第13回目Japan Now講演会 カルフォルニア大学 T・J・ペンペル教授による 講演会開催
日本研究センター設立後初のJapan Now講演会シリーズ
9月22日、トロント大学マジー・カレッジにて第13回目となるJapan Now講演会が行われた。同シリーズの講演会では、これまでも日本やカナダの大学教授らが講師として招待され、日本の政治経済や環境問題など様々なトピックが取り上げられてきている。
今回は、今年トロント大学マンク国際研究所に設置されたばかりの日本研究センター(Centre for the Study of Global Japan)と在トロント日本国総領事館の共催で行われ、講師としてカリフォルニア大学バークレー校で政治学部教授を務めるT・J・ペンペル教授が招待された。
冒頭にはマンク国際問題研究所・日本研究センターのルイス・ポーリー暫定所長と中山泰則前総領事により挨拶が行われた。中山前総領事は今回のJapan Now講演会開催に謝辞を述べ、これからも総領事館とマンク国際問題研究所がともに歩み、日本とカナダの相互理解のための活動が続いていくようにと期待した。
本講演会のタイトルは“Dismantling Japanese Developmentalism”。ペンペル教授が長年研究をしてきた日本政治や経済について鋭い視点で語られることとなった。
講演冒頭、ペンペル教授は、1950〜90年代における経済成長と90年代以降の経済状況でなぜ大きな差が生まれてしまったか、なぜ経済再生ができない状態を維持し続けてしまっているのかという疑問を投げかけた。
現在日本が抱える主な問題として、経済の低迷、人口減少と少子高齢化が挙げられ、かつては世界的に評価されていた日本の経済成長はこの約20年間で低迷の一途をたどってしまっているとしたペンペル教授。グラフを用いて、アジア諸国の購買力平価ベースのGDPで他のアジア諸国が目覚ましい成長を遂げている中で日本は停滞状況の中に未だ止まっている現状や日本の人口が2005年を境に年々減少傾向にあることを提示した。
戦後、外交面でアメリカとの良好な関係を築き上げ、経済面でも技術面でも大幅な発展を遂げた日本。現在における問題の始まりは、日本に対し主に二つの試練が立ちはだかったためではないかとペンペル教授は説明。その試練とは、ニクソン大統領の中国訪問やソ連崩壊において世界の二極対立の時代が終わりを迎えたこと、世界金融と多国籍企業の生産ネットワーク力の成長によるものだとした。
そのような世界政治の変化によって従来の経済成長モデルは終わりを告げた日本が、今後どのようにして経済面・政治面で再び再生していくことができるのか。
ペンペル教授は一番考えるべきは、一人当たりの生産性と国の労働力をどのように高めるかという点だと語る。そしてそれらの解決において「移民」、「一体化」、「革新」という三つのキーワードを述べた。
在留外国人の極めて少ない日本においては海外からの移民受け入れ態勢の変化は難しいだろうと語るペンペル教授であったが、男女共同参画社会の促進、また長時間労働・低生産性が際立つ日本の労働状況における革新については、今後焦点を当てていくべき重要な点なのではと締めくくった。
講演後の質疑応答では、集まった多くの来場者たちが積極的にペンペル教授に質問を投げかける様子が印象的であった。今後もこのような日本の現在について人々が理解を深めることのできる機会が増え続けていくよう期待する。