[第10回] ミディエーション 3|カナダ・オンタリオ州公認パラリーガルによる日本語法律相談
◆インテイクとパワーインバランス
ミディエーションのインテイクは、必ず担当ミディエーターによって行われます。夫と妻を別々にインタビューし、それがミディエーションにふさわしいケースであるかどうかを判断するのです。
ミディエーションは、とても建設的であると信じられていますが、ミディエーションは危険であると見なされるケースもあります。最も顕著なケースは、家庭内暴力の存在です。暴力のみならず精神的に追い詰めるタイプの虐待の有無を察知するのもミディエーターの役割です。
これは決してたやすいことではありません。なぜなら家庭内暴力の被害者には、その事実を否定する傾向があるからです。ときには、自分が被害者であることに気がついていない場合もあります。
経験豊かなミディエーターは、様々な角度からこのパワーインバランス(不均衡な力関係)の存在を探ります。弱い立場にいる配偶者が不利になってしまう可能性が高い場合、ミディエーションで公平な解決策にたどり着く可能性は極めて乏しいのです。
◆代理人の役割
現時点では、ミディエーションに同伴する代理人は、弁護士でなければなりません。家族や友人は、ミディエーションが行われる場所に同行することはできますが、別室で待機することになります。
しかし、頼りになる誰かを伴うことは、心強いばかりでなく、話し合いがヒートアップした場合に起こりかねないバイオレンスから身を守るためにも役立ちます。
さて、代理人の役割は、ミディエーションにおける相手やミディエーターの提案が、法律とかけ離れていた場合などに適切なアドバイスを施し、依頼人の法的権利を守ることなのです。
ミディエーションでは、双方が納得さえすれば、必ずしも法律に沿った内容で合意する必要はないのです。相手からの圧力などによって、不利な条件で合意してしまわないよう、ミディエーションには代理人を伴いたいですね。
◆ミディエーションの限界
ミディエーターは、 常に中立の立場で話し合いを促進するのがその使命であり、ミディエーションで辿り着いた解決策を基に同意書を作成することはできません。
当事者が代理人を伴わなかった場合、その決定を持ち帰り、それぞれの代理人からアドバイスを受けた後同意書の作成を行います。したがって、ミディエーションで同意されたことが、後に覆されることは珍しくありません。ミディエーションは、当事者の自由意志で行うオプションであり、法的拘束力を持たないからです。
このようなミディエーションの短所を補うため、アービトレーションを採用する人も増えているようです。次回はこのアービトレーションについてのお話です。
野口ひろみ
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オンタリオ州公認パラリーガル
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