日本書道公募展など日本とカナダの友好親善に貢献している「書道カナダ」が外務大臣表彰受賞
9月25日、「書道カナダ」への外務大臣表彰伝達式が行われた。同団体は,2007年にカナダで書道を学ぶ人々に研鑽・発表の場を設け,日本の書道文化の理解促進と普及を目的として設立された。同団体は、書道家・前田典子氏が代表を務め、毎年カナダ各地から書道作品を集め日本書道公募展を開催している。
当日は総領事公邸に関係者が集まり、日系文化会館のゲーリー川口氏の乾杯の音頭とともに多くの人たちで喜びを分かち合った。
レセプションでは、まず伊藤恭子・在トロント日本国総領事が前田氏と書道カナダのメンバー、ゲストの方々に歓迎の言葉を述べた後、「日本文化というのは日々の生活が基盤となっています。お茶を飲む時の作法が茶道になり、花のアレンジメントが華道となりました。そして、書道は文字の書き方に由来しています。JCCCでは「ありがとう」という書を展示していますが、あの文字は前田先生が書かれたものです。素晴らしい先生やサポーターの方々がいたからこそ、書道はカナダで普及したのだと思います。
私は昨年、書道カナダの展示会に参加しました。カナダ人によって書かれた書は素晴らしく、ユニークな作品の数々を楽しみました。書道カナダが成功を収めているのは、公募展の応募数を見れば明らかですし、特に今年は若いカナダ人からの応募も多かったです。若い世代のカナダ人が日本の伝統文化に触れていることからみても、日本とカナダの将来の関係は明るいでしょう。書道を広めた前田典子先生とともに、設立から今に至るまで携わった全ての方に多大なる感謝を伝えたいです。素晴らしいアートである書道がこれからも続くことを期待し、ここに表彰いたします。」と述べ、表彰状の授与が行われた。
次に、同団体の代表を務める書道家・前田典子氏が登壇し、「今回このような賞を受賞でき光栄です。書道カナダは、カナダでの文化交流を目的として設立されました。書道はビジュアルアートとして知られていますが、文字の違いを表すアートであり、私達と現在、そして未来を繋ぐアートでもあります。日本の書道は千年以上前に始まり、内面の美しさを目に見える形で表すコミュニケーション方法として信じられてきました。書道カナダでは、その精神を引き継ぎ未来に繋げていきたいと思っています。
はじめの頃は、ただ日本国外で行われる公募展という程度にしか考えられていませんでしたが、今では、未来の書道のショーケースになっているではないかと私は思っております。審査員の方々は、書道カナダの作品を見て、その予想をはるかに超える表現力に感銘を受けていますし、私たち自身も、日本の書道がどれだけ様々な文化に広がっているのか毎年驚かされています。書道カナダは、チームの仲間と私たちの目標を実現化に導いてくれるコミュニティメンバーを誇りに思っています。」と、受賞の喜びと感謝を語った。
書道家・前田典子氏 インタビュー
■これまでの歩みを振り返ってみての感想を教えてください。
書道カナダの目的は、カナダにいる方々に書道を紹介することであり、その一環として日本書道公募展 を開催しています。日本人でなくても、書道の楽しみ方というのはあると思います。なので、その楽しみ方を幅広くご紹介しながら、作品を募集しています。字が上手や下手ではなく、どう表現するか、どのような発想があるかという点において、カナダ人ならではの閃きがあると思うのです。
■カナダと日本で書に対する考え方の違いはどのような部分にあるのでしょうか?
日本の場合、白い紙に黒い字で書き、止めや跳ねなどの既成概念があります。ですが、カナダ人は字が分からないわけです。それにもかかわらず、例えば「水」という字についてある程度の説明をして、水が流れているように書いてごらんと言うと、実に上手く表現します。そこが面白いですよね。
■書道の魅力とは何でしょう?
私が教えていることに関して言うと、書には意味があり、ストーリーがあります。その点を説明することによって、字が読めなくても楽しめると思うのです。書道は、ビジュアルアートとランゲージの両方が重なり合っており、過去と現在と未来、その時空を超えられる面白みというのがあります。
■カナダに住む日本人の方にメッセージをお願いします。
書道は難しいと思われるかもしれないですが、決してそのようなことはないです。字の語源を知って文字を勉強すると、すごく面白いですよね。
日本人は当たり前に聞き流してしまいがちですが、文字自体が持つ歴史やストーリーを少しでも勉強すると、すごく楽しくなりますし、カナダにいるから役立つこともあると思います。書道は古いものではなく、今に通じています。なので、日本人の方にも是非、書道に目を向けていただけると嬉しいですね。