カナダで現地就職を成し遂げるリアル 水越 章仁さん|特集「カナダワーホリのその先」


 トロントが気に入ったから現地就職をしたい!という声をよく聞くけど、カナダでの就職は経験値が全てというのは周知の事実。実際にワーホリやフリーランスを経験しながらカレッジに進学し、インターンを経てスタートアップ企業で念願の人事の職についた水越さんに現地就職のリアルを語ってもらった。

日本で大学院卒業後、ソフトバンク(株)にて組織人事業務をしていたが、海外で働きたいという思いを強く持ち、来加を決意

ーワーキングホリデーでカナダに来た背景を教えてください。

〝人は若ければ若いときほど、感受性や新しい体験に対する貪欲さ、そこから得られる吸収度合いは高いはず〟

 ワーキングホリデーでカナダに来る前は、当時新卒で入社したソフトバンク株式会社にて組織人事業務を3年半ほど担当していました。社員からの問い合わせ対応や、人事書類の手続き管理、組織改善、評価管理、子会社設立支援、現場でのプロジェクト支援など、そのほか本当にたくさんの業務を担当しました。

 普段のやりとりは、担当組織の役員や本部長、そのほか管理職の方々が中心です。ビジネスのトップの方々と一緒にお仕事をさせてもらえたことは大変貴重な経験だったと思っています。

 最後の1年ではもともと興味のあったグローバル人事部にも兼務することになり、外国人社員とのやりとりや、当時グループ傘下にあった米国の通信会社Sprintに関するプロジェクトにも携わっていました。カンザスにあるSprint本社への出張も体験させてもらい、ますます海外勤務への憧れも膨らんでいました。

 普段の生活は大変充実していたのですが、もともと若いうちに海外で働いて自分の視野を広げておきたいという個人的な強い思いもあり、赴任の機会がなければどこかのタイミングで退職して1年ほどワーキングホリデーに行きたいと思っていました。というのも、個人的に、人は若ければ若いときほど、感受性や新しい体験に対する貪欲さ、そこから得られる吸収度合いは高いものと考えていたからです。

 世界の企業のワーキングカルチャーにもすごく興味を持っていました。若い頃旅行で様々な国へ足を運んだことはあったものの、1年という単位で生活をしたことがなく、好奇心がますます大きくなっていました。

 そして、当時日本で付き合っていた現妻がカナダ生まれというのもあり、2015年の11月に一緒にカナダへ行く決心をしました。

ーワーホリ時代を振り返ってみて思う理想と現実を教えてください。

〝現地企業への就職がうまくいかず、自分には何ができるだろうと自分のスキルを見つめ直す〟

 カナダに来る前は、苦労はするものの、3年半という経験をいかせば現地のどこかの企業で働けるだろうと思っていました。しかし、現実はそう甘くはありません。応募した先から書類審査や面接で落とされる回数が増えるにつれ、人事として働きたいという思いも少しずつ薄れていったのを覚えています。もちろん、現地就職は難しいという話やアドバイスなどは周りからたくさんもらっていたのですが、それでも当時は自分の覚悟を信じてなんとか成功させるんだという意地もあったと思います。


 日本語と英語を使えるということ、携帯関連の知識が豊富だったこともあって、結果的に留学生向けの携帯販売会社で正社員として勤務させてもらえることになりました。人事という道を諦める結果となりましたが、「ほかに自分には何ができるだろう?」と自分のスキルを見つめ直す良い機会にもなったと思います。

ライターとして少しずつフリーランスとして活動が実ってきた水越さん。しかし、人事職に就きたいという想いを捨てきれず、カレッジへの進学を決意する。そしてインターン活動が大きな転機となる

ーなぜカレッジに進学を?カナダ生活や求職活動でキャリア構築について感じたことを教えてください。

〝カナダの人事のポジションは募集要項に「人事を専攻とする学位や卒業証明書を持っていること」と記載されていることがほとんどでした〟

 日本で人事の経験はあったものの、私は人事を専門的に学んだことがありませんでした。正直なところあらためて再び学生に戻るということには抵抗があったのですが、「人事で働きたい」という思いが強くなっていたのもあり、カレッジに進学することにしました。

