世界がアートで満たされていったなら 第40章
SG50 WWII 70 CA150 ラブ・アンド・ピース
シンガポールで終戦70年目を迎えた。その少し前の8月9日は、シンガポール建国50周年記念日、俗にSG50と呼ばれる。今年3月に亡くなったリー・クアンユー元首相が築いた明るい共産主義と呼ばれる東京23区ほどの国の建国記念パレードは、共産主義国のそれを連想させるものだったが、日本のように戦後70年の節目は大きく取り沙汰されなかったように思う。むしろ中国系のハングリーゴーストフェスティバル(中元節)のはじまりで市内各所の路上に蝋燭やお供え物が置かれていたのが目についた。日本の無条件降伏をもって終結した第二次世界大戦(=WWII)だが、韓国や他のアジアの国では捉えられ方が異なっている。それもそのはず。日本ではその後70年間なかったが、地球上の他の多くの国では第二次大戦後も直接戦争に関わっていたのだ。朝鮮戦争、ベトナム戦争…数え始めたらきりがないほどの争いが世界各国で起こり、今でも続いている。戦後70年という言い方がされる日本は、世界からするととてつもなく平和な国であった事が伺える。
さて、なぜ戦争が起こるのか…という議論は専門家に任せるとして、筆者はメモリアルというものに注目する。なぜ記念式典なのか、なぜ節目の年に行なうのか…いろいろな観点から考えると、根本は、「人間は忘れる生き物だ。」というところのような気がする。
国民の80%が戦後生まれとなった日本では、覚えているかどうかよりも「知らない」人たちばかりなのだ。知らない人たちが核心にたどり着くには、やはり覚えている人たちの言葉に耳を傾ける他にない。しかし、知らない事に第三者から聞いた事からリアリティーを持たせるのは、難しい。そこで、インパクトを残し記憶に留める…それが、メモリアルなのだろう。人は記憶に残す努力をしないと忘れる。誕生日、結婚記念日…などなど、誰でも一度や二度忘れてしまって大事な人に怒られた経験をした事があるのでは?忘れないように指輪やプレセント…それらもメモリアル事業なのだと思う。忘却とは、時にトラウマや辛い事から癒しを与える必要なもの。しかし、癒しが必要でも忘れてはならない、そういった事があるのだ。メモリアル。読んで字のごとし。
来年は、カナダ建国150周年(=CA150)。ファーストネイションズをはじめとする多文化他民族の集まりである国。少しずつではあるが、この国にも大きな変化が訪れようとしているのが感じ取れる。その中で僕たちがやるべき事ってなんなんだろう。ラブアンドピース。
Today’s his WORK
GOLD/ Red Carpet
遠足プロジェクトアジア参加のために制作されたランドセルアート。20メートルほどの長さのレッドカーペットを金色に塗られたランドセルの中に納めたもの。展示会場や巡回先にて見つけたもの、拾ったもの、人々をレッドカーペットの上に乗せることで日常に特別な意味を持たせる。遠足プロジェクトアジアは現在シンガポールにて展覧会、10月後半より12月半ばまでフィリピンを巡回する。asia.fieldtrip.info
武谷大介 Daisuke Takeya
武谷大介は、トロントを拠点に活動するアーティスト。現代社会の妥当性を検証するプロセスを通じて、その隠された二面性を作品として表現。ペインティング、立体作品、インスタレーションなどその作品形態は多様で、国際的に多岐に渡る活動を展開。展覧会に、福島ビエンナーレ2014(’12)、新宿クリエイターズフェスタ2014、六本木アートナイト2013(’12)、Artanabata 織り姫フロジェクト(仙台)、女川アートシーズン(宮城)、くうちゅう美術館(名古屋)、MOCCA(トロント)、国際交流基金トロント日本文化センター、在カナダ日本国大使館、ニュイブロンシュ(トロント、’06、’07)、六本木ヒルズクラブ、アートフォーライフ展(森美術館)、京都アートセンター、ワグナー大学ギャラリー(NY)、SVAギャラリー(NY)、ソウルオークション(韓国)、在日本カナダ大使館内高円宮殿下記念ギャラリー、セゾンアートプログラム(東京)、メディアーツ逗子など多数。今年は、トロント市内クリストファーカッツギャラリーにて個展開催予定
大地プロジェクト共同代表、遠足プロジェクト代表。過去にアートバウンド大使 、日系文化会館内現代美術館理事、にほんごアートコンテスト実行委員長、JAVAリーダーなど。カナダでのレプレゼンテーションは、クリストファーカッツギャラリー(www.cuttsgallery.com)、 著書に「こどもの絵(一莖書房)」。www.daisuketakeya.com