留学エージェントはどう考える?East-Westカナダ留学センター 高林紘子さんに聞く「カナダ政府による学生ビザ発給制限」|ニュースの別視点【第二弾】
カナダ政府は1月22日、外国人留学生に対するビザ発給を今後2年間制限すると発表した。学生ビザ発行数を制限するほか、Post Graduate Work Permit(ポスグラ)や配偶者就労ビザの申請条件の変更なども伴わせて発表された。大きな改訂にこれからカナダ留学や進学を考えている留学生などから不安の声が挙がっている。今回は、ご自身もワーキングホリデーからカレッジに進学し、現在は留学エージェント「East-West カナダ留学センター」の代表を務める高林さんにお話を聞いた。
ー今回の改訂の内容をどのように受け止めていらっしゃいますか?
私自身、この仕事に15年以上従事していますが、過去も学生ビザについては色々な改訂があり、その度に私たちとしてはすぐにその変化に対応しなくてはならない状況を多々経験してきました。ただ、実際にその変化のせいで日本人留学生にとって学生ビザが取りにくくなったなどの大きな影響を及ぼした事は殆どなかったようには思います。
学生ビザは申請をすれば基本的にすんなり通ることが多く、早い時は申請後数日でビザが下りたりもしましたので、例えば最初に語学学校に数カ月行ってその後ワーホリに切り替えるなどできるだけ長くカナダに滞在したい、というような方には、まずは学生ビザをお勧めしていました。
今回もいざ蓋を開けてみれば、それほど心配はいらなかった、という結果になることを願ってはいるのですが、今回は資金証明のポリシー改訂(今年からはこれまでの倍以上もの金額の資金を証明する必要があります)も相重なり、更に州政府からの認定レターや州ごとの数の割り当てなど、こちらではどうにもコントロールできず、今までのように手順通りに申請すれば誰でもビザが通る、というわけにもいかなくなりそうなので、ビザ申請のタイミングや学校とプログラムの選択に至るまで少し慎重に案内をする必要があると感じています。
政府としては、現地の住宅問題やインフレ加速の問題から、カナダ国民や留学生の生活を守るための措置というような理由付けをしているようですが、あまりに唐突すぎて未だ混乱のほうが大きいですね。ただこれまでのシステムが少し緩すぎた所もあるのは確かで、寛容なカナダのビザシステムを都合よく乱用しAbuseしてきた学生やエージェントが存在していたことも事実だと思います。それらを取り締まる意味でも、緊急の改定は多少必要な部分もあったかもしれません。
ー本件に関してはどのように学生さんたちにアドバイスされているのでしょうか?
まずは現時点でわかっていることや準備できそうなことをしっかり把握して、学生さんたちには、まだ工程の詳細が発表されていない状態で変な憶測や出所がわからない噂などに惑わされず、移民局の公式サイトなど、出所が明確な情報をできるだけ調べる姿勢を促しています。
また、現時点ではまだ実際に学生ビザの新規申請ができないので、もしも渡航を急ぎたい方の場合は、とりあえず学校を半年未満の登録に調整して観光ステイタスで渡航を実現できるようにするなど、できる限りで臨機応変にそして柔軟に準備できるよう案内しています。それと同時に、可能であれば渡航を急ぐのではなく、スケジュール的な部分を調整できそうであれば、予定よりも渡航を少し先に延ばし、その分資金面も含めて余裕をもってじっくり準備ができるように促したりもしています。
ー学校関係者や同業者方々の受け止め方を教えてください。
同業者でも、異なる国籍の留学生に対応しているエージェントさんなどですと、おそらく国籍によって若干ビザ状況に差が出ることもあるかと思いますので一概には言えませんが、学生ビザの選択肢が保留状態となっている今、日本マーケットの場合は弊社も含めワーキングホリデーやeTAのみでの短期留学をプロモートする方向にシフトしている所も多いと思います。また、高校生以下の正規留学、または大学院以上の正規留学であれば今回の改定の影響をあまり受けないのでこれらのマーケットに力を入れ始めている所もあるようです。
ー留学生の皆さんの動きにも様々な反応が出ていると思います。学生さんの反応を教えてください。
今回の急な改訂による混乱と、未だ詳細発表がない状態の中、カナダの留学自体を考え直すという方も多々出てきているように思います。カナダがダメなら他の国、というような声も聞きますし、それを促す日本のエージェントさんも見られます。ただ、もともとカナダ留学に対する思いが強くしっかり準備をしてきた方のほうが、むしろ渡航時期を多少先に延ばしてでも今できる準備をする、というように柔軟な受け入れ方ができているように思います。
ーカナダへの留学や進学を考えている人、またすでにカナダにいるけれども今回の決定を受けて将来設計が変わってくる人や今後に不安を覚えている学生さんなども多いと思います。今後の見通しなども含めてアドバイスをお願いします。
今回の措置はとりあえず2025年までの2年間という期間の枠が設けられていて、その後は状況によってはまた条件が少し緩和する部分もあるかと思います。現状はしばらく様子を見るしかない部分が多いですが、今現在わかっている情報をしっかり把握し、とりあえずできることにフォーカスを充てていくことが大切だと思います。混乱に惑わされず、今できる準備をしつつ柔軟に対応できるよう、いくつかの選択肢や対策も考えておくと良いでしょう。
今回の改訂で学生ビザの数が制限されますが、移民局の過去何年間かのデータを見ると、実はその制限後の数自体はコロナ前にカナダで毎年発行されていた学生ビザの数と変わらないのです。ですので、学生ビザの発行数の制限自体はあまり心配する要素ではないようには思います。あとは新しく追加された州からの認定レターの取得について詳細が分かりまたプロセスが再開されたら、その要項に従ってきっちり申請の準備ができれば、ビザが取れないということはないと思うのであまり悲観的に捉えないようにしたいですね。