木工デザイナー三谷龍二氏のカナダ初個展@Mjölk 使えるアートをテーマに工芸品を毎日の生活の一部に

Mjölk 2959 Dundas St. W / 416.551.9853 mjolk.ca
日本で活躍する木工デザイナー三谷龍二氏がJunction AreaにあるアートギャラリーMjölkにて個展を開催。現在日本一大きいクラフトフェア「松本クラフトフェア」 発足当初から運営に携わり、工芸と暮らしを結びつける活動を続ける。日常生活で「使えるアート」として木工芸を作り、日本のみならず世界で生活工芸の浸透に尽力している。そんな三谷氏に今回温かい木工芸について聞いてみた。
トロントの印象
カナダが初めてです。まだあまり周れていないので、朝コーヒーショップに行ったぐらいですね。印象については街の中心部にも行っていないのでまだわからないです。ただ話を聞いていて、自然がいっぱいあるでしょ、だから家で生活することを大事にしているのではないかと。僕、ここに来る前に北欧にいたのですけど、北欧もそういうところがあって、私が住んでいるところも寒いところなんです。冬は氷点下十度ぐらいになるので。やっぱり寒いところとか、自然が多いところは生活を大事にしたり、自然との交感があったりするじゃないですか。そういうところはどこかで共通しているように感じました。
木工芸をはじめたきっかけ
もう三十数年やっているのですよね、僕のは木工。陶芸やガラスだと窯が必要だったりするじゃないですか。でも、彫刻刀と材料があればすぐに作れるようなところがあって、割と入りやすいのがあったかもしれないですね。実際にやってみて、僕と素材の関係が、相性が合ったのが良かったって感じがしますけど。あとは、周りには家具をやっている人がたくさんいて、無垢の木を使った家具を作っている人がいて、彼らの影響もあったかもしれない。それを、家具と言う高価なものではなくて、もっと日常で近いところで使えるように、カトラリーを作ったり、ボールを作ったりというテーブル用品になったわけですね。
生活工芸の始まり

生活工芸って始まってまだそんなに経っていないかもしれない、言葉に関してもね。ただ、生まれてくるベースっていうのがあって…。日本の場合だとバブルのころまでは高価な物やゴージャスな物が受けた時代があったけれども、それがなくなって、みんなが生活に帰っていった。生活を見直すところで、生活品を買うように若い人たちがなったんですよね。2000年入ったころから、ここ15年前後はわりとそういうところがあって、生活を楽しむようになった。それまでは外へ外へ気持ちが向かっていたと思うのだけれども、家の中を豊かにしていこうっていう思想ができたのかな。これをベースにして生活工芸っていう実際使うものが求められていた。特別なものではなくて、毎日の生活で使える工芸ですね。
日本でも木の食器に、例えば直接パスタを乗っけるとかはあまりなかったんだよね。なかなか最初は抵抗があったみたいだけど、できるだけこういう個展のレセプションでちょっと木のお皿に盛りつけて出したりとかね、サラダでも、パスタでも、お醤油ものでも良いっていうのを見てもらって少しずつ理解してもらってきたんです。それでやっぱり三十年掛かりましたよ。
物を作る楽しさ


基本的に木を削るっていうことは気持ちが良いことなのです。その、木を削るっていう単純作業が楽しいんですよー。でも意外と難しかったりするんです。始めは木目を読めないですしね。反対から削って逆目になったりね。これは見てもわからないから、やりながら感覚で気づくしかないですね。木は生きているていうか、一つ一つ違う表情をしているのでそれが楽しいのかもしれない。だから自分で作ってみるとやっぱり楽しいですよ。三本の彫刻刀だけでスプーンなどは作れるのです。だからすごく手軽でしょ。あとはちょっとノコギリがあればできるから。枝でもできるし、生の切ったばっかりの木だったらもっと柔かいし、あの、水を含んでいると木は柔かいのです。だからすごくサクサク削りやすくて楽しいですよ。
松本クラフトフェアの始まり
最初の企画はやはり、アメリカやイギリスであるクラフトフェアがあって、それを見た仲間と写真や映像をみて、松本でもやろうって始まったのです。みんな独立したばっかりで、貧しくて自分たちで行動しました。それがきっかけになって広がっていったのは、何でしょうね…、直接作っている人に会える機会はなかなかない。そういう面が良かったのかな、あと野外でやるところかな。物を買うだけではなくで雰囲気を楽しむっていうのがあったのだろうね。
読者へのメッセージ
量産のものと生活工芸、一つ一つ作られたもので使ってみればわかりますよ、違いが。やっぱり見ただけじゃちょっとわかりずらいですね。と言うか、できるだけちゃんと使ってみてほしいです。見るだけじゃなくて、眺めて終わりにしないでほしいですね。生活工芸は使うためのものだから。使うことによってわかる。日本の陶芸などの工芸品がこっちに来ても今まで見る対象だったから、飾るところから使うところにシフトしてもらいたいですね。
MjölkオーナーのJohnにお店のこと、今回の個展について聞いてみた
お店をオープンする時に僕たちはスカンジナビアの作品に興味があったんだ。十五世紀の作品でもどこか現代的な趣がある。日本の工芸作品に興味があるのも、それらが昔の作品であってもまたモダンな雰囲気があるだろう。すごくきれいで、出来栄えはとてもレベルが高く、現代の生活でも使うことができるんだ。モダンデザインが好きな人だったら、誰でも日本の工芸品を好きになると思うよ。
僕たちはお店をオープンする前に、スカンジナビアと日本に旅行に行ったんだ。この旅行を通して、お店で何がしたいか決まっていったよ。でも、僕は日本に行く前から三谷氏の作品を知っていたよ、彼が一番有名な工芸士だからね。日本でやりたかったことは彼の作品を見つけて買うことさ。無事彼を見つけて、作品を買ったよ。三谷氏をここに招待するまでに五年掛かった。僕たちが招待した工芸士の中で一番の有名人さ。
ここにある全ての物は日常生活で使うために作られています。アートですが、飾るためのものではない。だから値段も芸術作品、と言うほど高くもない。小さなスプーン一つでも毎日の食事が大きく変わりますよ。
三谷龍二氏
木工デザイナー。1981年に長野県松本市に工房ペルソナスタジオを開設。
‘松本クラフトフェア’、‘五月の工芸’発足後から運営に関わり、自身も陶磁器のように普段使いできる作品をつくり、工芸と暮らしを結びつける‘生活工芸’という概念を発案。多くの支持を得る。
2011年3月に自身の作品を常設展示するほか、他の作家との個展や、イベントを開催するギャラリースペース「10センチ」をオープン。
10cm.biz





