「人をどう笑わせていくかという事が鍵」|トロントのカリスマ美容師 Hiroさん×Ayaka Kinugawaさん | 対談【中編】
Hiro:Second Cityのオーディションではどのようなことをされたんですか?
Aya:面接官の方にブルース、ジャズ、クラシックをピアノで弾くように指示を出されました。オーディションが終わると、すぐに弟子入りが決まったのですがそこで「どんなミュージカルをやるんですか?」って聞いたら、相手の方がぽかんとしていました(笑)。うちはそんなことしていないよ、と言われてしまったので採用が決まってからはまずSecond Cityについての勉強を始めました。
Hiro:知らずに採用された、というのもある意味すごいですね(笑)。
Aya:インターネットとかでも調べたんですけど、そもそもImprovisation(即興)という言葉を知らずにいたので、Second Cityの本質がわかっていなかったのかもしれないです。ジャズはインプロなので、音楽の面での即興という意味では理解していたのですが、即興劇というアートフォームを知らなかったため、そういうことをしている場所だと言われても当時は良くわからなかったです。検索をするとコメディー系なのはわかりましたし、Wikipediaを見るとSecond City出身の有名人がずらりと並んでいて驚いたのを覚えています。その上、私自身コメディーをあまり見たことが無かったので、本当に無知の状態で、むしろ面接でこの劇団を良く知ろうという想いがありましたね。
Hiro:あまり馴染みのない分野に入った最初の頃はどうでしたか?
Aya:本当に難しいことが多かったです。MDの仕事内容は即興劇に音を付けたり、スケッチコメディでは効果音や曲を作ったり、舞台そのものを作ったりするんです。弟子入りすると最初は即興劇を学ぶことから始めます。即興劇が基本となっている劇団ですので、この部分を理解しないことにはどんなに素晴らしいミュージシャンでも仕事にならないんですよね。それを知るために弟子になった人たちはまず授業を取らなくてはならないんです。私はキーボードさえあれば舞台に立つことはなれているのですが、自分だけで立つというのはいままであまりなかったんです。
Hiro:授業の中でSecond Cityの特徴も学ぶのでしょうか?
Aya:その部分もカバーします。Second Cityのスタイルがコメディーですので、人をどう笑わせていくかという事が鍵になっています。ジョークを言って笑わせるというよりも、自然のままで笑いをとるのが特徴になっていますね。
Hiro:なるほど。一番最初に授業を取った時はどうでしたか?
Aya:一番最初は「なんで私がこんなことをしなきゃいけないのか」と思っていました。英語が母語じゃない時点で会話をしていくにもわからない単語が出てくることもあります。例えば、お医者さんという設定で劇をするとなると専門用語がでてくるように。毎週土曜日に授業があったのですが、初めの内は木曜日の夜から「行きたくない」って思っていました。でも仕事をするには避けられないことだったので、初めはとても大変でした。今は楽しすぎて自分から授業を取っているくらいなんですけどね(笑)。
Hiro:その授業に行きたくないな、という気持ちが変わったきっかけって何かあったんですか?
Aya:Second Cityの学校って規模もそれなりに大きいんです。トロントだけで毎週千人以上が通っていて、皆さん一番最初に取る授業は習い事や趣味感覚になっています。レベルはAからEまであり、1セメスターが2か月、全部で10か月となっています。私も授業を10か月間取って、終わる頃にはちょっと慣れたかな、という手応えがあったもののもうやりたくないとは思っていました。授業が終わると弟子入り期間が終わり、MDの仕事が始まります。そしてMDとして仕事をしていくうちに舞台に立っている人がMDに何を求めているかを知らないと上手にならないな、と気が付いたんです。それでもう一度、嫌々ながらでしたが授業を取ることにしたんです。2回目の授業はMDとして仕事をして、他の面から見ていたのが良かったみたいで授業を楽しむことができました。先生に恵まれていたこともとても大きかったですね。2回目の時の先生は対人恐怖症や上がり症の人たちが取る授業を教えていたんです。先生自身も過去にインプロをツールとしてそれを克服した方でした。Second Cityの授業ってなにも役者さんになりたい人だけが取るのではなく、子供向けの教室やビジネス系の人たちのプレゼン力向上、そして対人恐怖症と向き合うような幅広い授業があるんです。
Hiro:プロを目指すのための付属学校だと思ってましたが、学校自体は様々な一般の方も受け入れているんですね!駐在員でも、学生でも、主婦でも、そういう授業を取ることができれば、英語力の向上だけでなく、現地の友達もできそうでとても良さそうですね。大人になればなるほど、自分の弱点を克服するのが難しいこともあると思います。こちらの生活では、職場はもちろん、プライベートでも、英語でのコミュニケーション能力やリーダーシップを必要とする機会が多いと思いますが、そういう方も楽しみながらスキルアップできそうですね!
(聞き手・文章構成 TORJA編集部)
Ayaka Kinugawaさん
山梨県出身。Vancouver Island University音楽学部 Jazz科卒。2012年トロントへ拠点を移し、コメディ劇場 The Second CityにてMusical Director として舞台製作やパフォーマンスを担当する。またインプロ(即興劇)講師としてSecond City Training Centreでのミュージカルインプロクラスや企業向けのインプロワークショップ、吉本興業所属芸人へのミュージカルインプロ指導を行う。
セカンドシティHP:Secondcity.com
自身作曲HP:hooksonic.com
Hiroさん
名古屋出身。日本国内のサロン数店舗を経て渡加。若い頃から憧れた、NYの有名サロンやVidal Sassoonからの誘いを断り、世界中に展開するサロンTONI&GUY(トロント店)へ就職。1年目から著名人の担当や撮影等も経験し、一躍トップスタイリストへ。その後、日本帰国や中米滞在を経て、再び、トロントのTONI&GUYへ復帰。クリエイティブディレクターとして活躍し、北米TOP10も受賞。2011年にsalon bespokeをオープン。今現在も、サロンワークを中心に著名人のヘア担当やセミナー講師としても活躍中。
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