三輪酒造・三輪研二社長インタビュー

いつも変わらない味と言われることを目指しながら、時代の好みに合わせて長年愛されている味を、少し変えていく努力をする
イタリアンや鉄板焼きなどのオイリーな料理と相性が抜群。トロントでもおなじみのにごり酒「白川郷」。
“いつも変わらない味と言われることを目指しながら、時代の好みに合わせて長年愛されている味を、少しずつ変えていく努力をする。”
ニューヨークでのイベントに合わせて、カナダおよびオンタリオ州の日本酒市場を視察にトロントに立ち寄られた三輪酒造・三輪研二社長にお話を伺った。
トロントでも良くみかける貴社のにごり酒「白川郷」ですが、こちらにお越しになるのは初めてと聞きました。
実はトロントには初めて訪れました。というのも、私の会社は営業担当の人間が誰一人いないのです。私が12年ほど前にこの三輪酒造に婿養子で入った時に、営業を担当していた方が退職したので、自分が営業兼専務という立場になりました。
そのまま新しい営業担当の話も出ないまま5年10年と経っていき、一昨年の7月に前社長から社長を受け継いだ時に気付いたのです、そういえば営業いないなって・・・。
弊社の営業網は日本国内だけでも相当な数で、それを私一人でやっているので、とてもじゃないですが海外出張にいく時間が設けられないのが本音ですね。
酒蔵カナダさんからお話をいただいて動き出したのは5,6年前のことなのですが、実際にトロントに来ることのできないまま時間が経っていました。今回はニューヨークにイベントの関係で来て、せっかくだからとSung社長にお願いして時間を作っていただき、トロントに来ることができてとても嬉しく思っています。


世界の日本酒市場、そしてカナダの市場どのように感じていますか?
私たち日本酒業界にとって一番盛り上がっているのはアメリカ、そしてアメリカと肩を並べるのが香港です。その香港を中心に今広がっているのが中国、韓国、台湾。そしてシンガポールを中心にタイやマレーシアなどの東南アジアがひとつの大きなマーケットになっています。あとはオセアニア地域も毎年大きなマーケットに成長しており、欧州はこれからといったところでしょうか。
カナダも、アメリカに含んだ北米市場として考えられていますが、お酒を売るのがなかなか難しい国だということで知られており、まだまだ壁を感じます。でも、こうして実際来てみるとトロントの街自体に大きな可能性があると感じることができましたし、アメリカではあまり流通していない“Hot Sake”がよく飲まれていると聞き、本当に美味しいものが提供できるなら魅力的なマーケットだと思います。さらに三輪酒造は、濁り酒しか造っていないに等しいのですが、それもトロントでは好まれやすいかもしれないという印象を受けました。
創業約180年とのことですが、時代の移り変わりや消費者のニーズとともに商品は変わっていっているのでしょうか?
創業当時は他の酒蔵同様、地域で飲まれる量の酒を造っていましたが、時代が変わり戦後を経て、大量消費に成長して行く中で、今や日本酒文化といえる桶売りという方式で、しばらくは大手酒蔵に自社のお酒を売っておりました。
しかし昭和40年代後半になると、ビールなど他のお酒も飲まれるようになったことによる消費の減少や、技術の革新によって大量生産が可能になったことにより、この桶売りというものが少なくなっていきました。
そのような中で消費者ニーズに基づく商品開発を考えざるを得なくなり、当時の6代目社長と後の7代目社長である当時の専務で色々な案を出すものの、思考錯誤の状態が続いていました。そんな時に、どぶろく祭りで有名な白川村の村長さんに、酒税法上では販売が認められておらず、神社から頂くという形でしか手に入らなかった祭り用のどぶろくを、気軽にお土産として買って帰れるようにしてほしいという依頼があり、どぶろくのような濃い濁り酒の製造が始まりました。
すると、それがものすごい個性が強かったので、特定の人に好かれるお酒だったわけですが、いつのまにか愛飲者も増えてロングセラーになったのです。今年の秋で40年になりますが、誕生当時から味はほとんど変わっていません。表示事項が変わっただけでデザインも瓶も全く一緒です。25年ほど前からは薄いタイプの濁り酒をアメリカに輸出を始め、少しずつ北米でも認知されていきました。その裏では変わらないとは言いつつも、いつもその時代時代の好みに対応して分からない程度に、お客様にいつも変わらない味と言われるように、中身を少し変えています。それが長い間愛されている秘訣だと思います。
「白川郷」に合うおすすめの料理や、カナダでの日本酒の楽しみ方のアドバイスをお願いします。
白川郷に合う私の一番のおすすめは鉄板焼きですね。よくこちらの人はお寿司と一緒に飲まれていると思いますが、お寿司だけでなく、意外と脂っこい料理にも合うのがうちのお酒の特徴です。キーは脂と塩気。ですので、カナダの料理との相性は抜群です。イタリアンとかもいいかもしれません。あとこれから売り出したいなと思っているのは、発泡タイプの濁り酒。これは甘くて少し酸味があります。少し乳酸菌飲料に似ているところがあり、発酵食品やチーズなどと相性が良いので、日本酒をこれから飲み始める人や女性などに楽しんで味わっていただけると思います。
三輪酒造
天保8年(1837年)創業。岐阜県大垣市に構える酒蔵は明治期の建造物であり、歴史的な街並み景観に寄与するものとして、平成23年、国の登録有形文化財に認められ、120年を超える使用だが今でも現役で使われている。「酒は濁れど想いは一点のにごりなし」の言葉のもと、どぶろく祭りで有名な白川村の祭り用にと依頼され作り始めたどぶろくに近い濁り酒「白川郷」がロングセラーとなり、今年で40年目を迎える。



