トロント大学の日本人学生団体「UTJN」がカナダで働く日本人弁護士の座談会を開催
「UTJN」(University of Toronto Japan Network)はトロント大学における日本語・英語バイリンガルの学生(在学生、交換留学生、卒業生)をつなぐグローバルネットワークを構築することをビジョンに掲げた学生団体だ。北米最大級の日本人学生会としてキャリアイベントからソーシャルイベントまで、さまざまな活動を展開している。
「UTJN」のキャリア部門ではこれまで金融、コンサル、商社といった業界を中心に取り上げるイベントを多く開催してきた中で、今回は学生たちに多様なキャリアの選択肢があることを知ってもらうことを目的とし、幅広い分野でプロフェッションとして活躍する専門家を招く機会を設け、「法律」という分野にスポットを当てカナダで働く日本人弁護士の座談会を開催した。
今回登壇したのは、トロント大学ロースクール出身のオンタリオ州弁護士のスミス希美さん、ヨーク大学内のオスグッドホールロースクール出身のオンタリオ州弁護士の吉成絢香さん、アルバータ大学のロースクール出身のアルバータ州弁護士の東谷陽子さんの三名。それぞれスミス弁護士は遺言・信託・遺産相続法を専門とし、吉成弁護士は移民・難民に関する法律実務、東谷弁護士は家庭に関する法律問題を取り扱っている。
座談会では、1日の仕事内容や弁護士を目指したきっかけ、やりがい、仕事における大変なことなどのほか、弁護士という職業を通して身に着けられるスキルやカナダのロースクールの制度やそれぞれが歩んできた進路のステップが語られた。
参加した学生からは、「法律業界・弁護士のリアルを知ることができて嬉しかった。」「キャリアについての選択を考え直すきっかけになった」「今回のようなイベントは今までなかったので、いろいろな職業や経歴の人に話を聞けるのが良いと思った」などの声が挙がった。
「日本人学生にとって遠いカナダの法曹界を、少しでも近くに。知ることで、見えてくる未来がある」
今回登壇した弁護士の一人で、トロント大学ロースクールに留学し、同大学にて法学修士(LLM)・法務博士号(JD)を取得した経歴をもつオンタリオ州弁護士のスミス希美さんは、
「アメリカやイギリスに比べ、日本からカナダにロースクール留学する人口は非常に少なく、また、カナダに残り弁護士として活動する人も少数であるため、日本語でのカナダのロースクール情報や、カナダの弁護士の実務について知る機会があまりありません。
その一方で、カナダのロースクールは、学部卒業後に進学する第二の学位になるため、カナダで学ぶ日本人の学部生の中にも、将来法律の仕事を考えている方もいらっしゃることでしょう。私自身、カナダの学生時代には、日本人弁護士の先輩方にお会いしてお話を伺うことで、精神的にとても救われました。カナダという国で同じような経験をした日本人の私たち3名が、このような形で経験や情報を共有することで、カナダで学ぶ皆さんが、弁護士という仕事を少しでも身近に感じ、その魅力をお伝えできれば嬉しいです」と学生の前でこれまでの経歴や経験を話そうと思ったきっかけを伝えてくれた。
「自分のキャリア・人生を豊かにするために納得のいくキャリアを築いていくことの重要性を改めて認識」
イベントの主催者であり、UTJNのキャリア部門を担当するトロント大学2年生の箕輪和紗さんに話を伺った。
ー今回「日本人弁護士座談会」を開催しようと思ったきっかけは?
法律は私たちの生活の根幹を支えるものであり、弁護士はその法律を使用し個人の権利を守り、社会の公正を維持する重要な役割を担っています。そのような業界でご活躍されている日本人弁護士の方々から弁護士の実態・現状やキャリアパスについてお話を聞くことにより、学生が法律の世界に対する理解を深めるとともに、自身のキャリアの可能性を広げるきっかけになればと考え、今回の座談会を企画しました。
ー実際にそれぞれの弁護士の方々からの話を聞いて感じたことは?
各弁護士の方々からお話を伺う上で、法律業界の魅力を改めて実感しました。弁護士という仕事は、単なる法律の専門家としての役割にとどまらず、人々の人生や感情に真摯に、深く寄り添いながら、人々の権利を守るという大変でありながらも非常にやりがい、有意義のある仕事であることを再認識しました。
また、法律の知識だけでなく、論理的思考力や交渉力、同情心が求められる点にも改めて気づかされました。弁護士の方々のキャリアの歩みを聞くことで、法律を学ぶことがビジネス、国際関係、政策立案など多様なキャリアにつながることを知り、自分たちの将来の可能性についても新たな視点を得ることができました。
ー今回登壇された弁護士の方は皆さん女性でしたが、女性の働き方やキャリアの築き方で参考になったことはありますか?
今回の座談会を通して、キャリアの構築についてたくさんの学びを得ることができました。特に印象的だったのは、「時間をかけてでも、自分が本当に好きなことを見つけ、それを仕事にすることが大切」というアドバイスです。社会の流れや周囲の期待に流されるのではなく、自分自身ときちんと向き合いながら、自分のキャリア・人生を豊かにするために納得のいくキャリアを築いていくことの重要性を改めて認識しました。
また、今回の登壇者は全員女性弁護士の方々であり、それぞれが異なる法律分野でご活躍されているお話を伺い、一女性として非常に励みになりました。異国の地で弁護士として活躍し、人々のために尽力されている姿を非常に尊敬するとともに、言語や文化の壁を乗り越えながら、専門知識を活かし社会に貢献される姿勢に深い感銘を受けました。多くの参加者にとってその強い意思と努力は大きな刺激となり、キャリアを考える上で非常に大事な気づきになったと感じました。
ー就職やキャリアを考える上で、トロント大学や海外大学での学びはどのような影響を与えているか?
海外大学での学びは就職やキャリアを考える上で大きな影響を与えると感じます。特に、自分の興味のある分野を主体的に深く追求できる環境が整っており、専門性を高める機会が豊富にあります。また、単に知識を習得するだけでなく、ディスカッションやケーススタディなどといった実践的な学びが重視される点も特徴的です。さらに、異なる文化やバックグラウンドを持つ学生と共に学ぶことで、多様な価値観を理解し、国際的な環境での適応力も高まります。こうした経験は、生徒たちの視野を広げるだけでなく、キャリアを築く上で大きな強みとなると感じています。