世界経済にも春の兆し?
年初の株価の下落で不安感を募らせた世界経済、ようやく落ち着きを取り戻し、回復基調を辿っているように見える。この回復は本物なのか、抜けるような青空はやってくるのだろうか?

世界経済に於いて中国悪人説は根強い。2008年のリーマンショックの際、中国政府は4兆元(約57兆円)の財政出動を行い、世界から「中国サマサマ」と称賛された。不動産にインフラ整備で資源を貪り食うそのオールドエコノミーに資源国は狂気乱舞し、オーストラリアでは中国語を操るラッド首相が2008年に就任するなど中国に足を向けて寝られない国々が続々と現れた。
が、中国のバブルは地方都市の不動産過熱、第二次産業の競争激化、供給過多などが響き、長い調整を強いられる。その後、政府は様々な支援策を施すが、空振りに終わり、昨年夏には株価が短期間で大暴落し、世界にその激震が伝播したことは記憶に新しい。その株価対策は年初にまたしても失敗し、日本の株式市場は中国並の影響を受ける結果となった。
こう書くととんでもない世界に思われるが、世の中、悪いことばかりが続くわけではない。私は、占いは信じないが循環は信じる。運勢が12年程度の周期があるように経済も一定のサイクルで動いている。その中で中国の評価はこの数年あまりにも低くなり過ぎた。私のブログを通じて中国崩壊説を述べるコメンテーターも多いが私は中国の底力を無視しすぎている、と指摘してきた。
100歩譲って中国共産党体制が変わったとしてもそこにいる13億の民は変わらない。そしてマネーに長けているその中国人の国家がそうたやすくどうこうなるものではない。むしろ、誰も期待しなくなった中国こそ、世界経済のダークホースとなりうる。
3月に開催の中国の全国人民代表大会で新たにインフラ整備として年間34兆円規模を投入することが決議される見込みだ(本稿記載時点)。また、中国の不動産は鬼城(ゴーストタウン)と揶揄されてきたが、深センは昨年から8割、上海も今年に入り1〜3割ほど不動産価格は上がっている。各種政府対策が功を奏し始めているわけだが、その本質は13億人を満たす居住品質はまだ十分ではなく目先の需給アンバランスだけが問題なわけではない。
中国はいまだに発展途上にあるため、ケインズ経済学でいう大きな政府、そして財政投入が経済拡大には圧倒的効果を発揮する。よって、今年は中国経済の底打ちから資源価格の上昇に繋がり、オーストラリア、カナダなど資源国にはプラスの効果が出てくるだろう。
もう一つの懸念材料である石油価格だが、つい先日まで石油価格の下落で大騒ぎしていたのがうそのように静まり返っている。その当時、多くの専門家、メディアは石油価格の回復は当面ない、と自信たっぷり書き立てていた。それはその相場の瞬間を捉えて世界経済のベクトルがそのまま続くという前提に立って予想をしている為に極端な結論を導き出してしまう。
だが人間は知的な行動をするもので問題が生じた時、それをどうにか解決しようと努力する。その結果、ベクトルの向きはかならず違う方向に転換することになっている。私が今年はゲームチェンジャーの年と言い続けているのは中国や石油価格問題の規模が深かっただけにその問題解決の為に大きな力がかかると予想したのだが、現状、まんざら当たっていないわけではなさそうだ。
アメリカの動向にも注目しておく必要がある。大統領選挙で揺れ動くアメリカ世論だが、誰が大統領になってもまず言えることは「過去の否定」から入る点だ。これはトップが入れ替わる意味とは前任よりももっと良くするという公約が効いているとも言える。アメリカ国民はオバマ政権で成しえなかった政策に期待を寄せ、それを断行するとこぶしを振り上げる候補者に狂気乱舞している。多くのメディアは勘違いをしているようだが国民はトランプバッシングに盛り上がっているのではなく、オバマバッシングが本質である。
ここに注目するともう一つ重要な点が見えてくる。オバマ大統領就任中は実はアメリカ経済は絶好調だった点である。これを今、否定しようとしている。TPPも然りである。これは新大統領の目指す政策がアメリカのプレゼンス高揚である一方、国内経済力維持には十分な力が及ばないかもしれないことを意味する。そうなればオバマ大統領の時代に享受しているドル高基調が崩れやすくなる。事実、今、アメリカでドル高の弊害を唱える声は多く、経済の活性化の為にドル安誘導を黙認することもあり得るだろう。
その場合、どうなるかといえば多くの資源価格がドル建てであるため、資源価格の高騰に拍車がかかるのである。つまり、明白なるインフレ傾向が出てくることになりそうだ。
私は予想屋ではない。ただ、経済をじっくり見続け、市場と投資を通じて長年対話し続けている。その中で体感的に起こり得るだろう動きは自然と理解できるようになる。巷に溢れるメディアの情報に振り回されず、きちんと俯瞰する姿勢を続けることで世界経済は見えてくるものだ。
2016年の春は世界にとって暖かくなる兆しが出てくるとみている。今年は決して悪い年にはならないはずだ。いや、そう願っている。
了
岡本裕明(おかもとひろあき)
1961年東京生まれ。青山学院大学卒業後、青木建設に入社。開発本部、秘書室などを経て1992年同社のバンクーバー大規模住宅開発事業に従事。その後、現地法人社長を経て同社のバンクーバーの不動産事業を買収、開発事業を完成させた。現在同地にてマリーナ事業、商業不動産事業、駐車場運営事業などの他、日本法人を通じて東京で住宅事業を展開するなど多角的な経営を行っている。「外から見る日本、見られる日本人」の人気ブロガーとしても広く知れ渡っている。



