一人暮らしを始める年齢は男女ともに早くなり、10代後半では女性の一人暮らし率が男性の一人暮らし率を上回っている。20代では男性の一人暮らし率が、女性の一人暮らし率を上回っており、これは女性は年上男性と結婚する、もしくはパートナー関係にある傾向が強いということ、そして35歳以上の男女の独身者を比較したときに女性独身者が母親である場合が多いために、男性の独身率が高くなっていると言われている。