【演奏者と指導者、二つの視点から】サラ・フレイザー・ ラフさん(中編)|Hiroの部屋

カナダに生まれ、日本の山梨で育ったサラ・フレイザー・ラフさん。周囲に音楽環境がほとんどなかった地方の小さな練習室で、幼い彼女は静かに「音楽家になる」という夢を育てていった。やがて東京で原田幸一郎氏の厳しくも豊かな指導を受け、室内楽という新たな世界と出会い、その表現の幅は一気に広がる。そして今、サラさんはトロントを拠点に演奏家・教育者として活躍し、国境を超えて音楽の喜びを届け続けている。
音楽が広げた世界


ヒロ: 桐朋学園をご卒業後、なぜトロント大学で学ぶことにされたのでしょうか?

サラ:そうですね、イスラエル交響楽団の元コンサートマスターを務められた師匠が、トロント大学とRCM・王立音楽院(Royal Conservatory of Music)で教えていたんです。その頃はヨーロッパや日本からも、先生に習うためにたくさんの生徒がトロントに集まっていた時期でした。1990年後半ぐらいのことです。先生が桐朋でもマスタークラスを教えていて、その様子を見て「私も先生のもとで勉強したい」と思ったんです。それで、そのまま先生を追うような形でトロントに来ました。いざ来てあらためて「ワールドワイド」な環境だと実感したのを覚えています。
ヒロ: トロント大学で修士を取られて、王立音楽院でグレン・グールドのアーティストディプロマを取得されたわけですが、その後は演奏活動と指導者としての仕事を両立されているんですね。
サラ: はい。RCM(王立音楽院)のファカルティに指導者として迎え入れていただき、同時に演奏者として「Madawaska Quartet」創立、オーケストラや録音でも活動しています。トロントではオペラやバレエなどの多様な現場があり、演奏と指導の両面から音楽に携わっています。


サラ: 演奏は、コンサートがあって、それに向かって練習して、本番が終われば一区切りという流れですよね。一方で指導の場合は、やっぱり「長い目線」になるんです。毎週会って、長い生徒だと15年以上になります。3歳で始めた生徒が、今では医者になって連絡をくれる、そんな関係なんです。毎週のレッスンという「積み重ねのプログラム」が大事で、10年後、15年後を見越して、今どのスキルを育てるかを考えながらやっています。
ヒロ: やはり、指導のスキルと演奏のスキルは、全く違うものですよね?
サラ: はい、違います。「簡単に弾けてしまう人ほど教えられない」って、言われる位です。私は鈴木メソードから、桐朋式に切り替えるときに技術面で苦労した経験が多かったので、逆に「どうやったらこの技術が身につくか」を細かく、手取り足取り教えることができるのだと思います。カナダに来てからは、ティーチャートレーニングも受講しました。今ではティーチャートレーナーの立場にもなって、バイオリンの先生を育てるコースもお手伝いしています。
それと、「ケガをしない身体づくり」も重要なんです。昔の日本では、技術だけを重視していた傾向がありましたが、今は変わってきています。長く弾き続けるためには、身体の使い方も教えなければならない。こちらではボディマッピングやアレクサンダー・テクニックなど、身体の使い方そのものを学ぶ理論があります。そういった知識も取り入れながら、指導者として伝えられるよう努力しています。


サラ: まず、日本では「姿勢」というか、練習に向き合う態度ですね。ちゃんと毎日練習するのが当たり前で、真面目に、きちんと取り組むという姿勢は日本で身につきました。
カナダに来て良かったのは、日本では気づけなかったことに初めて気づけたことです。こちらで出会ったバイオリンの先生が、背が高くて腕も長い方で、最初に私に言ったのが、「体が違うんだから、同じ弾き方になるわけがない」という言葉でした。 それまで日本では、「同じように弾くのが正しい」という空気がありましたが、手のサイズも違うし、姿勢も違うし、全く同じように弾けるわけがないんですよね。カナダに来て初めて、「体の違いから生まれる奏法の違い」を学ぶことができて、それは大きな気づきでした。
(聞き手・文章構成TORJA編集部)
Sarah Fraser Raff
サラ・フレイザー・ラフさん
カナダ・トロントを拠点に活動するヴァイオリニスト。桐朋学園大学で原田幸一郎氏に師事し学士号を取得後、トロント大学で修士号、RCMグレン・グールド・スクールでアーティスト・ディプロマを取得。マダワスカ弦楽四重奏団の創設メンバーとして活躍し、Royal Conservatory of Musicで20年以上にわたり指導を行う。
https://sarahfraserraff.com/home/
Hiroさん
名古屋出身。日本国内のサロン数店舗を経て渡加。NYの有名サロンやVidal Sassoonの就職チャンスを断り、世界中に展開するサロンTONI&GUY(トロント店)へ就職。ワーホリ時代から著名人の担当や撮影等も経験し、一躍トップスタイリストへ。その後、日本帰国や中米滞在を経て、再びトロントのTONI&GUYへ復帰し、北米TOP10も受賞。2011年にsalon bespokeをオープン。今もサロン勤務を中心に、著名人のヘア担当やセミナー講師としても活躍中。世界的ファッション誌“ELLE(カナダ版)”にも取材された。salon bespoke
130 Cumberland St 2F647-346-8468 / salonbespoke.ca
Instagram: HAYASHI.HIRO
PV: "Hiro salon bespoke"と動画検索














