日本酒の新たな可能性 トロントの人気フレンチシェフがクリエイティブする日本酒ペアリングディナーが開催

カナダを代表するシェフが作る和食とではない日本酒ペアリングディナーが地元人気フレンチのジョージレストランで行われた。
トロントでは初めてとなる和食とではない日本酒のペアリングディナー。料理はダウンタウンにあるジョージレストランの料理長Lorenzo Losetoが担当する。シェフLorenzoは今まで数々のコンクールに優勝しており、今年はCanadian Gold Medal Plates にも優勝。彼がこの日のためにオリジナル5コースディナーを用意した。
ペアリングされる日本酒は2か所の対照的な酒蔵から厳選された4種類ずつ、合計8種類の日本酒だ。一つ目は日本で最も古い酒蔵の一つ、450年以上の歴史を持つ吉乃川酒造。もう一つは地元トロント、ディストラリーディストリクトで酒造りを行っている泉酒造。今回のディナー参加者は34人。6つのテーブルに分かれて座り、ゲスト同士ても日本酒について意見交換ができるような席割りになっていた。
それぞれの代表からのウェルカムスピーチから始まり、順番に日本酒と料理がサーブされるのに合わせて日本酒について説明を加えながらディナーは進められた。始めは吉乃川の「大吟醸」からのスタート。もっとも技術を要する大吟醸、吉乃川ではすべての工程が手作りされており、完成後瓶に入れる前にマイナス5度で3年間以上寝かせることによって香りと味に深みがでる。今回は食前酒としてAmuseのアボカドムースと一緒に出された。
続いて吉乃川の「極上吟醸」と泉の「純米あらばしり」がポーチドサーモンと出された。「極上吟醸」は大吟醸に比べしっかりしたボディとすっきりとした後味でさまざまな食事と合わせることができる。サーモンとの相性も良く、お互いがお互いの良いところを尊重しあった形となった。「純米あらばしり」は日本酒を搾る際に余り圧力をかけずに出てくるお酒のこと。フレッシュなもので軽い飲み口なのが特徴だ。18%とアルコール度数の高いお酒だが、サーモンと一緒に食べることによってお酒の方がよりまろやかに飲みやすくなり、食事が日本酒を引き立てる形になった。
2つ目のコースは黒ゴマをまぶしたカワカマスのウニバターソース添えを吉乃川の「Yoshi Junmai Ginjo」と一緒に食す。このお酒はしっかりしたボディが特徴的で揚げ物にも負けないしっかりした味。日本で作られているが、カナダ国内のみで販売している。
メインはテンダーロインステーキのブルーベリーソースと泉の「原酒」この日本酒は他と違って水が一切足されていないのでアルコール度数も高く、フルボディのしっかりしたお酒になり、ステーキにも負けない味だ。
4コース目のLe Baluchonでチーズとバゲットが泉の「低温桜」と吉乃川の「Kome Dry 本醸造」の2種類がペアリングされた。低温桜は非常に酸味の強い日本酒で白ワインに似たところがあるユニークなお酒で、チーズとの相性も抜群だ。本醸造は冷でも燗でも飲める万能な酒。お漬物などの発酵食品と合うので、チーズと合わせても美味しく飲むことができる。
最後のデザート、メープルシロップタルトは泉の「にごり酒」と出された。にごり酒は日本酒を搾った後にしっかりと漉さないことで澱が残り白濁する。冷で飲むのでこれからの夏に合ったお酒だ。
全てのディナーを通して吉乃川の川上浩司氏、泉のGreg Newton氏、ブルーノートのPatrick Ellis氏、メトロポリタンのVivian Hatherell氏がそれぞれ各テーブルを回りゲスト一人一人の質問に答えたり、日本酒の豆知識を教えたりする機会もあった。ゲストは新しい日本酒の可能性に触れることのできたこのディナー。この日のイベントの立役者達からコメントを頂く機会を得た。
料理長LorenzoLosetoにとって、Sake Dinnerを通しての感想。
普段ワインディナーを行うときも、僕が料理を考えて、ソムリエがそれに合うワインを選び出すんだ。今回もそれと同じように僕が考えた料理に合わせてソムリエがお酒をマッチさせたんだ。だから、大変だったのは僕じゃなくてソムリエだね。でも、お互いとても貴重で楽しい経験になったよ。
日本酒は僕がお店を開けた時からたくさん置いているよ。日本食レストランではないけれど、ゲストに何か面白いもの、他とは違う経験をしてもらうために日本酒はとても大事なんだ。まだワインを勧めることの方が多いけど、最近は日本酒の認知度も上がってきているからね。ソムリエやサーバーがゲストの様子をみて、出来るときは日本酒も勧めるようにしているんだ。典型的な型にはまらないで食事を楽しむのに、今回のディナーはいい機会だっただろう。
メトロポリタンVivian Hatherell氏
今日のディナーがどれだけ日本酒が受け入れられ始めているかの良い目印になったわ。ゲスト全員が典型的な和食とのペアリングではなくて、日本酒の新しい可能性を素直に受け入れていたし、今は日本食とは全く関係ないレストランオーナー達がお店に日本酒を入れるために私とミーティングしているわ。私が知っている会員制のバーでは今度日本酒カクテルをメインにしたイベントを開催するし、このまま日本酒の新しい歴史が始まって欲しいわ。
泉Greg Newton氏
最近の顧客統計の平均年齢が少しずつ若くなっているように感じます。カンパイトロントでも多くの若年労働者がいましたし、今日のディナーも決して安い金額ではないですが若い人も多く参加してくれました。人種としてはアジア人、特に日本人の方がもちろん日本酒について知っていますし、人気があります。ですが、最近の居酒屋ブームに合わせて、他のカナダ人にも日本酒の魅力が少しずつ伝わっています。まだまだ私たちがトロントで日本酒を作っていることを知らない人が多いので、居酒屋で泉のお酒を見て酒蔵に来てくれる人が増えているには非常に嬉しいです。
吉乃川、川上浩司氏
前向きに日本酒を味わっているというのが、ひしひしと伝わってきました。今日は私たちが持ってきた日本酒と、トロントの人にとっては地酒となる泉さんの日本酒の飲み比べ。良い悪いは別として作り方が違うので、結構タイプの違ったお酒だったと思います。そういう部分を共有しながら楽しんでいただけたのではないでしょうか。新しいことにトライしていけることはいいことだと思いますし、もっともっと続けていってほしいと思います。日本酒とのペアリングは、ガイドラインはありますが、最終的にはお客様が決めることだから。好きなお酒を好きなお料理と一緒に楽しんでほしいです。
レストラン情報
George Restaurant
111C Queen St. E Toronto, ON M5C 1S2
416-863-6006 / georgeonqueen.com



