トロントで出会った2人の師 フレンチシェフ田丸雅行さん(中編)|Hiroの部屋

1995年にトロントへ戻った田丸雅行さんは、ジェイミー・ケネディ氏やディディエ・ルロワ氏と出会い、料理人として大きく成長する。2人の師のもとで学んだ厨房の哲学と経験が、後の独立へとつながっていく。
田丸:1995年頃にトロントに戻り、街中のレストランを自ら巡りました。誰かに紹介されるのではなく、実際に足を運び、メニューを見て「この人の料理、いいな」と感じたところだけを選んだんです。
そして、直感的に惹かれた料理の作り手が、後に師匠になるジェイミー・ケネディでした。
店に飾ってある写真に写っている2人が私の師匠で、その1人がジェイミーです。

ヒロ: 働きたいレストランを自ら探し回ったんですね。僕もワーホリ時代、同じようにサロンを探したので、共感してしまいます。
ジェイミーは、最初どんな印象でしたか。

田丸:彼はトロントのパイオニアで、当時から「シェ・パニーズ」からメニューを取り寄せるなど、極めて最先端な料理をしていたと思います。
その後、ロイヤル・オンタリオ・ミュージアム内の店でも、カジュアルなランチからケータリングまで幅広く経験させてもらいました。

田丸: ジェイミーの店では、50人から200人規模のパーティーをさばく経験を積めました。現場では料理技術だけでなく、「誰に何を任せて自分はどこを見るか」など、全体をオーガナイズすることで厨房の動かし方を学びました。
ヒロ: なるほど。美容だとサロンワークではなく、大人数のショーや撮影のバックステージに似ているかもしれませんね。組織力を学ぶコツなどはありましたか?
田丸: 私には常に「シェフのために仕事をする」という感覚がありました。東京での修業で自然と身についたものですが、シェフのために動くことが、店全体を円滑に回すと理解していたんです。
そんな自分の成長も感じていた33歳に「アップカミングシェフ」として取材を受けたのですが、その頃が料理人として一番尖っていたかもしれません(笑)。
ヒロ: こんな温厚な印象の田丸さんでも、尖ってた頃があったとは(笑)。

田丸: 2人の師匠のスタイルは、対照的でした。
ジェイミーさんはカナダ人らしく、皆に平等で優しい方でした。ただ、当時の私は「自分は誰より働いている」という自負があり、特別に評価されたい欲求もありました。
一方で、ディディエ・ルロワさんは仕事ぶりをきちんと見てくれました。彼は私のソースを味見し、「いい」と一言評価してくれました。その瞬間、日本で積み重ねてきた仕事や学びが間違っていなかったと確信でき、とても嬉しかったです。
そこで、自分の歩んできた道は間違っていなかったと確信できた時は、嬉しかったですね。

ヒロ: 2人の師匠のスタイルを経験したことで、ご自身の料理観にも影響はありましたか。

田丸: ありますね。自分の店でも、ジェイミーさんがしてくれたことを次世代に返したいと思っています。
例えば、スタッフの料理が形になってきたら、こっそりメニューに印刷して用意してあげる。自分がされて嬉しかったことを繋いでいきたいんです。
田丸: その後、ホテル勤務もして色々な経験はできたのですが、自分には合いませんでしたね。自分らしい料理人の感覚を取り戻すのに、半年ほどかかりました。
ヒロ: でも、ホテルで良かったことは奥様と出会われたことですよね。

田丸: そうです。それは大きかったですね。妻と出会い、今は二人三脚で店をやっています。
妻はレストラン経験こそ少なかったものの、お客様を喜ばせるサービスの才は群を抜いていました。フレンチ料理を分からない部分があっても、お客様を心地よくさせるのを120%できる人です。
私はよく「料理はトロントでトップ50に入れば十分だが、サービスはトップ5を目指せる」と言います。それほど妻の接客には自信を持っています。
ヒロ: 愛情と信頼を感じるとても素敵なお話ですね。
(聞き手・文章構成TORJA編集部)
田丸雅行(Masayuki Tamaru)さん
17歳で料理の道に入り、東京のフランス料理店「シャン・ド・マルス」にて修業を開始した。1990年にカナダへ渡り、ジェイミー・ケネディやディディエ・ルロワといった著名シェフのもとで経験を積み、トロントを代表するフレンチシェフの一人として確固たる評価を築く。2000年代初頭からトロントの主要メディアで取り上げられるようになり、2006年には「JOV Bistro」にて当時トロント屈指と評されたテイスティングメニューを手がけ、著名な料理評論家ジョアン・ケイツにより「シェフ・オブ・ノース・トロント」に選出された。
Maison T 1071 Shaw St, Toronto
https://maisontbistro.com/
Hiroさん
名古屋出身。日本国内のサロン数店舗を経て渡加。NYの有名サロンやVidal Sassoonの就職チャンスを断り、世界中に展開するサロンTONI&GUY(トロント店)へ就職。ワーホリ時代から著名人の担当や撮影等も経験し、一躍トップスタイリストへ。その後、日本帰国や中米滞在を経て、再びトロントのTONI&GUYへ復帰し、北米TOP10も受賞。2011年にsalon bespokeをオープン。今もサロン勤務を中心に、著名人のヘア担当やセミナー講師としても活躍中。世界的ファッション誌“ELLE(カナダ版)”にも取材された。salon bespoke
130 Cumberland St 2F647-346-8468 / salonbespoke.ca
Instagram: HAYASHI.HIRO
PV: "Hiro salon bespoke"と動画検索
















