匠心 オーナーシェフ ジャッキー・ リンさん
昨年10月にローレンス駅から少し北、地元の人々で賑わう街の一角に『匠心』はオープンした。明るく清潔感ある店内は、上品なヒノキを最大限活かして高級感があふれている。オープン当初から、トロント中の寿司や和食Lover達が足を運び、そのこだわりや味が評判を呼び、数々のローカルメディアにも取り上げられるほどの盛況ぶりを見せている。今回TORJAでは同店のオーナーシェフであるジャッキー・リンさんの素顔に迫るとともに、寿司に人生の全てを捧げる彼のこだわりなどについて話を伺った。

■オープンして半年ほど過ぎましたが、いかがですか?
昨年10月にオープンして以来、毎日が勉強です。寿司は毎日少しずつ進化していると思いますが、今一番難しいと感じているのは、人のマネージメントです。寿司カウンターに立ちながら、お客さんの反応はもちろん、どのようなペースで料理をお出ししていくかなど、他セクションとの息の合わせ方など毎日奮闘しています。
■現在32歳のジャッキーさんですが、どうして寿司シェフになろうと思ったのですか?
もともとは16歳の夏に始めた寿司店でのアルバイトがきっかけです。アルバイトを始めてすぐに寿司を握ることに興味がわき、もっと寿司について勉強ができる店を探しました。 そして、18歳の時に出会ったのがZEN Japanese Restaurantでした。子どもの時から〝食べることが好き〟だった私は、オーナーシェフである、せいさん(柏原清一氏)に出会い、もっと寿司を握りたいと思うようになりました。一から色々と教えてもらって、寿司への興味と理解が深まり、一生の仕事にしようと決めました。それから16年、人生の半分を寿司と向き合ってきたことになります。師匠であるせいさんから言われて今も大切にしている言葉は、「寿司は心を握りだす」という言葉です。技術はもちろん大事なのですが、一番大切なのは「心」。どういう寿司職人がどういう寿司を握るか、形も味も全てその一貫に「心」が映し出されます。技術だけでなく、寿司の心を学べた充実した12年間でした。
■ZEN時代もとても充実しているように見えましたが、どうして独立しようと思ったのですか?
料理人であれば、いつかは自分のレストランを持ちたいと思うはずです。 5年ほど前からお客さんや友人達から一緒に店をやらないか…などの誘いがありましたが、私は自信がないことはやらない主義で、自信があることにアクションする人間です。そんな時に、東京マラソンに出場するために日本に行きました。2013年のことです。ついでに銀座の寿司屋や有名店に足を運びました。トロントに戻り、日本で見たこと、感じたこと、味わったことをもとに自分で色々と寿司や料理を作ってみました。その時に初めて自分の中に進化を感じて、そろそろ独立してもやっていけるのではないかと思い始めました。


■師匠である柏原さんとは今でも良い関係を築かれているように思えますが、いかがですか?
12年も一緒に居させてもらったので、師匠はお父さんのような存在です。師匠からみても私は子どものような感じだと思います。12年という歳月は師弟関係を超えた親子のような絆が生まれたと思っています。今、オーナーシェフという立場だからこそ、正直、今でもせいさんともっと喋りたいですし、うるさいこともたくさん言って欲しいと思ってしまいます。
■匠心をどんなお店にしていきたいですか?
もっともっと日本の伝統的な寿司をやりたいと思っています。どうすればもっと寿司を美味しく、魚を美味しく食べてもらえるか、準備や調理などやり方をもっと進化させて、伝統的な寿司を追求していきたいです。現在5時間の営業時間で寿司飯は3回炊いています。これを4回、5回くらいにしたい程、私のこだわりは、シャリにあります。おそらく私のシャリは他店より少し酸っぱいと思います。食べても舌が疲れてこない、そして魚の本来の味を引き立ててくれる絶妙な酸っぱさが特徴です。ネタの7割程度は日本から仕入れ、お客さんの口に運ばれる前までに冷蔵庫からネタケースに移し、シャリとの温度を考えながら一番美味しく食べられるように配慮しています。お客さんが一口食べて、シャリがなんか違うねとか、ここの寿司はなんか違うねといった反応をもらえたときは本当に嬉しいですね。私のこれからのテーマは、「Re-Introduce The SUSHI」です。みんな寿司を食べたことがあったり、なんとなくは知っているけど、どこまで分かっているのか。ネタひとつとっても色々な手法がありますよね。日本の食文化である寿司を細かくもっとカナダで紹介したいと思っています。これが伝統の味ですよと。また、日本酒とのマリアージュなどにも力を入れていく予定です。


【匠心】
3328 Yonge St.
Tel: 416-488-9400
営業時間: 火曜~土曜 5pm-10pm (日・月曜休み)
www.shoushin.ca
メニューは本格的な寿司と熟練の職人によって作り出される和食で構成される「おまかせ」(3つのコースから選べる)のみ。見事な空間美を醸し出している広い店内で座席はわずか30席。コースの最初から最後まで一皿一皿、一貫一貫を心ゆくまでに楽しめるように演出がもたらされている。食事に合わせた日本酒も豊富に取り揃えられているので、寿司職人ジャッキーさんの「心」を感じながら本物の寿司を楽しんでもらいたい。




