山本宗一郎氏 在留邦人への福祉功労及び日加友好親善に寄与した功績に対する旭日単光章受章の叙勲伝達式が開催
8月20日、伊藤恭子・在トロント日本国総領事は公邸において、旭日単光章を認められた山本宗一郎氏への叙勲伝達式を行った。1966年にトロントに初めて来て以来、数々の事業を立ち上げ、山本基金の会長や新企会の設立と会長も務めてきた山本氏。また、ビジネスだけではなく、数々の国内外の慈善事業にも関わってきた。山本氏はトロント、そしてカナダの日系人社会の中でも大きな存在感を示してきた。
山本氏はカナダに移住して以来、カナダ国内における日系人コミュニティの発展に大きく貢献してきた。移住してわずか四年後、山本氏は友人と共に1970年にJAPAMCO社を設立。数々の日本食レストランをはじめとした日本関連のビジネスを手がけた。さらに、1980年には環境関連機器の製造販売を行うUNIRAM社を設立。1987年に画期的な塗装ガン自動洗浄装置を開発、国際特許を取得している。2003年にはマーカム市の商工会により「Most Innovative Company(最も革新的な企業)」にも表彰された。
国内外の慈善事業にも大きく貢献
山本氏の活動範囲はビジネスだけにとどまらない。カナダ国内外の慈善活動にも幅広く貢献している。1990年、山本氏は奥様の順子氏と共に山本基金を設立。その基金を通して、世界各国における慈善活動を援助している。その中には、南アジアにて学校や孤児院を設立するなどといった活動も含まれている。また、2000年ごろにはインドのチェンナイにおいて恵まれない少女たちのための孤児院をも設立。今でも40人以上が在籍し、多くの少女の支えとなっている。
2017年には日系社会の更なる発展を願い私費20万ドルを寄付
さらに、山本氏は文化的方面からもトロントの日系コミュニティに貢献。日系社会の更なる発展を願い、日系文化会館に継続的な寄付をしたり、マーカム・サンライズのロータリー・クラブのトップを務めるなど、彼の活動は多岐にわたる。
ここまで幅広い事業や活動に携わってきた山本氏の功績を振り返り、伊藤恭子総領事は彼を「ビジネスの先駆者であると同時に偉大な慈善家でもある」と讃えた。彼の活動は多くのカナダ人、日本人、そして世界中の人々に影響をもたらし、その功績は言葉では言い表せないほどだと強調した。さらに、日加友好関係の構築と日本の世界的評価にも貢献した偉大な人物であり、この賞を受章するに相応しい人物であると感謝の意を示した。
パイオニアとしての苦悩・挑戦
続いて、伊藤総領事は山本氏のパイオニアとしての並々ならぬ努力に注目した。我々は先駆者の成功や功績に視点を置くものの、その裏にあった苦悩や失敗を気づくことが出来ずにいることが多いと指摘。山本氏も先駆者であった以上、そのような苦悩を経験しながら、彼の持ち前の勇気と意志の強さを武器に数々の功績を残したと伊藤総領事は語った。
実際、山本氏が最初にトロントに来たのは1966年のこと。カナダに日本人をはじめとしたアジア系の移民が多く受け入れられる年の前年だったそうだ。そんな時にカナダへと渡ってきた山本氏にとって、もちろん参考になるような人物はいない。全て自分で模索して進んでいくしかなかったのだ。にも関わらず、多くの功績を残した山本氏、そして山本氏に続き多くの日本人のおかげで今となってはカナダにおける日系コミュニティも大きく成長した、と彼の多大なる影響に改めて言及した。
夫婦二人三脚で成し遂げた偉業
山本氏本人はこの叙勲について、信じられないと驚きを隠せない様子でいたと同時に、周りの人々の支えがあったおかげだと感謝の気持ちを述べた。中でも、奥様の順子さんは慈善活動をはじめとした彼の活動においてかけがえのない存在であったと強調した。
「この勲章の少なくとも半分は妻に対してです」と述べ、会場からは温かい拍手が起こった。ただ、山本氏にとってこの叙勲は新たな始まりに過ぎない。自分が勲章を受け取ったことにより、慈善活動がより多くの人々、特に若い世代の間で広まっていって欲しい、と次の世代へと繋げたい自らの想いも露わにした。
また、日系文化会館のアドバイザーであるシド・池田氏、さらにはマーカム・サンライズ・ロータリー・クラブで以前会長を務めていたハワード・ワイザー氏など、山本氏をよく知る人物も登壇し、改めて彼の長年に渡る活動と貢献を称えた。
旭日単光章の受章という偉業を成し遂げたのはもちろん、山本氏の半世紀以上に及ぶ活動はカナダにおける日系コミュニティの発展に大きく貢献し、今でもその影響は大きい。これからも山本氏と奥様の更なる活躍を期待したいと同時に、今回の受章がより多くの人が新事業や慈善事業に携わるきっかけにもなることを願う。