 また、カナダでは人脈を通して職を得ることもとても多いため、当時の自分の限られたネットワークを広げるためにもプラスになるだろうと思いました。

 カレッジでは当然ながら授業はすべて英語です。授業前には予習のために教科書を数十ページ読んでおかなくてはいけないことも多いのと、グループワークや個人の宿題も出るため、当初は毎日かなり苦労していましたが、結果的に学友にも恵まれ、専門性を学ぶことで、法律や採用活動の流れ、理論的な枠組みにも触れることができ、知識を得るという点でも貴重な経験となりました。

 インターンの受け入れ先は自分で探さなければなりませんが、カナダでの業務経験が限られ、ネイティブに比べて英語力の劣る私たちがほかの候補者に勝るためには、自分の限られた経験をそのポジションで求められている業務内容にいかに結びつけて語れるかが重要です。

 私の場合、日本の3年半での人事の経験だけでなく、ボランティアとして通っていたNPO団体のオフィス事務の経験や表彰歴も生かすことができたと思っています。ボランティア先でお世話になった方々にはその後のリファレンス(推薦人)にもなってもらえ、この時改めてボランティアをやっていて良かったなと思いました。


 現地での業務経験の少ない私たち外国人にとって、こうしてボランティアを通して経験とネットワークを広げておくというのはとても大切なことなのではないでしょうか。

 また、インターン期間中、例えばエクセルのスキルやプレゼンスキル、マルチタスクやタイムマネジメントなどの一般事務の遂行に必要な基礎スキルなど、日本の3年半で培った基本的なビジネススキルが活かせていたと思います。

カナダでの就職活動を振り返ってみてあらためて思うこと

〝カナダでの職務経験年数かその業務に直接関係する専門的な学位や証明書を持っていないと、書類審査で採用担当の目にすら止まらないこともあるでしょう〟

 やはり現地就職は大変だということですね。エンジニアやデザイナーのような専門職だと話は別ですが、人事のようなビジネス寄りの職種だと、母国での経験だけではあまり役に立ちません。現地就職をする上での最大の近道は、まずは専門の学校へ通うということなのかもしれません。

 また、同じくらい大事なのがやはり人的ネットワークです。これは、カレッジに通っていた頃に教授から何度も聞かされていただけでなく、よく通う人事のイベントでも必ず耳にする言葉です。人事の人たちもそのように言っているほどなのですから間違いはありません。

 Linkedinなどに公開されている求人は、実際に企業に存在する職の空きのわずか数十%にすぎないとも言われるほどです。それ以外はほとんどが、私たちの目に触れる前に人的ネットワークを通した推薦にて満たされているのです。そのため、人が集まる場所に率先して顔を出すようにするというのは重要なことなのです。

人事のプロが語るワーホリの価値と活かし方

ー日本ではまだまだ「ワーホリの価値」が低く見られがちです。就職・転職活動には不利だという意見もネットでは散見されます。そのような現実も受け止めてどのような行動や経験、活動をしていくべきかアドバイスをお願いします。

 これに関しては私も同じことを感じていました。ネット上では「ワーホリ」という言葉がネガティブな文脈で語られることの方が多い印象でした。

〝ワーホリをする上で一番重要なのは「ワーホリを通して何を成し遂げたいのか」を明確にしておくことではないかと思っています。つまり、「ワーホリの目標は何?」に対する回答を自分なりに持っているかどうかということです〟

 人は目標を設定すると、その目標へ向かって何らかの努力をすると思います。海外の友達をたくさん作りたいなら、ボランティアやミートアップに率先して参加し、色々な人と繋がろうとするでしょうし、英語を上達させたいなら、それらに加えて学校へ通ったり、「Toastmaster」などに通ってパブリックスピーチの能力を鍛えようとするかもしれません。つまり、最大公約数を導き出すために、どんな行動をとったのか、この点にこそその人のロジックやポテンシャルが現れる部分なのではないでしょうか。

 例えば私の場合、カナダへ来るも人事として働けなかったため、試行錯誤したあげく、カレッジで専門を学ぶという道へ進むことを覚悟し、ありがたいことに今人事として働けています。私のケースはもしかしたら遠回りなのかもしれません。ただ、当時近道をしていたら、ライターという新しい道もなく、こうやってインタビューを受けさせてもらってもいなかったかもしれません。

 これらのことを意識して前へ進んでいれば、たとえワーホリを経験していても必ずしも不利になるとも言えないんじゃないでしょうか。少なくとも私が日本で引き続き人事をやっていたとすれば、面接ではその点に興味を持って質問をするんじゃないかなとも思いますね。