【異なる世界のプロが語る、「上達」の共通項】サラ・フレイザー・ ラフさん(後編)|Hiroの部屋

カナダに生まれ、日本の山梨で育ったバイオリニストのサラ・フレイザー・ラフさんと、トロントでヘアサロンを営むヒロさん。異なる現場で腕を磨いてきた二人が対談し、「上達」に必要な条件を言葉にした。質問しやすい空気づくり、身体の使い方を理解するロジック、そして感性を育てる「イメージする力」。分野は違っても、伸びる人に共通する核が浮かび上がる。


ヒロ: 多文化都市トロントでのご指導を通じて、何か気づきなどはございますか?また、日本人の生徒さんもいらっしゃいますか?

サラ:そうですね。日本人の方もいますし、中国や韓国などアジア系の方も多いです。日本人だけに限らず、アジア圏の方は、年上や先生に対して配慮があるのか、遠慮してしまって、質問しないことが多いですよね。本当は分からないことがあっても、聞けないままになってしまうことも多いような気がしています。だから私のほうから、「分からないことがあったら、いつでも聞いていいよ」「教え方に疑問があったら、遠慮なく言ってね」と、こちらから伝えるように心がけています。
一方、カナダ育ちの生徒は、大方分からなかったら普通に質問してきます。
心理的にオープンな空気をつくって、自然に質問できる雰囲気にする努力は、日本にいる時よりも意識しています。
ヒロ: アーティストディプロマと修士を取得後、指導者として活動をし、さらにマダワスカ弦楽四重奏団を創設された理由は?
サラ: 作曲家が「私のために書いてくれる」ことは特別な思いになります。自分が初演する曲に向き合うのは、音を弾くだけではなく、感情も含めて自分で作っていく作業で、すごく面白いんです。
カルテットだとチームワークや呼吸が必要で、自分一人の世界では成立しません。音色やスタイルが合わないと一つに聞こえないので、話すことも、聴くことも、個人練習もとても大事で、4人が毎日一緒にリハーサルできるのが理想と考え、そこを目指して活動していました。

ヒロ: ありがたいことに、僕たちは「美容師として4人がそれぞれ好きなことができる」スタイルです。お客様がいて、僕らがいる。例えば僕が担当している間、他の3人が口を出すことはありません。
共同経営者としての役割分担はあります。全員が経営の未経験だったので対等に話し合えました。3人構成よりも、4人の方が意見が一方に偏らず、程よい距離感でバランスを保てるのが僕たちの良さかと思います。娘さんが二人いらっしゃるということですが、サラさんと同じように音楽の道に進んでいるのですか?

サラ: ピアノを習って、レベル8の試験まで合格することができましたが、プロを目指すような道には進んでいません。私の幼少期はバイオリンでしたが、練習が忙しくて、社交的な面で失ったものもあったと感じてきました。子どもには同じ経験をさせたくないと思っていたのもあります。
ヒロ: 音楽の世界だけではないと思いますが、親御さんも大変だと思います。送迎も含め、自分たちの時間の多くがそこに費やされるわけですから。
サラ: はい、そうですね。私が室内楽を指導しているテイラー・アカデミー等、音楽漬けで鍛えている世界も現実としてあるんですよね。
「イメージできる頭」のつくり方


サラ: 音楽性に関しては、経験そのもの以上に「イメージを膨らませる頭の柔らかさ」が大切だと思います。美術、旅行、自然、バレエ、スポーツなど、対象は何でも構いません。あらゆるものに興味を持ち、多様な感情を想像できるようになることが、表現の豊かさに繋がります。

ヒロ: 僕は、美容師としては創作系というより職人系に近いタイプです。カウンセリングを軸に、頭の中で設計図を組み立て、形にしていく。理系出身ということもあり、美容は理数的な思考とアートが混在していると感じます。カットも、髪質や骨格や角度など理論的な要素が大きいです。身体の使い方を理解することは、きっと音楽にも通じるのだと今日改めて気づきました。

サラ: 初めてサロンでお会いした時、ヒロさんはとても論理的に説明してくださいましたよね。今日お話しして、その背景にある考え方がよく分かりました。
(聞き手・文章構成TORJA編集部)
Sarah Fraser Raff
サラ・フレイザー・ラフさん
カナダ・トロントを拠点に活動するヴァイオリニスト。桐朋学園大学で原田幸一郎氏に師事し学士号を取得後、トロント大学で修士号、RCMグレン・グールド・スクールでアーティスト・ディプロマを取得。マダワスカ弦楽四重奏団の創設メンバーとして活躍し、Royal Conservatory of Musicで20年以上にわたり指導を行う。
https://sarahfraserraff.com/home/
Hiroさん
名古屋出身。日本国内のサロン数店舗を経て渡加。NYの有名サロンやVidal Sassoonの就職チャンスを断り、世界中に展開するサロンTONI&GUY(トロント店)へ就職。ワーホリ時代から著名人の担当や撮影等も経験し、一躍トップスタイリストへ。その後、日本帰国や中米滞在を経て、再びトロントのTONI&GUYへ復帰し、北米TOP10も受賞。2011年にsalon bespokeをオープン。今もサロン勤務を中心に、著名人のヘア担当やセミナー講師としても活躍中。世界的ファッション誌“ELLE(カナダ版)”にも取材された。salon bespoke
130 Cumberland St 2F647-346-8468 / salonbespoke.ca
Instagram: HAYASHI.HIRO
PV: "Hiro salon bespoke"と動画検索


















