【今年もカナダで「手もみ茶」のデモンストレーションを予定】手揉み茶の匠 茶工房比留間園・比留間嘉章さんに聞く「手もみ茶」の魅力|第一特集
【今年もカナダで「手もみ茶」のデモンストレーションを予定】
手揉み茶の匠 茶工房比留間園・比留間嘉章さんに聞く
「手もみ茶」の魅力
昨年2023年の「日本茶祭り」でも多くの来場者で賑わった「手もみ茶」のデモストレーションを行なった比留間さん。比留間さんは、埼玉県入間市で手もみ茶を手がける匠であり、その技術と情熱は40年以上にわたって受け継がれてきた。手もみ茶の繊細な工程と職人技を駆使して生み出される茶葉は、穏やかな香味と深い味わいが特徴だ。比留間さんは、国内外に手もみ茶の魅力を広める活動に力を入れ、カナダでもその技術と伝統を紹介している。今回のインタビューでは、比留間さんが語る手もみ茶の奥深さと、その継承への思いに迫る。
ー手もみ茶の魅力を教えてください。
何よりも穏やかな香味でしょうか。揉みこむ圧力が強く一定な機械に対し、手は作り手の思うままにそれらをコントロールできることで穏やかな茶に出来ます。人が五感を連続で活かして作ることは、センサーが断続的に感じコンピュータが計算するよりもフィードバックが早く、出来上がりまでの工程全体を詳細にコントロールできます。それらが出てほしい内質を出させ、出てほしくない内質を抑えてくれることにつながります。淹れ方のハードルは決して低くありませんが、上手に淹れることで魅力は何倍にもなります。
ー手もみ茶の技法や製法の工程を教えてください。
手もみ茶の基本は機械と同じです。機械での製茶が手もみ茶の製法を模倣しているので当たり前なのですが…
工程は蒸した茶葉を、
❶葉ぶるい
まずは表面の水分を除去するために、助炭(※1)の上に散った茶葉を両手で拾い上げ交差するように振り上げて落とす。
❷軽回転揉み
表面が乾いたら少しづつ茶葉の中の水分を除去するために、助炭上の茶葉を素早く左右に転がして散らす・集めるを交互に行う。
❸重回転揉み
軽く揉むことで水分が出づらくなってきたら左右に転がす速度を遅くし力を強めていく。
❹玉解き
重回転で水分が出なくなると茶葉は小さな塊になるので軽回転揉みの要領などで解す。
❺助炭清掃
回転揉みで助炭についた茶渋を、助炭にわずかな水を張り浮かせ、タオルで拭き取る。のちに乾燥したところでコンニャク粉を用いた糊を薄く塗ることで滑りをよくする。
❻揉み切り
重回転までにおよそ半分になった水分を更に揉みだすために、助炭上に広げた茶葉を拾いあげ、両手で挟み前後に擦り茶葉を回転させながら揉み落とすことで、乾燥を進める。この工程中から茶葉は収縮を始め擦り合わせながら揉むことで長く細くなっていく。
❼転繰り揉み
揉み切りで揉み落とし空気に触れることで表面が乾きすぎる前に、助炭上に手を置き両手で挟みながら掌中の茶葉を回転させ乾燥を進める。前半は軽めに、そして次第に力を強めて揉んでいく。
❽こくり
転繰り揉みでは手に挟んだ茶葉が溢れながら揉むことで蒸れを防ぐが、いよいよ水分が揉みだせなくなると茶葉が掌中から溢れないようにしっかりと抱え渾身の力で揉み回転させる。茶葉が真っすぐになって艶を帯び、掌中で滑るようになったら揉み工程は終了。
❾乾燥
助炭上にもみ終わった茶番を薄く広げ、低温で長時間(2時間ほど)かけ、生葉で80%ほどあった水分を4%ぐらいまで、ゆっくりと最後の乾燥をする。
※1 助炭とは木枠に和紙を張った茶を揉むための道具であり、熱源を持った火室を備えた焙炉の上に載せて使う。
ー比留間さんは手もみ茶の存在を国内外に広める活動や、技術の継承などの取り組みをされております。その思いやお考えをお聞かせください。
ほんの僅かしかできない手もみ茶には、今のところ商品としてビジネス的価値を求めるのは難しい状況です。しかしながら煎茶製法の端緒として、ほぼ同じ形で機械化され進化してきたことを考えると、その価値は大切にしなければならないものだと強く感じるところです。もちろんビジネスにすることは難しくても極上の製品の素晴らしさは言うまでもなく、国内外問わず認知されるべきものだと考えています。
幸いなことに、手もみ茶づくりに思いを寄せる後継者は多く、頼もしい限りです。それは技術を継承するということより進化させるほどの熱量を感じる者さえいるほどです。しかしながら、これを広く伝える、認知していただけるような取り組みをする者は中々おりません。であるならば、自分に与えられた役目だと感じ、これにあたるしかないと微力ながら活動を続けているところです。
ー11月の日本茶祭りに向けてカナダの読者へメッセージをお願いします。
日本に6名しかいない十段に認定された手もみ茶師2名(自身も含めてでは、おこがましいですが…)が、極上の原葉を使って実演をさせていただきます。少々時間のかかる工程ですが、是非ご覧いただき、手もみ茶の、そして日本茶の素晴らしさを感じていただけたら幸いです。
1977年より茶業に携わる。元々の家業ではなかったが、自身が家に入るタイミングで父親とともに製茶業を始める。以降、これまで48年間にわたり様々な挑戦をしながら茶を作り続ける。〝極茶人〟と称され、全国手もみ茶振興会の会長も務めたほか、茶師の最高栄誉とされる農林水産大臣賞を7度も受賞している他、「茶匠」の資格を持ち、「十段」の段位を得ていて、「茶聖」の称号も授与されている。
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